特集 「免疫療法」現場から

QOLを高め、がん休眠状態を維持。
β1-3系複合物質が、がん攻撃の主力部隊を誘導。

 外人部隊(異物=非自己)に頼らず、自国軍(体内細胞=自己)で外敵に立ち向かおうというのが免疫治療の考え方。外人部隊は時として反旗を翻すことがあるので、中枢部隊はあくまで自国軍で固めて、常時その部隊を活性化させる必要がある。従って、免疫活性作用がある機能性食品は、自国軍を助ける遊軍であったり、戦力を補給する後方部隊の役割を担う。特集では、機能性食品を戦略的に使用する免疫療法の実態を探った。

[新免疫療法とは]

免疫治療で、末期がんや進行がんを治癒させる近畿大学のグループが12月12日、横浜市内で講演会を開き、がん免疫治療の最新報告を行った。医師や患者が聴講した講演会では、近大腫瘍免疫等研究所の八木田旭邦教授が、免疫活性剤や機能性食品を組み合わせた「新免疫療法」について解説。梅澤充医師は抗がん剤治療の問題点を報告した。八木田教授は96年9月から6年間にわたって集めた3763症例のデータをもとに新免疫療法について紹介した。


 新免疫療法の長所は、がん細胞の増殖を抑え、普通の生活を送られるようにする点にある。

 新免疫療法は、(1)キラーT細胞の活性化、(2)NK及びNKT細胞の活性化、(3)血管新生抑制――これら3つが柱となっている。過去6年間に新免疫療法を施行した3763例を解析すると、CRとPRを合わせた有効例は36.3%、これにがん治療学会が有効例とするよう提案している長期不変(LNC)を含めた奏効率は53.8%となっている。新免疫療法の3本柱を活性化させる手順は次のようになる。

 椎茸菌糸体、スエヒロタケ菌糸体、霊芝の混合物である「ILX(アイエルエックス)」が、インターロイキン12やインターフェロンγの産生を増大させ、がん攻撃の主役であるキラーT細胞を活性化させる。さらにNK細胞の中でも大型のNKT細胞も同時に活性化させる働きがある。NK細胞とT細胞の2種類の細胞の性質を持ち合わせたNKT細胞は、B細胞、T細胞、NK細胞に次ぐ第4のリンパ球として免疫学の分野で注目されており、その働きは免疫系全体をコントロールする力と、自らががん細胞を攻撃するという点にある。

 従って、多糖体β1−3系複合物質の「ILX」は、がん攻撃の主力部隊であるキラーT細胞とNKT細胞を誘導する役割を担う。また、α1−3系の糖であるニゲロオリゴ糖は、NK・NKT細胞を活性化させる。

 3つ目の柱である新生血管抑制を誘導させるには、サメ軟骨を使用する。新免疫療法の長所は、がん細胞の増殖を抑えることで、普通の生活を送ることができる点にある。がん細胞が大きくならず、そのまま1カ所にとどまっていれば、患者さんはがんと共存することができる。われわれが使用するサメ軟骨は、数ある新生血管抑制物質の中でも最もVEGF(新生血管増生因子)を抑制する作用が強いことがわかった。


 がん細胞が消失するパターンが患者によって異なる新免疫療法。

 Tumor-Dormancy-Therapy(がんの休眠療法)――。この状態をいかに長く維持できるかが、新免疫療法の最大の狙いと言っても過言ではない。最近は、がん細胞の兵糧攻めにサリドマイドを投与する動きが出ているが、これは諸刃の剣でリスクのほうが大きい。
 と言うのも、確かにサリドマイドには新生血管抑制作用があることがわかっているが、その半面、TNF−α、IFNγ、IL−12などを減少させるという、非常に強力な免疫抑制作用がある。サリドマイドを使用すると、せっかく維持されたIL−12等が抑制されてしまうので、極力使用しないほうがよい。

 3つの柱を活性化させる新免疫療法も患者によって、がん細胞が消失するパターンが異なってくる。これを大きく分けると早期反応、中期反応、晩期反応となる。

 早期反応は、インターロイキン12が誘導されると直ちに腫瘍マーカーが減少することで、どんな大きい腫瘍でも1〜2カ月後には完全消失もしくは半分消失という理想的な結果が得られる。

 これに対し、中期反応は、インターロイキン12誘導物質を投与して3〜4カ月後に腫瘍の増大が頭打ちになり、5〜6カ月目から縮小をはじめるケースだ。腫瘍マーカーは、サイトカインに敏感に反応して急激に減少するマーカー(1CTPやNCC等)と反応が鈍くなかなか下がらず、むしろ増加に転じるマーカー(CEAやCA19−9等)がある。

 これまでの症例を分析すると、この中期反応を示す患者が全体の70%を占めていることがわかった。

 1カ月目にTNF−αが出ただけの段階では、治療効果はごくわずかしか現れないため、QOLスケールも非常に低い。2カ月後にインターフェロンγが出た段階では、治療効果が徐々に現れ、顔色も元気なときに戻ってくる。さらに3カ月後、インターロイキン12が出るようになると、治療効果がはっきり現れ、フェイス・スケールで言えば最高点の顔つきになる。このように効果が現れるまでには最低でも3カ月間は継続して治療を行う必要がある。

 そして、「ILX」等の免疫活性物質を投与したときに、次のような反応を見せるケースが晩期反応と言える。

 1つは、TNF−αは1000ピコグラム以上出るのに、インターフェロンγがなかなか10IUまで達しない。2つ目はTNF−αとインターフェロンγは活性化したのに、インターロイキン12が出ないか、出ても7.8ピコグラムに達しない。

 このために、腫瘍の増殖を抑えるのが精一杯という状態が1年程続いてから、いきなりインターロイキン12が大量に産生されて腫瘍が消失するケースがある。過去の例でも、1年以上「不変」だった患者が急に「著効」になる例があった。


 がんの勢いを封じ込め、がんと共生しながら社会生活を送り寿命を全うすること。

 がんが侵襲的な三大療法で完治できない以上、最良の打開策は、「副作用をともなわない方法で、がんの勢いを封じ込め、がんと共生しながら社会生活を送り寿命を全うすること」にある。それには前にも述べたように、がん細胞を休眠状態にさせることだ。新免疫療法では最も多い症例であり、逆に言えば新免疫療法でしか可能にできないと断言できる。

 96年9月から02年8月までの6年間に、3カ月以上新免疫療法を続け2回以上の免疫学的検査を行った症例は3763例。これらの治療成績は、CR(著効)が434例(11.5%)、PR(有効)が932例(24.8%)で、合計1366例が有効例、奏効率にすると36.3%となる。

 近年、がん治療学会などではこの奏効率に、6カ月以上不変のLNC(長期不変)、つまりがんの休眠状態も含めようとする考えが出てきた。従って「著効」と「有効」に「長期不変」を加えると、2024例が有効となり、奏効率では実に半数にあたる53.8%に達する。

 同じ不変でも新免疫療法の場合は、がん細胞の新生血管増殖を抑制した後に、「ILX」などでがん細胞への攻撃が継続するので、「不変」が「有効」や「著効」へと回復する場合が少なくない。新免疫療法の利点は、「高いQOLを保ちながら、がんを休眠状態に導入し、この状態を維持することで、がんと共存したまま人生を全うできる可能性が非常に高い」ということである。


がん、1カ月間だけ縮小し、2カ月後に増大し死亡しても「有効」。

現在のがん治療の功罪〜抗がん剤治療と免疫治療
オリエント横浜クリニック院長/梅澤 充

化学療法の問題点は、仮に「奏効」があったとしても、それがそのまま「延命」につながらないということだ。奏効イコール延命ではないということが、患者にも理解されていない場合が多い。

がん治療における化学療法の奏効率とは、腫瘍体積が2分の1以下に縮小するのがPRで、完全に見えなくなる消失状態がCRとなる。ただし、「その効果が1カ月以上続くこと」が判定の目安となっているので、2カ月目に急速にがん細胞が増大して、患者が亡くなっても、その抗がん剤の効果判定は「有効」の評価となる。

従って、現在の効果判定基準は、厚生労働省に新規抗がん剤の許可時に必要なデータであって、実際の患者に役立つというものではない。

そもそも抗がん剤は、細胞を殺傷するクスリで、使用量を増やせば、がん細胞に対する殺細胞効果は増大するが、それに比例して副作用も著しいので、副作用で死に至る場合が少なくない。このため抗がん剤治療を行う医師の関心事は、副作用と戦い「どこまで量を増やせるか」「どこまで使えば患者は死なないか」という点にある。

その一方、少量の抗がん剤、あるいは免疫治療を行う場合は、がん細胞は縮小もしなければ増大もしないという不変状態を示す傾向が見られるが、がん細胞と共存することで何カ月、場合によっては何年という延命が期待できる。しかし、この場合、厚生労働省の判定では「無効」となる。

抗がん剤で1カ月間だけがん細胞が縮小して2カ月後に死亡する例を「有効例」と評価し、不変状態で何年も生きられる可能性があるのを「無効」とする、現在の評価方法はあまりにもおかしい。どちらが患者にとって良い治療かは、一目瞭然だ。もちろん化学療法を完全に否定するわけではないが、抗がん剤による全身の衰弱(免疫能の低下)で、がん細胞は、Jカーブを示すように、一時的に縮小してもほとんどのケースで増大に転じている。

従って今の化学療法の問題点は、「一時的な縮小」「一過性の効果」という貧弱なエビデンスを拠り所にしている点にある。それに対して、非侵襲的な免疫治療は、副作用の心配がなく、体力消耗がないので、奏効がそのまま長生きにつながるというメリットがある。


(Medical Nutrition 47号より)


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