|
特集2 日本補完代替医療学会
補完代替から「エピメディスン」へ――21世紀の医療の姿を模索
日本補完代替医療学会の第5回学術集会(大会長:山口宣夫・金沢医科大学血清学教室教授)が11月9、10日、石川県金沢市の文化ホールで開催される。第1回大会から4年。補完代替医療を取り巻く環境も大きく変化するなか、「代替医療からエピメディスン(最高の医療)へ」をテーマにした今大会は、21世紀における医学の新たな方向性を模索するものとなることが期待される。見どころを紹介する。
 |
21世紀の漢方医学を考える |
シンポジウム2は「日本漢方医学と代替医療――21世紀のイメージを求めて」をテーマとした。杉山清氏(星薬科大学薬学部)は「抗がん剤の副作用に対する漢方薬の軽減効果に関する研究」を発表。抗がん剤シスプラチン(CDDP)の腎毒性、骨髄毒性を漢方薬・十全大補湯が軽減することを報告する。十全大補湯から単離したリンゴ酸ナトリウム(SM)がその軽減物質であることを証明し、その有効性、作用機序を解説する。
赤尾光昭氏(富山医科薬科大学薬学部)は「植物配糖体は天然のプロドラッグ――緩和な作用、少ない副作用」と題し報告。漢方薬に含まれる配糖体が、いわば天然のプロドラッグで腸内細菌によって活性化されることを明らかにする。さらには、この活性化が緩やかに進行することから、漢方薬の作用が温和で副作用が少ないことを示唆する。
 |
鍼灸のエビデンスとは |
シンポジウム3のテーマは「鍼灸の科学化――臨床経験からエビデンスへ」。ここでは、鍼灸をエビデンスにまで高めていく手法を考えていく。
川喜田健司氏(明治鍼灸大学)は「鍼灸の科学化――基礎医学の研究成果と臨床医学のエビデンス」と題し発表。シンポの導入役として、針灸の基礎医学的研究が明らかにしたものの現状を概説し、そこから得られたエビデンスと臨床医学的な観点から求められているエビデンスの違いについて紹介する。その後、山下仁氏(筑波医療技術短期大学附属診療所)が「経験からエビデンスへ――鍼灸臨床研究の発展と課題」として、鍼灸をエビデンスに導くために克服すべき諸課題を指摘する。
 |
経口剤の微細化の意義とは |
シンポジウム4「経口剤微細化とその意義」からは10日の開催。オーガナイザーは小濱隆文氏(恵寿総合病院産婦人科)と村山次哉氏(鹿児島大学医学部附属難治性ウイルス疾患研究センター臓器ウイルス分野)が担当する。
小濱氏は「機能性食品としての超微粉末化穀物について」を発表。微粉末化した穀物類(黒大豆、玄米)を摂取することで得られる免疫機能の改善、更年期障害症状の緩和などを報告する。茅野素子(星薬科大学)、杉山清、山口宣夫の3氏は「天然経口剤の微細化と宿主細胞の活性変化」を発表。熱水抽出物にも劣らない微粉末化製剤のメリットを報告する。
 |
生理活性水の効果・影響 |
シンポジウム5のテーマは「代替医療における生理活性水」。柴崎哲(大阪府立大学特殊診療治療学)、清水昌寿(金沢医科大学)、村山次哉の3氏が「実験的糖尿病動物由来の免疫担当細胞の量的・質的変動に及ぼす生理活性水の影響」を発表。生理活性水「創生水」を飲用することで実験的糖尿病マウスの血糖値が正常化したこと、人の血液粘度が適正化したことなどを報告する。
寺田厚氏(日本獣医畜産大学食品科学科食品衛生学)は「トルマリン(磁気石)処理水飲用による腸内フローラの効果について」を発表する。トルマリン処理水を飲用することで腸内フローラが活性化し、腸内環境の改善、糞便の脱臭効果が得られることなどを紹介する。
 |
代替医療を最高の医療に進化させよう 第5回大会長山口宣夫氏 |
第5回日本補完代替医療学会と同時開催の国際代替医療シンポジウムを金沢医科大学血清学教室が御世話をさせていただくことに成りました。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
代替医療 (Alternative Medicine)または補完医療(Complementary Medicine)という表現は西洋諸国から「東洋医学」等を評した言葉であります。代替医療が欧米諸国を中心に見直されている背景には、現代西洋医学そのものの行き詰まり状況への反省が窺えます。治療の限界という現実、これまでの近代西洋科学を基礎とした西洋医学の構築のあり方への疑問ともいうべき要因が考えられます。また、現代文明の発展に対する反作用として、自然回帰傾向が強まっていることもその背景にあると思います。米国の代替医療は玉石混淆です。なかには理解不能なものも含まれています。無批判に取り入れるべきではありません。またそれらと日本の伝統医学である和漢医薬学を同列に扱うことも、抵抗があるのは当然と思われます。
しかし、我国は極東の地にあって、それまで東洋医学を培ってきた地層が深く堆積している訳ですから、東西折衷医学を始めとして世界各地の医学醸成の場として最適の地であると思われます。この様な東洋医学と西洋医学を折衷する試みを、高齢化社会の進んだ今世紀はより加速されるべきと思われます。高齢化社会のパイロットとして、世界全体で伝統医学、植物療法、漢方医学、そして鍼灸治療などが見直されている中で、それにふさわしい医療体制を整備していくことが必要です。このような21世紀における医学の方向性を表す言葉として、多田富雄先生はEPIMEDICINEと記されました。このような方向性の学術活動を集約する為のInternational JournalがOxford University Pressより準備が進められています。
そこで第5回の集会は「代替医療からエピメディスン」をテーマにして、代替医療はピンチヒッターではなく、最高の医療「EPIMEDICINE」へ向けて邁進するべく舵を切りたいと願って居ります。
 |
<主な一般演題> |
アトピー性皮膚炎の食事指導における発芽玄米利用の検討(第2報) /小林裕美、石井正光(大阪市立大学)、 青砥弘道((株)ファンケル)ら
【目的】アトピー性皮膚炎において、食習慣が重要な悪化因子と考えられる症例が近年著しく増加している。私たちは食養生を重視する漢方療法を併用し、治療効果を高めてきた。なかでも主食の米について、発芽玄米の利用の有用性を検討し、昨年の本大会でも報告した。今回は、その後の長期経過の観察結果、検査項目を追加して検討を加えた。
【結果】6ヵ月以上継続摂取例は15例中8例、うち3例は有効、5例がやや有効だった。3ヵ月以上6ヵ月未満の継続摂取例が3例。3ヵ月未満の脱落例が4例あり、1例は継続摂取を希望せず、3例は来院困難によるもので、摂取後の悪化はいずれも認められなかった。血液生化学検査で血液学的異常および肝機能障害は全例において認められなかった。また、摂取前IgE値の異常高値を示した8例中5例で低下傾向がみられ、LDH値高値の5例全てで低下傾向が認められた。
メシマコブ菌糸体成分の局所投与による抗腫瘍効果/中村友幸((株)IBI応用きのこ研)
【目的】キコブタケ属メシマコブの菌糸体培養成分から調製した菌糸体画分及び培養濾液画分を被験材料として、マウス皮内に接種した腫瘍に対し、腫瘍局所投与による抗腫瘍効果を検討した。【結果】マウス皮内への移植固形腫瘍に対する被験材料の腫瘍局所投与による増殖抑制効果は、メシマコブ菌糸体画分98.1%、培養濾液画分94.3%、菌糸体熱水抽出画分83.9〜87.7%と高値を示した。また、臓器重量の変化は対照群と比較して肝臓や腎臓では差がなく、脾重量のみで有意差が認められた。これらの結果から、メシマコブ菌糸体培養成分は腫瘍に対して直接的、または脾臓等の免疫系を介した増殖抑制効果があることが示された。
クロレラ・ブルガリスCK-5株熱水抽出物(CVE-A)によるマウス肺転移腫瘍抑制効果 /小西史子(クロレラ工業(株))、野本亀久雄(九大名誉教授)ら
【目的】早期の発見や治療が進んでいるが、日本人の死因の第1位はがんだ。がん細胞は、発生の早い段階で血管を通って遠くの組織に転移することが少なくない。この転移がんは悪性度が高く、治療を困難にしている。
今回は、クロレラ・ブルガリスCK-5株を用いて、クロレラのマウス肺転移モデル実験における転移抑制効果を報告する。
【結果】(1)クローン108高転移株は移植12日後には移植量に応じてメラノーマ腫瘍細胞のコロニーを肺に形成。CVE-Aを移植前に投与することで、観察できるコロニー数は10分の1に減少した。このことから、CVE-Aはコロニー形成または成長を顕著に抑制した。(2)クローン44低転移株は、正常マウスに移植後3週間経過してもコロニーをほとんど形成しなかったが、移植前に抗がん剤の1つシクロヘキシミドを投与しておくとコロニーが多数出現した。また、マクロファージやNK細胞抑制後に移植した場合にもコロニーが増加、低転移株においても基本的な生体防御能が低下した場合は転移が多発することを示している。このような状態にCVE-Aを与えると肺のコロニー数は減少し、転移抑制効果を示した。
(Medical Nutrition44号より)
|