特集  がん補助療法

 特集 がん補助療法

「がん」を戦略的に抑える「免疫活性食品」

 狙いは「非侵襲・内因性物質誘導・QOL改善」

日常生活には、発がん物質が含まれている場合がある反面、予防効果が期待できる成分も種々含まれている。食品によるがんの一次予防においては、ライフスタイルによる予防を補うかたちの食品開発が重要になっている。問題は、開発された食品が高リスク群の発がんを予防できるかどうかを明確にすることだ。一方、二次予防における食品の役割は、化学療法等を補助し、患者のQOLを改善させる点にあるが、免疫療法で使用される機能性食品のように、それ自体が治療効果を発揮するものもある。特集では、がん補助療法に使用される機能性食品のケーススタディを基礎・臨床面から探るとともに、主な食品成分の作用機序、学術データを紹介する。

IL12を誘導しCTLを活性化
近畿大学・八木田旭邦教授


新免疫療法(NITC)、2人に1人が有効との結果。

 近畿大学腫瘍免疫等研究所の八木田旭邦教授が開発した新免疫療法(NITC)は、医薬品と機能性食品が免疫細胞に働きかけ、免疫を高めることで抗腫瘍効果を発揮する。NITCは、キノコ由来の健康食品や抗がん剤などを併用して、(1)キラーT細胞の活性化(CTL)、(2)NK、NKT細胞の活性化、(3)血管新生抑制──を促す治療法。NITCによるがん治療で、解析できた症例数は、10月末で4000近くにのぼる。

 八木田氏が昨年開催された第39回日本癌治療学会で発表したデータ(n=2774)によると、CR316例(11.4%)、PR667例(24.0%)、NC1064例(38.4%)、PD727例(26.2%)で、NCのうち6カ月以上不変だったlong-termNC(LNC)を含めた奏効率は、54.4%と、2人に1人が有効との結果が出た。

 キノコ由来食品の関与成分であるβ-1,3グルカンのメカニズムについて八木田氏は、「IL-12サイトカインを誘導する働きがあるが、その作用には二峰性のピークがある。Th1マウスに対し、IL-12を速やかに誘導することが可能な系と、Th2マウスでIL-12を誘導できる系との二系統だ」と話す。

 これは治療効果があらわれる時期が早期反応と晩期反応の二つがあることを示すもので、Th1誘導は早期反応群、Th2誘導は晩期反応群に分類される。

 臨床的には、受診者のほとんどが進行末期がんであるので、早期反応群には八木田氏が開発したILX(椎茸菌糸体、スエヒロタケ菌糸体、霊芝が2:2:1の比率で構成)を1日6g摂取させる。一方、晩期反応群には、やはり八木田氏が開発したILY(シママンネンタケ菌糸体)を1日3g摂取させるとともに、免疫活性剤のクレスチンを隔日で3g服用させる。切除可能な進行がんレベルまでの早期反応群に対しては、ILX6g/日で対応できるが、肺がん、膵がん、多発転移の症例など免疫抑制が強力な病態(晩期反応群)には、クレスチン3g/隔日とILY3g/日の追加投与が必要という。

 β-グルカンでIL-12を誘導して、がん攻撃の主力部隊、CTL細胞を活性化し、α-グルカンでNKとNKT細胞を活性化、さらに血管新生阻害作用のあるベターシャーク(鮫軟骨)を投与するNITCは、奏効率が半数を超えるという高い治療実績もさることながら、副作用が全くない、QOLの著明な改善を促す非侵襲的な治療法でもある。

 八木田氏は、4000症例のデータが解析できた時点で国内外に発表するという。

がんの改善にプロポリスを指導

あさひ医王クリニック上野紘郁院長

 「がん治療は、患者の気の持ちようと正しい食事が大切」

 新潟市にある「あさひ医王クリニック」の上野紘郁院長は、末期がん治療にプロポリスを利用し、症状改善や抗がんに成果を挙げている。

 この治療法を利用するのは、おもに再発や重度の消化器がんのケースで、フラボノイドが20%以上含まれている5年以上熟成のプロポロリス原液を1回3〜10cc、1日3回摂取するよう指導する方法だ。1ヵ月摂取後、効果が現れなければ量を倍にしていく。体内の免疫力を高めると同時に、腫瘍抑制作用ともリンクさせ、がんの消滅や再発を食い止めていくのが狙いだ。

 同クリニックで使用するプロポリスは、一般にいわれているプロポリス摂取量(1回あたり1〜3cc)のほぼ3倍。しかし、「腸の場合、腸管自体長さが5〜6mもあるように、管内における消化の過程で免疫を刺激させるためには、そのくらいの多量のプロポリスが必要になってきます」と上野院長は説明する。

 その際に同クリニックでは、医療機関であらかじめ免疫力の測定をしておいてもらうよう指導していると上野医師は話す。プロポリスを利用する患者のなかには、自身の判断で直接メーカーから購入する場合が多いからだ。具体的にはリンパ球数やNK・LAK細胞などの項目で、更にその活性やインターフェロンγ、TNF-α等の測定をしているかしていないかで、患者にがんの状態を改善させるだけの免疫力があるかどうかが判断できると上野院長はいう。

 しかし、この方法の問題点は、何といってもプロポリス自体が高価な点だ。そのため、長期にわたってプロポリスを使用してもがんの状態がなかなか改善されない場合には、患者の治療へ意欲を失わせることになりかねない。このような時には、がん毒素が出ているかどうかを調べ、毒素を抑制・排除する成分を選択した治療を取り入れている。がん毒素が出ていると、免疫力は低下しつづけるのがその理由だ。具体的には、抗酸化作用を有する成分やサメ軟骨、がんのアポトーシスを誘導するフコイダンや紫イペ、肝・腎臓機能の働きを良くする漢方などだ。また最近では、食事の中にも発がん物質が含まれていることも考えられるため、これらを排除するためのキチンキトサンを利用することもあるという。

 「がん治療は、患者の気の持ちようと正しい食事が大切」とは上野院長。がんは自分との戦いでもあるのかもしれない。

ヒメマツタケの併用で、がんを顕著に改善

日本橋清洲クリニック佐藤仁是院長

同じヒメマツタケでも、薬効がしっかりしている菌株を見分けることが大事。ヒメマツタケを用いたがん治療に16年間取り組んでいる日本橋清洲クリニックの佐藤仁是院長は、抗がん剤とヒメマツタケの併用で、末期がんの顕著な改善が見られると話す。

改善されたケースは、末期の大腸がん患者で、68才の男性。5年前に某大学病院で大腸がんの手術を受けた。病理診断では、リンパ節転移もなく、一応完全切除との説明がされた。しかし、5年後にがんは腹腔内に転移し、うち一つは卵大にまでなっていた。従前に通院していた某大学病院と並行して、去年の暮れに同クリニックを訪れた。今年1月からは、従前通院していた大学病院に入院し、1月〜3月まで抗がん剤の投与を受けた。

クリニック来院時に佐藤院長が指導したのは、ヒメマツタケを1日42g、朝・昼・晩の3回摂取する方法。入院先の大学病院でその後の経過を測定したところ、当初32.6の数値だったCEAが、2月には20.4、4月には4.0と顕著に改善され、直近の10月8日時点では3.5にまで数値は低下した。CA19−9についても、当初43だった数値が、2月には36、4月には8と顕著に改善が見られ、直近の10月8日時点では11と安定した数値を保っている。さらに本人からの報告により8月の時点で腹腔内の腫瘍自体が消滅していたこともCTで明らかにされたという。今回のケースを佐藤院長は「アガリクス(ヒメマツタケ)のもつ免疫賦活作用と抗がん剤との相乗効果」と分析する。

佐藤院長によると、アガリクスといわれるものは、実際には200種類以上あり、なかでも菌株がしっかりしているものはごくわずか。そのため、薬効がしっかりしている菌株を見分けることが大切になってくると話す。但し、「たとえ薬効があったとしても、薬効がある事と有効かは別問題。このことはヒメマツタケに限らず、抗がん剤であっても同様です」。佐藤院長は同じ抗がん剤を用いても人によって有効だったり、効果が現れなかったリはよくあることだと話す。しかし、佐藤院長はアガリクスの摂取について「まず薬効が正確に学会発表で裏付けられているものが先決」とコメントすると同時に、ヒメマツタケについても、実は菌株が異なったものがたくさんあるため、まずは正確な情報を得ることが大切だと語る。

サメ抽出脂質、脳腫瘍へも有用

銀座サンエスペロ大森クリニック大森隆史院長

今後はサメ軟膏とサメ脂質との併用も。

サメ抽出脂質は、ニュージーランドの国立オタゴ大学と政府直属の研究機関インダストリアル・リサーチ・リミテッドにより研究・開発された成分。サメの身体中の細胞膜などを構成する油分のうち、特にがんなどの異常な血管新生を抑制する成分を抽出したものだ。国立オタゴ大学医学部における試験から、血管新生を強力に食い止め、成長を抑制する効果が確認されている(in vitro、in vivo)。従来のサメ軟骨に比べ、サメ脂質はin vivoで約30倍、in vitroで約100倍の効果があることも分かり、近年注目の素材だ。サメ脂質をいち早く取り入れた銀座サンエスペロ大森クリニックの大森隆史院長によると、脳腫瘍への効果も新たに示唆されているという。

この臨床試験は、国内研究機関において現在実施されている。具体的な内容は、肺に転移した脳腫瘍患者にサメ脂質を1日15カプセル、1日3回(5カプセル×3回)投与して脳腫瘍の経過を観察したところ、縮小傾向が認められ、さらに3〜4cmあった転移性肺腫瘍が薄くなってきたというものだ。

これについて、大森院長は以下のように分析する。「腫瘍が脳に入る場合、脳の血管壁にある血液脳関門を通らないと内部には入れません。これは脳血管にバリアがあって、特定の物質(ブドウ糖やインスリンなど)しか通さない性質を持っているためです。脂質を通しやすい脳の血管壁はサメ脂質の場合、通過が可能になっています。おそらく、サメ脂質の主要成分EPA・DHAが血管壁細胞の構成成分にもなっているため、似た成分同士で透過性が高まっているのかもしれません」。

いわば細胞の外側から攻撃するサメ軟骨と、細胞に入り込んで内側から攻撃するサメ脂質。大森院長はサメ軟骨とサメ脂質との併用も今後は考えられるのではないかと話す。


 <注目素材 ゲルマニウム>

がん治療の医療現場で見直されはじめた有機ゲルマニウム。

有償治験薬として千人を超える臨床医が難治疾患に利用していた有機ゲルマニウムが、再び医療現場で見直されはじめている。とくにがん治療にゲルマニウムが使われるケースが少なくない。有機ゲルマニウム研究の第一人者である浅井一彦氏、東北大学医学部教授だった石田名香雄氏らの基礎・臨床研究では、抗がん作用、免疫増強作用、抗ウイルス作用、消炎作用、抗酸化作用などが報告されている。

●安全性

急性毒性試験では、ddyマウスとウィスター系ラットで中毒症状発現量やLD50値(半致死量:投与した動物の半数が死亡すると推定される量)は薬効用量(30〜300m/kg経口)を大きく上回っており、安全性は極めて高かった(昭和大学医学部第一薬理学・中山貞夫ら)。

最新の急性毒性試験では、イヌ(雄)への経口投与で、そのLD50値は8,500mg/kg以上であることが明らかになった。その他、亜急性・慢性毒性試験、生殖発生毒性試験(妊娠前・中・後期にそれぞれ雌雄動物に投与し生殖への影響を見る試験)、三世代にわたる繁殖試験、抗原性試験(アレルギー性)、変異原生試験(復帰突然変異試験・小核試験・培養細胞による染色体異常試験)でも毒性を示さないことが確認されている。

●抗腫瘍作用

C57BL/6マウスにColon38 1mm角を移植し、翌日より有機ゲルマニウムGE−32 100mgを腹腔内投与したところ有意な増殖抑制作用を示した。その作用はGE−132を投与された担がん宿主におけるT細胞の活性亢進により発現されることがしめされた。(東北大学医学部細菌学・石田名香雄ら)

●発がん抑制作用

原発性肺がんの化学療法に対して、GE−132(2250mg/日、経口投与)、ベスタチン(30mg/日、経口投与)の併用作用を検討したところ、小細胞肺がんにおいてGE−132の併用にて生存期間の延長が認められた。化学療法による近接効果(奏効率:がん組織の縮小効果の判定)では差は認められなかった。GE−132は肺小細胞がんの化学療法に併用されることにより延命作用が認められ、免疫補助剤として有用と考えられた。(岡山大学医学部第2内科・中田安成ら)

(Medical Nutrition44号より)


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