特集2 免疫活性食品

<「天然にがり」の免疫作用>
宿主の抵抗力強め抗腫瘍を発揮、免疫寛容に働きかけアトピーを改善

 熊本県立大学環境共生学部教授の奥田拓道氏(愛媛大学名誉教授)は、インドネシア産の天然にがりを試験食にして、がん、アトピーに対する免疫活性効果を調べた。いずれも動物実験で、抗腫瘍作用、抗アレルギー作用の可能性を報告しているが、その作用メカニズムや、どのような成分が関与しているのかについては今後の研究課題としている。奥田氏は、「天然にがりに含まれる豊富なミネラルや、海水中のプランクトンなどの有機物が関わっている可能性がある。あるいは有機物とミネラルの複合体かもしれない」としている。


マウス実験で、がん細胞が消失

 抗腫瘍効果をみた実験では、マウス(10匹)の腹腔内細胞にサルコーマ180を移植し、5匹には8倍希釈の天然にがりを1日0.5ccを4日間飲ませ、もう5匹には水だけを飲ませたところ、対照群はがん細胞が増殖したのに対し、天然にがり群はがん細胞が消失したことを確認した。希釈度を2倍、4倍、8倍に分けて行った実験では、4倍希釈が最も腫瘍抑制効果が強かった。

 マウス試験で、がん抑制が示唆された結果について奥田氏は、「にがりが副交感神経を介してそういう働きをしているのか、あるいは、にがりの中に含まれている成分が、がん細胞の周囲にリンパ球を集める働きがあるのか、そのメカニズムについてはわからない。真相を早い時期に解明したい」と話す。



 ただ、考えられる点として奥田氏は、「宿主である人間のがんに対する抵抗力を強めることによって、がん細胞を縮小させている可能性が高い」と指摘する。

天然にがりの抗がん作用には、がんを変質させる働きがあるのでは

 免疫力を発揮するのは二つの要素が考えられるという。一つは、がんに対する免疫力としてのNK細胞やT細胞などを強める働き。二つ目は、がん細胞の血管新生を阻害する働き。天然にがりの抗がん作用は、「がんを変質させる働きがあるようにも考えられるし、NK細胞などをがんの周りに集めるような作用があるかもしれない」(奥田氏)という。

 NaCLの食塩は、過剰に摂取すると、高血圧疾患や腎臓障害などをもたらすことが知られている。一方、にがりが含まれる天然塩は、むしろ健康上、良好な結果をもたらすとの伝承がある。がんに対しても天然塩が良いとする伝承があるが、もちろんこれらの言い伝えは科学的根拠がない。奥田氏が行った動物実験は、天然塩のにがり成分に種々の生理活性があると考えて、抗腫瘍効果に対する影響を検討したもの。

今回の実験結果を踏まえて奥田氏は、以下のように総括している。

 (1)天然にがり成分は、サルコーマ180移植マウスへの2週間の経口投与によって顕著な抗腫瘍効果を発揮した。

 (2)天然にがり成分は、NaCL投与に見られるような血中の尿素窒素の上昇を引き起こす腎臓障害はみられず、NaCLのような有害作用は認められなかった。

 (3)天然にがり成分は、がん化学療法剤にみられるような、骨髄障害、免疫機能障害及び体重減少などの副作用は認められなかった。

 以上の実験結果から、天然にがり成分を新たな抗がん食品素材として、その用途を見直す必要があると考える。

アトピーの動物実験では抗体をつくらせない免疫寛容が関与

 次に奥田氏は、アトピーへの天然にがりの効果を動物実験で試みた。実験は、メスのマウスを(1)蒸留水の群、(2)天然にがりの原液を4分の1に希釈した群、(3)同じく8分の1に希釈した群−の3群に分けて、それぞれ1日1回、0.5 mlを10日間経口投与して調べた。

 抗体溶液を尾静脈に投与し、1時間後に耳に抗原溶液を塗布し、耳が厚く膨れてた時点で、その膨れ度合を測定した。耳の肥厚をマイクロメーターで測った結果、蒸留水を投与した群は15マイクロメーターだったが、天然にがり群はそれよりも明らかに低下していた。

 この結果について奥田氏は、「アレルゲンと抗体であるIgGとの反応によってアレルギーがでるが、その過程においてIgEができる過程を天然にがりが抑えていることが考えられる」という。

 天然にがりは、免疫力を高めることによって、NK細胞などが活性化し、がんに対する抵抗力が強められるわけだが、一方のアトピーへの作用では、単に免疫力をあげるということだけでは説明がつかない。免疫力をあげるということは、IgEを産生することになり、その結果アトピーが悪化することにもなる。従って、抗体をつくらせないようにする免疫寛容が関与していることが考えられ、この免疫寛容を強めるのが天然にがりではないかと見られている。

 今回の調査では、インドネシアから輸入した天然にがり(富士ビット(株)TEL0545-65-1501)を使用した。

(Medical Nutrition41号より)


BACKSITE TOPPAGE TOP