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「キノコは本当に効くのか?」
キノコの効能をめぐって、厚生労働省もがん代替療法の実態調査に乗り出す
アガリクスやメシマコブ等のキノコを使った民間療法が脚光を浴びている。一般紙の広告には、連日のように「○○でガンが治った」というセンセーショナルな活字が目につく。あまりの露出度の高さに静観していた医療関係者も無視できなくなっている。厚生労働省も、キノコを使ったがん代替療法の実態調査(主任研究者=兵頭一之介・国立病院四国がんセンター内科医長)に乗り出した。キノコを医療手段にどう位置づけるのか。基礎と臨床の立場から、その利用方法を聞くとともに、国内外の臨床実態をまとめた。
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キノコの治療効果は、経口投与で |
予防効果は症例対照研究を 日本統合医学研究会 池川哲郎常任理事
キノコの効果判定、ヒトでは経口で効果があるかがポイント
昨年9月。キノコに含まれるβ-グルカンの有効性を覆す研究成果が発表され波紋を広げた。β-グルカン有効説に一石を投じたのは、大阪大学病院の藤本講師。レンチナンを使ったマウス実験で、心筋障害の原因となるなど、グルカン多糖体が心筋に悪影響を与える作用があるとしてキノコ健康食品の過剰摂取に警鐘を鳴らしたのだ。
藤本氏の研究結果について、元国立がんセンター研究員で、30年以上にわたってキノコ研究に携わってきた池川哲郎氏(日本統合医学研究会常任理事)は、「レンチナンは副作用として、胸部圧迫感などが報告されているので、心筋障害との関係も否定できない」と話す。もともとレンチナンが免疫賦活剤に認可されたのは、池川氏が国立がんセンター時代に、シイタケから取り出した熱水抽出物に抗腫瘍活性作用があることを突き止めたことがきっかけだった。レンチナンの産みの親とも言うべき池川氏の見解は傾聴に値する。
ただ、健康食品については藤本氏と池川氏の見解は異なる。この問題で地方紙の取材を受けた池川氏は、「多糖類は一般に分子量が大きく、注射で体内に入った場合は悪影響が出ることもあり得るが、経口で摂取する健康食品が注射剤と同じ副作用があるとは考えにくい」とコメントしている。
池川氏によると、キノコの効果判定では、投与経路や動物モデルなどの条件によっても、結果は大きく変わってくるという。
「キノコの動物実験はほとんどが腹腔内投与だが、ヒトでは経口で効果があるかどうかがポイントになる。我々の研究でも、実験モデルへの腹腔内注射では、β-1/3グルカンのEA3は強い相乗効果を示したが、低分子蛋白結合多糖類のEA6も強い作用を示した。しかし、同じ実験モデルで経口投与に変えた実験を行うと、EA3はまったく効果を示さなかったが、EA6は非常に強い作用を示した。このようにキノコ類で経口投与で効くものはグルカンなどの単純多糖体とは異なるものであることが推察される。実験モデルも異系腫瘍に有効か、同系腫瘍に有効かで評価は変わってくる」(池川氏)。
また、ヒトでの検証では、治療効果をみる場合は医薬品と同じ手順が必要だが予防効果をみるには、症例対照研究、大規模介入試験が必要になるという。
キノコの作用は免疫賦活だけでなく抗酸化作用も関係
これまでのキノコ研究から池川氏は、「がん抑制の作用機能は、一つは免疫賦活作用によるものと考えられるが、抗酸化作用も関与していると考えられる」と説明する。池川氏らの実験で、発がん剤(メチルコランスレン)を皮内注射したマウスに、エノキタケ、ブナシメジを与えたところ、発がん抑制効果が確認されたが、さらにブナシメジ熱水抽出物を飼料の混ぜて飼育した後に血漿を採血し、ラジカルの補捉作用を測定した結果、ラジカル補捉活性の増加も確認した。
このことから池川氏は、「キノコの作用は、免疫賦活作用だけでなく、抗酸化作用も関係しているものと考えられる」としている。
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アガリクスの効果は複合的なものかも |
東京薬科大学 大野尚仁教授
アガリクスから精製したβ-グルカンは、臨床的に成果があり、効果がないとは言えないがん免疫の観点と、病原真菌の菌体成分という両方の面からβ-グルカンを研究している。キノコ由来のβ-グルカンと、酵母由来のものは、構造上それぞれの特徴があり、さらに同じキノコでも、マイタケ、しいたけ、アガリクス・ブラゼイで著しく構造が違っている。活性にはβ1,3 結合が重要であるとの考え方は、一応の一致を見ているが、作用発現にかかわる、分子レベルからの明確な答えは出せないのが現状だ。ネズミのがんでもさまざまな種類があるわけだし、パラメーターによっても、実験系によっても結果は異なる。
結論を言うと、アガリクスから熱水抽出し精製したβ-グルカンは、マウスでは抗腫瘍効果は決して高くはない。アルカリ抽出すれば活性の強いβ-グルカンが得られるので、抽出効率が悪い構造なのだろう。しかし、臨床的には成果が出ているので、効果がないとは言えない。シロともクロともいえない状況だ。経口投与で免疫力が向上するとすれば、消化管粘膜のリンパ球に働きかけるというルートが考えられる。
例証の積み重ねが将来のコンセンサスにつながる
では、他にも何かが関与しているのか。我々は、アガリクスの機能成分として、高分子ポリフェノールに着目している。アガリクスに含まれるポリフェノール酸化酵素と、その他の食材に含まれるポリフェノールが体内で出会って、免疫賦活作用のある高分子ポリフェノールが生まれると推定している。ここで重要なのは、加工した場合は酵素が破壊されるということ。BSE問題もあり、消費者は産地や製法に対して注意を払うようになるのではないか。
キノコ系健康食品について、基礎学者の立場でコメントするとすれば、「健康食品として認知されている。それに、実際に効果のある人が出ていて、医療現場でも支持する声がある。やってみる価値はあるのではないか。調子がよかったら続ければよい。そういった症例の積み重ねが、将来のコンセンサスにつながると期待する。食品としての1次機能とは別に、付加的な意義があるかは曖昧な部分があるが、自分で判断して使うのは問題ない」ということになる。(談)
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10年にわたり肝細胞がん患者にAHCCを投与 |
無再発期間・生存率が有意に上昇
機能性食品(AHCC)の術後の予後改善効果を確認
関西医科大学第一外科の上山泰男教授らは、肝細胞がん患者269人を対象にした前向きコホート研究で、機能性食品(AHCC)が術後の予後を改善させる効果があることを確認した。調査内容をまとめた論文報告は、欧州肝臓学会の学術誌「Journal of Hepatology7月号」に掲載される。今回の調査では、術後にAHCCを摂取している患者の生存率が高いことが判明した。このことから、手術や抗がん剤で敵(がん細胞)を叩くことと、味方(自然治癒力)を強くする免疫療法を組み合わせる統合医療の重要性が示唆された。
調査は、92年2月から01年12月まで、関西医科大学第一外科で、肝切除術を施行し、組織所見で肝細胞がんと診断された269人の患者を対象とした。被験者をAHCC投与群と対照群(非投与群)に分け、AHCC群には1日3g(朝、昼、晩の食後)を摂取させた。その結果、解析できた222人のうちAHCC群113人は、対照群109人に比べて、無再発期間が有意に長く、生存率が有意に上昇した(5年生存率/AHCC群=約70%、対照群約50%)。
肝臓がん再発率は、対照群の72人(66.1%)に対し、AHCC群は39人(34.5%)で有意に減少。死亡率は、対照群の51人(46.8%)に対し、AHCC群は23人(20.4%)で有意に減少した。
術後の生存期間は、対照群の2−117 カ月(平均30カ月)の観察期間に対し、AHCC群は2−108カ月(平均28カ月)の観察期間で有意に延長した。
肝細胞がん術後のAHCC摂取が生存率向上につながる可能性を示唆
術後5年間、肝機能に関する血清学的検査データの経時変化を10項目について追跡調査した結果、AST、γ−GTP、コリンエステラーゼにおいてAHCC群は有意な改善が認められるなど、今回の調査結果により、肝細胞がん術後のAHCC摂取が、肝炎の改善、再発予防、生存率の向上につながる可能性が示唆された。
また、被験者は全てC型肝炎ウイルスの保菌者で、AHCC摂取によりウイルスが減少するなどの改善効果が見られたことから、肝がん以外の肝機能障害の予防にも有効であることが示唆された。
上山教授のもとで調査に携わった松井陽一講師は、「AHCCは、補助療法として有効であることがわかった。また、肝硬変の病態の改善、検査結果の肝機能改善などを考慮すると、予防食としての可能性が高いと指摘できる」と話している。
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米国の代替療法医注目のマイタケD−フラクション |
薬用キノコのなかでもマイタケを安全な抗がん物質として評価
数あるキノコ系サプリメントのなかで、米国で臨床研究が進み、評価が高いのがマイタケである。とりわけD−フラクションと呼ばれる分画は、アポトーシス誘導作用が報告されるなど、がんの統合医療の有力な手段となっている。米国で統合医療に携わる医師のコメントをまとめた。
まず、いち早くマイタケD−フラクションをがん治療に取り入れた医師のひとり、ロバート・アトキンス博士(ニューヨーク市)。いわずと知れた代替医療の先駆者は、「がんと戦うのに最も有力なものとしてマイタケというキノコを取り上げてからそろそろ2年が経つが、私自身はマイタケを安全な抗がん物質として高く評価している。薬用キノコのなかでは最も効果が高い」と印象を語る。
ホメオパシー医として著名なアブラム・バー医師は、6人の子宮筋腫の患者にマイタケを使用したところ、6ヵ月から1年で著しく筋腫が縮小することを発見した。バー医師は、500mgのマイタケ錠剤を1回2粒ずつ、1日3回摂取させている。1日16粒まで増量することもある。また、12名の前立腺がんをマイタケで治療し、排尿の状態が改善されたという。
ピーター・ディアダモ医師(コネチカット州)は、「マイタケD−フラクションは、治癒の速度を促進すると同時に、他の治療と一緒に使うことで相乗効果がある」との見方だ。その上で、極端に珍しいケースとしながらも、著効例を紹介する。「化学療法を施していた白血病の患者で、治療を始めてから1年間で脾臓に転移し、腫れ上がっていた。私はD−フラクションをティー・スプーンに半分、1日に2回ずつ飲むように指示した。しばらくすると完全に腫瘍がなくなっていた」。他にも、化学療法で効果のなかった前立腺がんに効果が見られた。また「マイタケはサメ軟骨の作用を促進させる」としている。
マイタケのメリットは化学療法の副作用が軽減されること
「マイタケの抗がん作用は、すでにしっかりとした基礎研究があるので、臨床の情報収集に注力している」と語るのは、マイケル・ウィリアム博士。同氏が院長を務めるがん治療センターでは、通常の化学療法や放射線療法に加えて、マイタケのような副作用のない治療を併用して相乗効果を期待している。マイタケのメリットは、化学療法の副作用が軽減されることだという。患者のQOLを高める点で大変重要なことだと博士は力説する。
ロバート・マーフィー医師(コネチカット州)は、44歳の脳腫瘍患者にマイタケD−フラクション200mgを試験的に使った経験を話す。この患者は94年5月に脳腫瘍の診断を受け、さらに左の大腿内側にも腫瘍があることがわかった。そこで、マーフィー医師は8月からマイタケD−フラクションを中心とした代替療法を開始した。
内容はD−フラクション200mgを1日2回、ビタミンAを1日5万IU、ビタミンC1gを1日2回、補酵素Q10を1日300mgなどである。11月19日に行ったMRIでは、腫瘍の数が14ヵ所から5ヵ所へと減少していたほか、大きさも縮小した。左前部にある一番大きな腫瘍が、3.5×3.5×2.8cmから2.2×2.2×1.5cmほどへと縮小した。
このほか米国でD-フラクションを臨床応用する医師は、およそ3000人。米国マイタケ・プロダクツ・インク(本社=ニュージャージー州)が提供している。日本の医療機関には、(株)サン・メディカ(03-5447-5221)が販売している。
(Medical Nutrition40号より)
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