低炭水化物食でインスリン分泌を抑える 
 医療ジャーナリスト/氏家京子

食事や栄養の変化がキーになる糖尿病

 糖尿病は膵臓のダメージによってインスリンを作れないのが1型。インスリンは分泌されるが低血糖作用が減弱するインスリン抵抗性によって起こるのが2型である。日本の場合と同様、通常療法においては、1型の場合はインスリン注射で対処するのが一般的。2型は、食事療法、運動。又は経口薬でインスリン分泌を促すようなものを使ったり、時には注射も用いる。

 糖尿病の原因は遺伝的な素因、食事、肥満、ストレスがよく知られるが、抗原(例:食物アレルギーの場合)やウイルス感染と闘うために作り出された抗体が自分の体を間違って攻撃対象とし、炎症が起こり、膵臓機能が狂うという自己免疫過程が原因になっている場合も、1型、2型ともにあるという。特に、米国の栄養療法では、食物アレルギー、食物不耐性について、治療開始前に存在を確かめる医師もいる。肌テスト、抗体テストが患者の体に負担をかけないので、1型、2型ともに採用されている。よくある不耐性はトウモロコシ、小麦、チョコレート、乳製品という。食物より数は少ないが、化学物質や吸入剤に対して反応する患者も2型にいる。

先住民的なライフスタイルの中で素朴な食生活をしていた人たちが、西欧文明の便利な食生活を始めた途端に糖尿病になったという話は有名だ。それだけこの病気では食事や栄養の変化がキーになっていると言えよう。第2次世界大戦中の英国で食糧不足になった時、配給制の中で伝統的な英国食から精白小麦粉、砂糖、多量の肉、脂肪が消えた時期があった。この時、糖尿病患者の死亡率がそれまでの半分に減ったという話もある。

カロリー計算表の代わりにGI値表を参考に

 糖尿病の食事療法は、日本ではカロリーコントロールが主流であったが、ようやく最近「低インスリンダイエット」の名称で低炭水化物食の存在も知られるようになった。これはまさに戦時下の英国が体験したような食事で、精製炭水化物を減らし、未精製の炭水化物、繊維(例:未精製穀物、豆類、野菜)を多く摂ることで、血流中へのグルコース放出を緩やかにし、インスリン分泌の必要量を抑えることができる食事方法だ。米国では既によく知られた糖尿病の食事療法である。治療を目的とする糖尿病患者は、やはり未精製であっても炭水化物の総量を抑えることが必要になる。カロリー計算表の代わりに、グリセミックインデックス(GI値表:どの食べ物がどれくらい早く血糖値を上げるかを示した表)を参考にすると良い。

 特に繊維食を薦めるジェイムス・アンダーソン博士(ケンタッキー大学)は豆類を推奨しているが、豆類を少量ずつ食事中に増やすことで腸内に不快なガスが溜まるのを防げると言っている。豆を料理する前夜、水に浸す時、ヨウ素を数滴水に入れるとガスの予防ができるという。

 ウィリアム・フィリポット博士(チョクトー、オクラホマ)は、様々な検査結果を参考に糖尿病患者の栄養療法を行なう。どの患者も必要な栄養が違うからだ。しかし一方で、どの患者にも多く見られる栄養欠乏があることに気付いた。ビタミンB6、葉酸、リボフラビン(ビタミンB 2)、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、シスチン、タウリン、アルギニンだという。その他にも、タラの肝油、月見草油、ベニ花油のサプリメントをよく処方する。

 アブラム・ベール博士(フェニックス、アリゾナ)は、糖尿病治療の中で栄養療法を最も重要視している。よく処方するのはビタミンB6、ビオチン、クロム、マグネシウム、バナジウム、必須脂肪酸、亜麻仁油(フラックス・シードオイル)。又、食事にアーティチョーク、中国の薬草などを入れるように指導している。ベール式治療で、1型糖尿病で白内障のためにほとんど目が見えなかった彼の患者は、約6ヵ月後には車の運転ができるまで視覚を取り戻したという。

 ビタミンB6が糖尿病の栄養療法ではよく使われるようで、ジョナサン・ライト博士(タホマクリニック、ワシントン)は、妊娠糖尿病にも特にビタミンB6の栄養補給を強化して良い結果を出している。体内のビタミンB6は、50歳を過ぎると急速に減少する。2型糖尿病もこの時期に発症しやすい。毎日補給することで、インスリンの必要量を抑えることができ、健康改善にも役立つ。ジョン・エリス博士は、健康維持には1日50mg、2型糖尿病患者が正常な血糖値を得るには100mgが適量と述べている。

 更に、今後日本でも注目されるようになるのが、油の常識を覆す亜麻仁油等に多いオメガ3必須脂肪酸だ。糖尿病に限らず、現代病を克服する栄養素として欧米では既にお馴染みである。

(編集部注)

他にも、欧米で研究されている素材に食物繊維の1種・イヌリンがあり、British Journal of Nutritionなどにはイヌリンの糖、脂質代謝に及ぼす機能が報告されている。このイヌリンを含むのがキク科の植物「菊芋」で、サプリメントも発売されている。

慈恵クリニック(奈良県大和郡山市)の山田義帰院長は、すでに糖尿病患者約20例に対して、菊芋エキスを使用した。使用法は1日1回50mlを食事中に摂取するよう指導している。効果発現は症例によって異なるが、早い人で1〜2週、遅くて1ヵ月ほど継続すると、血糖値がコントロールされてくるという。血糖値が長期に安定していれば、合併症状の初期の段階にも効果が期待できるとする。

山田院長は「患者からの問い合わせも多くなってきた。家庭で食事中に摂取するので飲み忘れることもなく、簡便に使用できるのがよい。最近は外出時に便利な剤型も発売されているので、よりコンプライアンスの向上に役立つ」と話している。



肥満改善が糖尿病予防の第一歩

糖尿病予備軍は、厚生労働省の調べによると約700万人と言われる。なかでも発症リスクが高いとされるのが肥満者。未病医学研究センター代表の劉影氏は、「例え血糖値が高くても症状がなければ気になりませんが、体重が増えて太れば回りの目を気にするようになります。ですから糖尿病の未病対策では、アプローチを変えて体脂肪が多い人をターゲットに食事指導をしていくことが重要になります」と話す。

肥満改善が糖尿病予防の第一歩と考える劉影氏は、実際に健常人の肥満者を対象に食事による改善効果を調べた。

試験食に使用したのは特定保健用食品の許可を得た「RY流糖茶」(関与成分:難消化性デキストリン)。それまでは、耐糖能異常者を対象とした長期飲用で、血糖・血清脂質の改善効果を確認しているが、今回は体脂肪率25%以上の健常女性を対象に、体脂肪減少効果を検討した。

調査対象は、20歳から50歳までの閉経前女性。原則として基礎疾患のない健常者で、体脂肪率25%以上の20人を無作為に2群に分け、RY流糖茶飲用群10例と、対照茶飲用群10例を比較検討した。茶は1日2回朝夕に食事と一緒に飲用させ、1カ月後に血液生化学的検査と体重、体脂肪率等を検査測定した。また、食事療法、運動療法をすべての対象者に均一に指導、実践させた。

グラフ

その結果、体脂肪率の変化では、RY流糖茶飲用群が−9.9%に対し、対照群は−1.7%と、RY流糖茶飲用群で有意(p<0.01)に体脂肪の減少効果が認められた。特に体幹部での減少率が最も高かった。また、筋肉量の減少も無く、体脂肪の減少が認められた。このことにより、RY流糖茶は、血糖値、血清脂肪の改善効果のほかに、有効に体脂肪のみを減少させる作用を有することが確認された。

調査結果を踏まえて劉影氏は、「正常耐糖能者、正脂血症の人でも体脂肪の減少が認められたことは注目に値します。これはRY流糖茶による糖質吸収抑制作用が働いているものと考えられますが、併せて連鎖的に中性脂肪などの脂質を改善する作用があることを示す結果と言えます」と分析している


(Medical Nutrition 37号より)


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