循環器

 循環器疾患予防への期待が高まるリングフィッシュ発酵物質

 現在、脳血管障害および心疾患による死亡者数はそれぞれ13万2千人、14万6千人だ(厚生労働省「平成12年人口動態統計」)。循環器疾患全体の患者数は970万人、第1位だ。循環器疾患の発症には食生活や運動習慣などの生活習慣が深く関与している。厚生労働省による「健康日本21」では循環器疾患の危険因子を(1)高血圧、(2)喫煙、(3)耐糖能異常、(4)多量飲酒、(5)高脂血症として、予防を呼びかけている。また、食品分野では血圧やコレステロールが高めの人に対する特定保健用食品が次々に登場し、循環器疾患対策の機運が高まっている。


機能性とメカニズム

 高血圧に働きを示す健康食品は杜仲茶、紅麹、田七人参、ブナハリタケ、キトサン、ニンニク、ナットウキナーゼ、海苔由来ペプチド、クロレラなど。動脈硬化にはリングフィッシュ発酵物質、サージ、DHA、霊芝、高コレステロールにはキトサン、ニンニク、DHA、ウコン、田七人参、スピルリナなどが良いとされている。

 杜仲茶は血圧が高めの人への食品として、特定保健用食品の認可を受けている。主成分ゲニポシド酸が副交感神経を刺激し、血管を拡張させ、血圧を低下させる。

 リングフィッシュ発酵物質は深海魚の内蔵や頭部を魚自身の酵素で加水分解して作り出した物質で、同化・吸収性の良いペプチドやω-3系の脂肪酸を含む。フランスでは様々な試験が行われており、中性脂肪値や総コレステロール値、血圧降下作用、アテローム性動脈硬化の改善作用が認められている。

 サラシアは、α-グルコシダーゼ活性阻害作用があり、腸からの糖の吸収を抑制するので、肥満を改善する働きがある。沙棘(サージ)は血小板凝集抑制作用や血栓溶解作用があり、高血圧や動脈硬化の予防・改善に関与する。

 メシマコブ はマクロファージやNK細胞などの免疫細胞の働きを強化し、がん細胞の増加を抑制することが知られている。さらに、近年の研究により、がん細胞のアポトーシス誘導や転移抑制作用が示唆されている。

 クロレラは必須アミノ酸のほか、ビタミン・ミネラルを豊富に含み、免疫賦活作用とともに血圧降下作用も報告されている。

 ブナハリタケはACE阻害活性が強く、様々な試験により血圧降下作用が認められている。緑茶カテキンにはコレステロール低下作用や抗酸化作用がある。霊芝は古くから健康食品として親しまれているが、血圧を下げる働きのほか、抗腫瘍作用が知られている。ウコンは動脈硬化を予防する働きやコレステロールを下げる働きがある。DHAにはLDLコレステロールや中性脂肪を低下させる作用およびHDLコレステロールを上昇させる作用があり、循環器疾患の予防・改善効果が期待されている。南米の植物ヤーコンの葉は総コレステロールや中性脂肪を低下させる働きがある。ナットウキナーゼには血栓溶解作用が認められている。

研究動向

 杜仲茶エキスを用いて血圧降下作用を検討した臨床試験では、杜仲茶エキスを8週間服用した血圧高値群(25例)では飲用開始期に比べ、有意な血圧降下が認められた。

 昨年5月に行われた第5回国際循環器予防学会では、リングフィッシュ発酵物質の摂取により頸動脈の肥厚が改善することが報告された。この結果により、リングフィッシュ発酵物質によるアテローム性血栓症の予防効果が示された。試験はアテローム性血栓症に対する高リスク患者40例を魚油摂取群とリングフィッシュ発酵物質摂取群に振り分けて行われた。試験期間は1年。その結果、リングフィッシュ発酵物質摂取群の頸動脈厚は試験開始前平均1.07mm→試験終了後0.79mmと、著しく改善した。

 桑葉による体脂肪抑制を検討した臨床試験結果が最近示された。桑葉(粉末・1日1.8g×3袋)摂取群(30例)とプラセボ群(20例)分け、4週間摂取させた。桑葉摂取群では平均体脂肪率21.5%→20.8%に変化し、有意な減少が認められた。

 昨年5月の第54回日本栄養・食糧学会で「ブナハリタケ抽出物の血圧降下作用」の報告があった。高血圧自然発症ラットを対象にブナハリタケによる血圧降下作用を検討する試験だ。その結果、ブナハリタケ熱水抽出物(50mg/ml)のACE阻害率は76.0%となり、高いACE阻害活性を示した。

 イチョウ葉エキスには脳梗塞後遺症を改善する効果が認められている。

 ヤーコン葉の脂質代謝改善作用が示されている。肥満性糖尿病のモデルマウスをヤーコンエキス+ウーロン茶エキス群、ヤーコンエキス群、ウーロン茶エキス群、プラセボ群に振り分け、餌とともに5週間摂取させた。その結果、ヤーコンエキス+ウーロン茶エキスを摂取した群では中性脂肪およびコレステロールが有意に減少した。

薬物療法中止後の補完として「健康食品」の利用を

中道 昇氏
慈恵医大薬理学講座講師

 慈恵医大では海苔由来ペプチド(NOP)を高血圧患者に摂取させた結果、降圧作用を確認している。NOPは乾海苔を煮沸し、煮汁を除いたものにペプシンを加えて酵素分解後、顆粒状にしたものである。

 この研究では、正常血圧群29名、高血圧群64名に35日間、NOP(1日0.9〜1.8g)を摂取させた。その結果、高血圧群では収縮期平均157.9±14.4mmHg→142.3±16.0mmHg、拡張期平均95.1±11.1mmHg→86.8±10.3mmHg と、著しい変化が認められた。なお、正常血圧群では血圧の変化はほとんど認められなかった。

 さらに、ACE阻害薬を服用していても血圧が高値だった3名ではNOPを摂取することにより、収縮期、拡張期血圧ともに低下した。このことから、中道氏は「NOPによる降圧作用はACE阻害単独の作用機序に基づくものではなく、多角的な作用と考えられる」と述べている。NOPの中には、降圧作用を有するACE阻害ペプチドが存在する。さらに、海苔由来のカリウム、マグネシウム、タウリン等の成分が総合的に働いている可能性があるという。NOPの血圧低下作用は正常血圧者にはほとんど作用せず、過降圧の起きる心配はない。また、日本人にとって食経験の長い海苔が原料のため、ヒトの胃での消化物に近い組成で、安全性も高い。

 中道氏は「健食は薬物療法にとって代わるものではない」としながらも、「服用を中止する時など、薬物療法の補完的なものとして使用の可能性が広がるだろう」と話している。


(Medical Nutrition 34号より)


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