がん患者に欠かせない健康食品 代替医療としての評価はどうか

 がんの罹患数は著しく増加し、「厚生労働省・患者調査の概況」では、平成6年の約44万人から平成11年の127万人へと急上昇している。さらに、がん患者の生存率は1976年の30.4%から1990年の41%に伸びている。これらの数字はがんを抱えて生きる人の数が急激に増えていることを示す。

 がん患者が医師の治療を受けながら、健康食品を利用するケースは少なくない。多くの臨床医たちが「大半のがん患者が何らかの健康食品を摂っている」と言うほど、がん患者に健康食品は欠かせないものとなった。さらに、健康食品を積極的にとり入れて診療する医師の出現もみられ、ここ数年のがん学会における発表では、化学療法や放射線療法に健康食品を併用してがんの改善を検討した試験の報告が目立つ。

 その一方で、健康食品を疾病予防・治療目的で用いることに異論を唱える医師も少なくない。例えば、昨年の第60回日本癌学会総会において、大阪大学医学部講師の藤本二郎氏はキノコ系健康食品に対して心筋障害の可能性を指摘した。これに対し、研究者や製造・販売メーカーらは「無責任な発言」と一蹴した。その一人、理学博士の堀内勲氏(M応微研社長)は、「そもそもキノコは食用であり、経口投与によって検討すべきだ。まして生後6週後のマウスに10回も直接注射し、その結果だけで結論づけるのは無謀ではないか。このような試験ではどんな成分でも副作用が起こる可能性がある。注射ではなく、マウスによる経口投与試験の結果を提示すべきだ。中には未証明のまま商品を販売している健康食品メーカーもあるが、多くの業者は現代医学で解明できない様々な疾病に対し、真摯な気持ちで取り組み、人々の健康を願って日々努力している」とし、海外でも健康食品を用いた治療が高く評価されていることを示し、代替医療のさらなる進展に期待すると語っている。


機能性とメカニズム

 がん治療の補助として使われる健康食品として、キノコ類、プロポリス、フコイダンなどがある。

 アガリクス・ブラゼイ、霊芝、冬虫夏草、メシマコブ、シイタケ、マンネンタケ、マイタケ、ヒメマツタケなどは主成分β-グルカンとその他の成分の相乗効果による抗腫瘍活性、免疫賦活作用が知られている。マイタケはβ-グルカンを精製していく過程で、抽出順にA〜Dの4つの画分(フラクション)が得られるが、その4番目の画分(Dフラクション)に強い抗腫瘍活性が認められている。

 担糸菌類菌糸体の抽出物、AHCCはIL-12の産生を促しキラーT細胞を活性化させ、がんをアポトーシスに導く。

 プロポリスは作用機序は明らかではないが、昔から強力な免疫賦活作用で知られている。

 メシマコブはマクロファージやNK細胞などの免疫細胞の働きを強化し、がん細胞の増加を抑制することが知られている。さらに、近年の研究により、がん細胞のアポトーシス誘導や転移抑制作用が示唆されている。

研究動向

 昨年9月の第60回日本癌学会では健康食品を用いた試験の報告が目立った。「きのこ由来多糖によるマクロファージからのTNF-αおよびNO産生機構の解明」の発表では、ヒメマツタケによる抗腫瘍作用が報告された。その他、「担ガンマウスの放射線治療におけるメシマコブ抽出物併用効果」、「冬虫夏草の抗腫瘍効果」、「ラクトフェリンによるラット大腸発がん抑制におけるアポトーシスの関与」などの発表があった。

 昨年11月の第4回日本補完代替医療学会ではMアイ・ビー・アイ応用キノコ研究所による「メシマコブ菌糸体培養成分の有する生物学的活性―生体内での抗腫瘍効果発現における免疫機能との関連性―」の発表があり、メシマコブの腫瘍抑制効果が示唆された。第3回日本補完代替医療学会では、関西医科大学第一外科川口氏らによる発表の中でAHCCの投与による肝細胞がん患者の生存率上昇が示された。

 先月米国で開催されたAmerican academy of anti-aging medicine(A4M)ではニューヨーク医科大学泌尿器科研究主任教授の田崎寛氏らによる「マイタケGDに前立腺がん・乳がん細胞のアポトーシス作用」の報告があった。この試験の結果、マイタケエキスから抽出したグリフロン・D-フラクションは前立腺がん及び乳がん患者に対し、がん細胞のアポトーシスを誘導することが示された。

 カルシウムサプリメンのト摂取によって結腸直腸がんの再発リスクが低下したという試験結果がある。米国のDartmouth-Hitchcock Medical Center のJ. バロン氏らが行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、結腸直腸がんの既往歴のある930名の対象者をカルシウム摂取群とプラセボ群に分け、投与1年後と4年後で評価した。その結果、平均腫瘍発生数は、カルシウム摂取群はプラセボ群に比べ24%低下した(p=0.02)。腫瘍再発リスクはカルシウム摂取群は19%低下した(p=0.04)。

モズク由来フコイダンの抗がん作用、単独で有効例も

阿部博幸
九段クリニック理事長

 九段クリニック(東京都千代田区)の阿部博幸理事長は、オキナワモズク由来のフコイダンをがん患者に使用している。症例は肝臓がん、膀胱腫瘍、前立腺がん、悪性リンパ腫など。フコイダンの量は原末3g/日で、これを1日3回に分け、食後に摂取するよう指導している。そのまま飲んでも、味噌汁やヨーグルトに混ぜてもよい。「とりあえず、3ヵ月を目安に続けてみます。その間に腫瘍の増大や再発がないか、あるいは患者さんの体調がよくなってくれば、そのまま継続。1年以上にわたり、フコイダン単独で肺がんの増大が見られていないケースがあります」と阿部理事長は語る。

 抗がんメカニズムとして、がん細胞のアポトーシスを誘導することが挙げられる。これはヒト卵巣がんや白血病細胞を用いた試験で確認されている。一方、正常細胞への毒性がないことが西洋薬の抗がん剤とは大きく異なる点である。

(Medical Nutrition 34号より)


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