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相次ぐ脳代謝改善薬の製造承認取り消し。代替品として注目を集める「ビンカマイナー」、「イチョウ葉エキス」
製造中止や効能効果を削除した脳循環代謝改善薬はこの3年あまりで200品目以上にのぼる。その背景には、厚生労働省による医療費削減がある。多くの脳循環代謝改善薬が対象となったのは、主に高齢者医療費でカバーする薬剤であり、効能効果の評価が難しいことが大きな理由といえる。一方、それら医薬品に代わる機能性食品が日本に導入され、注目を集めている。そこで、脳代謝改善作用のある天然成分で、海外では医薬品として使われているビンカマイナーやイチョウ葉エキスについて取材した。
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20カ国以上で承認されているビンカマイナー |
今年8月、武田薬品工業鰍ヘ脳代謝改善薬のカラン錠の製造中止・回収を発表した。厚生労働省が脳代謝改善薬の再評価を目的として、脳梗塞後遺症の症状であるめまいと頭痛について試験を行った結果、プラセボとの差が認められなかったからだ。脳循環代謝改善薬の評価は難しく、同様の理由で製造中止または効能効果を削除した製品は200品目以上になる。カラン錠の市場は後発品を含めて270億円。めまいや頭痛以外の効果を確認しつつ使ってきた医師や患者も相当数いたと思われる。医療費削減の名のもとには、長年使用していた薬剤が使えなくなるという患者の犠牲も「痛み分け」の一つなのだろうか。
欧州では、脳代謝改善効果のある成分で、患者が直接入手可能な医薬品や機能性食品がある。その代表的なものがビンカマイナーだ。
ビンカマイナーはビンポセチン(商品名:カラン錠)の原料で、イタリアやポルトガルなど20カ国以上で、医薬品または機能性食品として販売されている。キョウチクトウ科ヒメツルニチニチソウの抽出物で天然成分だ。ビンカマイナーを取り扱う研光通商潟tードサイエンス事業部の大田礼文氏によると、ビンポセチンとビンカマイナーではその効果や副作用に大きな差異はないが、ビンポセチンのほうが吸収力が高く、したがって投与量が少なくて済むという。
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ビンカマイナーの記憶力増強効果 |
大田氏は「ビンカマイナーの作用機序のポイントは脳神経細胞での代謝の改善だ。ATPの代謝の過程で働く2つの酵素にビンカマイナーが直接作用する」と説明。そのメカニズムは以下のようになる。
@アデニレートサイクラーゼの活性
ビンカマイナーがアデニレートサイクラーゼを活性化することにより、ATPからサイクリックAMP(cAMP)への変換が活発になり、cAMPが増加する。
Aホスホジエステラーゼの阻害
ホスホジエステラーゼの阻害によりcAMP からAMPへの変換を防ぎ、cAMPが増加する。cAMPが増加すると間接的にプロテインキナーゼを活性化し、タンパク質のリン酸化を促進する。その結果、神経伝達物質の放出量が増えたり、ホルモンの分泌が活発になったりする。
つまり、アデニレートサイクラーゼの活性と、ホスホジエステラーゼの阻害により、ミトコンドリア内のcAMP濃度が高くなり、神経伝達物質の放出量が増える。
「さらに、cAMPの増加により、プロテインキナーゼが活性化されると、神経伝達物質の放出量が増えると同時に、特定のタンパク質を作るための遺伝子を活性化する。タンパク質の合成は長期記憶の成立には欠かせない。つまり、タンパク質の合成が増加することは記憶力の向上につながる。ビンカマイナーによる記憶力増強効果は、欧州での試験結果により明らかになっている」と大田氏はいう。
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痴呆症に対する効果を検討した試験結果 |
ビンカマイナーは脳細胞で選択的に働くため、脳におけるタンパク質合成の増加=記憶力増強につながるという。欧州では医薬品として20年の歴史があるビンカマイナーは、様々な試験によって効能効果が裏付けられている。
ビンカマイナーを痴呆症患者152人に投与し、症状の改善を検討するプラセボ比較二重盲検試験を行った。この試験では、50〜80歳までの男女152人の多発脳梗塞性痴呆症及びアルツハイマー型痴呆症患者にビンカマイナー30mgを1日2回経口投与。試験期間は12週間とした。症状改善の評価方法として、CGI(Clinical
Global Impression)、SCAG(Sandoz Clinical Assesment Geriatric)、BGP(beurteilungsskala
fur geriatrische patienten)、SKT(syndrom-kurz test)を用いた。
試験を終了したのは142例(ビンカマイナー投与群71例、プラセボ群71例) である。ビンカマイナー群51例(72%)、プラセボ群18例(25%)にCGIにおける改善が認められた。ビンカマイナーによる改善はSCAG及びBGP、SKTすべてにおいて認められた(表1)。

日本における試験はまだ行われていないが、「医療現場でも十分効果を発揮できる素材だ」と大田氏は語っている。
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脳疾患領域で“定番”のイチョウ葉エキス |
一方、脳疾患領域で高い評価を得ているのがイチョウ葉エキスだ。イチョウ葉エキスは、欧米では脳循環代謝改善や脳梗塞後遺症の症状を軽減する作用が臨床評価され、医療用医薬品として製造承認されている。ドイツのシュワーベ製薬が製造するイチョウ葉エキス(医薬品規格=EGb761)は、EU諸国をはじめ世界75カ国で医薬品認可を取得している。しかし、日本では評価の試みは少なくエビデンスが確立されていないことから、健康食品として位置付けられている。
1997年、米国医師会誌「JAMA」に痴呆症患者309人に対するEGb761(シュワ−ベ社)の52週間にわたる試験データが掲載されたことは記憶に新しいところ。この同一の試験で26週後の効果を分析した結果が昨年の11月、「Dementia
and Geriatric Cognitive Disorders」誌に掲載された。JAMAのデータでは1年間の投与での有効性、そして今回の報告では半年後の有効性が示されたことになる。
この試験は、アルツハイマー病評価スケールとして「認知機能障害評価」はADAS-Cogを、「日常生活・社会行動評価」はGERRIを、「精神症状一般の評価」はCGICを用いて評価。イチョウ葉エキス(EGb761)120mg/日を患者に投与したところ、臨床的にADAS-CogおよびGERRIの改善が示された。患者の26%はADAS-Cogが4ポイント改善、GERRIに関しては30%が改善した。一方、イチョウ葉エキスを含まないプラセボ群は、いずれの評価でも痴呆の進行がみられた。倍の投与量での試験と比較したところ、増量によって改善の効果が高くなることも併せて示唆された。
また、米国政府はこのほど、国費を投入して6年間、3000例という長期大規模臨床試験を開始することを表明、痴呆を発症するまでの期間や進行度合を調査していく考えだ。
慶応大学医学部神経内科の植松大輔医師らの研究グループは、20人の脳血管障害後遺症もしくはアルツハイマー型痴呆症の患者に、イチョウ葉エキス240mg/日を4週間使用し、その前後において臨床症候の変化およびSingle Photon Emission Tomography(SPECT)による局所脳血流の変化を検討した結果、全体的な印象として、若返った印象を与える患者が見受けられたという。
植松氏らは、一昨年10月に開催された第2回日本代替医療学会学術集会において、「脳血流を測定した10例中8例に血流改善がみられ、低血流領域の平均値の推移は投与前70.7%から77.2%へと有意な増加を示した」と報告している。
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脳梗塞後遺症に対する効果も |
脳梗塞後遺症に対するイチョウ葉エキスの臨床効果を多数の施設で検討した例もある。8月に富山で開催された第18回和漢医薬学会では、脳神経センター大田記念病院福山催眠医学研究所の盛政忠臣所長らの研究グループが多施設での臨床評価報告を行った。
調査は、イチョウ葉エキス(250mg錠、常磐植物化学研究所)をインフォームドコンセントに基づき、外来患者に1日3錠、毎食後に1錠を4週間服用してもらった。対象は、脳梗塞後遺症9例、中年期以降のいわゆる冷え性3例。
結果は、脳梗塞後遺症9例においては、全例で改善または改善傾向が認められた。脳神経機能の全般的な脳改善(脳幹挫傷)、耳鳴り減少と患部側の上肢痛の低下(左不全麻痺)、ふらふら感消失、患側右知覚改善及び舌もつれの改善(脳損傷)、患側の指先知覚鈍麻の改善(右不全麻痺)、下肢しびれ感の改善(ラクナ梗塞)、患側右手感覚低下の改善(多発性脳梗塞右不全麻痺)、患側左上肢挙上痛の消失と挙上可能(左不全麻痺)などの結果が、本人の自覚症状の改善感及び神経学的な診察結果から得られた。一方、冷え性の患者の評価は、いずれの例でこの冬の間、靴下を履かないで安眠できるまで改善した。
脳梗塞後遺症の症例としては以下のようなケースがある。
男性74歳。主病名は脳梗塞(右不全麻痺)。平成10年5月に発病。危険因子はU型糖尿病。糖尿病は、近医によったが、本人と家族が病識が十分に得られないまま過ごしてきた。平成10年5月17日夜に右上下肢の麻痺を認め、翌朝より起立困難。脳神経センター大田記念病院外来を受診。右不全麻痺に対して内科的治療とリハビリにより、経過良好にて退院。通院でリハビリ療法と薬物療法、特に糖尿病に対する療法を継続しながら、イチョウ葉エキスの摂取を開始、服用1週目より右患部側の冷感が軽減。平成13年2月現在に至る。
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投与2〜4週間で効果 |
これらの臨床評価にあたったのは、盛政氏をはじめ大田浩右氏(脳神経センター大田記念病院)、吉岡保氏(倉敷成人病センター)、西内敏文氏(同)、小林完冶氏(小林内科診療所)、木畑正義氏(中国中央病院)、吉川敏一氏(京都府立医科大学第一内科)、石岡達司氏(宮本整形外科病院)、杉山順子氏(大伝馬耳鼻咽喉科)の9人。調査は、それぞれが所属する7施設で行われた。
今回の結果について盛政氏は、「いずれの症例においても薬理効果の発現は、本剤投与の2〜4週間後に認められた。ラジカルスカベンジャーとしての役割、神経細胞内の酸素有効利用、相反する作用機序の存在も残されているが、臨床効果が明確なので、今後の詳細にわたる検討が必要」としている。
日本において脳梗塞などの脳疾患で使用される薬物には、脳圧降下剤、血栓溶解剤、抗凝血剤、抗血小板凝集剤、降圧剤などがあるが、後遺症を軽減・治療する保険薬は存在しない。盛政氏らの研究結果の一部には、イチョウ葉エキスには神経細胞を保護する作用があることが示唆されたが、別の臨床調査では抗不安作用に対してもイチョウ葉エキスが有効とのデータが揃いつつある。
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脂肪酸は比率がポイント |
「痴呆対策には、脳血管の老化の防止が重要。ということは、脳と血管に対して良いことをすればよい」と語るのは、ストレスケア日比谷クリニック(東京都千代田区)の酒井和夫院長。30代後半からその準備が必要としている。「特に『血液サラサラ』の状態に保っておくことが望ましいですね。そのために必要な栄養素はEPA、DHA、キチン・キトサン、セントジョーンズワート、イチョウ葉、オリゴ糖などです」(酒井院長)。
さて、体内でDHAに代謝されるのがα−リノレン酸で、魚油やシソ油に含まれている。最近では、他の脂肪酸との摂取比率がカギとする説もある。バー・イラン大学(イスラエル)のイェフダ教授によると、脳細胞の機能を維持するためには、α−リノレン酸とリノール酸は1対4が最適とする。同教授はアルツハイマー症患者100例を対象に、両脂肪酸の1:4混合物(SR−3)とプラセボを比較した。試験期間は4週間。その結果、SR-3群では60名中49名に感情、協調性、食欲、睡眠などの症状の改善が見られた。位置感覚では、プラセボでは症状のある33例中3例の改善に止まったのに対し、SR−3群では50人中37人が改善した。同教授は「患者のQOLの改善と、介護者の負担軽減に役立つ」としている。
PS(ホスファチジルセリン)は、脳を回復させてくれる働きがあるもので、栄養素のため、薬品と違って服用しても安全に脳機能を改善させるのが特徴だ。
デグサ社製の「リパミンPS」の普及を目的に4社のメーカーが設立し、広報活動を行う任意団体「リパミン広報センター」が主催した「第4回ホスファチジルセリンセミナー」のなかから、世界的な細胞学の権威パリス・キッド博士のPSについての講演内容を簡単に紹介する。
PSの通常の服用方法は、最初の1ヵ月は1日300mgを朝食・昼食ともに2回、その後は1日100mgを摂取する。具体的には、記録力や集中力、学習能力や言語の機能を高めたり、アルツハイマー病、子どもの注意力や衝動性、学習能力や気分を改善する。PSはヒトの脳内にもっとも有効に作用するリン脂質で、先端部分、中央部、2つの尾から成る。先端部分はセリンというアミノ酸を含み、生物活性を持っている。
PS投与による記憶力、学習能力、集中力、言語の技能への効果は、ヒトを対象とした18件の二重盲検試験で明らかにされている。これら以外にも精神状態についての改善が報告されている。特に記憶力については一貫した効果が得られ、うち11件で、PS投与およそ3週後より、プラセボ使用群よりも統計的に明らかに勝っていた。
またアルツハイマー病への効果については、59歳のアルツハイマー病女性患者が1日500mgのPSを食事と一緒に摂取したところ、3週間後には脳が活発に働き始め、脳陽電子放射断層撮影でも以前より活発に脳が活動していることがわかった。
近年では、PSが子供の活動亢進やADHD(注意欠陥活動亢進障害)にも効果的なことがわかっている。4歳から19歳の子どもに最大4ヵ月間PSを与えると、子どもたちの行動は緩やかになり、学校の成績もよくなるなどその注意や行動に大きな効果をあげ、この効果は90%以上の子どもにあった。この場合の必要なPS摂取量は、小さな子どもでは200mg、大きな子どもでは300mgだった。
(Medical Nutrition 33号より)
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