QOLを高め、がんとの共生を 宮城県立がんセンター研究所 免疫学部長・海老名卓三郎氏
「今までのがん治療は、がんという病気を治そうとして、患者さんの心の問題を含めた全人格的な治療を無視して、結局患者さんは副作用がひどいまま亡くなっていたと考えられる」。こう話すのは宮城県立がんセンター研究所の海老名卓三郎・免疫学部長。海老名氏は、がん細胞を無理やり縮小させるのではなく、がんとの共生をはかるため、生物製剤活性化キラーを利用した免疫療法を考案。これをバクテリアの「BA」とキラーの「K」を合わせて「BAK療法」と命名した。海老名氏にがん治療の取り組みを聞いた。
- ―― がん治療の現状と問題点についてお聞かせ下さい。
- 海老名卓三郎氏(以下略)
- 海老名 現在、がんの治療には5つの療法があります。手術療法、放射線療法、化学療法、免疫療法、そして遺伝子療法です。手術は、原発巣だけであれば効果的ですが、転移巣がある場合に原発巣を切除すると随伴免疫がなくなり、転移巣が増殖をはじめかえって死期を早めることになります。転移が見つかった場合に考えられるのが、放射線療法と化学療法なんですが、これらはいずれもがん細胞を殺す反面、正常細胞も殺してしまう。白血病やリンパ腫、それと睾丸腫瘍等の一部の固形がんには化学療法も効果が期待できますが、平均すると30%の人にしかがんの縮小効果が認められていません。これらに対し、最近注目されているのが、免疫療法と遺伝子療法です。ただ、免疫療法は体に優しい治療法ですが、縮小効果が低いのが難点です。遺伝子療法は研究段階にあり実用化までには数年かかるという問題があります。
- そこで我々は副作用がなく、QOLを良好に維持し、延命効果がある身体に優しい治療法を模索した結果、MHC非拘束キラー細胞(マクロファージ、NK細胞)を利用した新しい免疫療法を考案しました。
- ―― 新免疫療法とはどういう治療法ですか。
- 海老名
- 海老名 最初に考案したのは、サイトカイン類、免疫グロブリン抗体類などの生物製剤(BRM)を原発腫瘍内に投与する方法です。局所投与のため副作用が弱く、抗腫瘍効果が強いことがわかりました。さらに研究を進め、宮城県立がんセンター倫理委員会の許可を得て副作用のない免疫療法の開発に乗り出しました。そして試行錯誤の結果、行き着いたのがBAK免疫療法です。
- BAK療法は、患者さんから20cc採血し、白血球を抗CD3モノクロナール抗体、インターロイキン-2、インターフェロン-αのBRMで活性化し増殖させ、2週間かけて約3000万個のリンパ球を約60億個の活性化リンパ球(BAK細胞)に増やし、患者さんに点滴静注で戻します。患者さん自身のリンパ球ですから副作用が全くありません。従来の免疫療法は、サイトカインそのものを投与しますので、発熱や食欲不振など多くの副作用が見られますが、BAK療法はIL-2やIFNを培養最後の15分間だけ処理して、活性化リンパ球だけを投与しますので副作用の心配はありません。
- ―― がん治療における機能性食品の位置付けをお聞かせ下さい。
- 海老名
- 海老名 西洋医学は“病気”を治して“病人”を癒さない面があります。先程指摘したように化学療法は腫瘍細胞を殺す一方で骨髄細胞などの正常細胞も殺してしまいます。このため、副作用がひどく、一時的に腫瘍が小さくなっても耐性ができ、結局副作用でQOLが悪化したまま亡くなってしまう例が多いのです
- 一方、東洋医学の漢方薬は、数種類の生薬を混合したもので、何が効いているかがわからないという欠点に加えて他の薬との併用で副作用が問題となります。従って、西洋医学でも東洋医学でもない第3の医学として“統合医学”が重要になっているのです。統合医学における薬とは、構造や機能が明確な有効成分を含む機能性食品と考えればわかりやすい。我々のこれまでの研究では、エピロカテキン・ガレートという有効成分が含まれた緑茶、ナフトキノンを含有するタヒボ茶、ラクトフェリンを有する牛乳製剤などの抗腫瘍効果を確認しています。
- この中、タヒボ茶の抽出物ナフトキノンをマウスに与えて抗腫瘍効果を調べたところ、浸潤抑制作用、アポトーシス誘導作用、血管内皮細胞増殖抑制作用があることがわかりました。すなわちタヒボ茶には、体内の免疫細胞に働いて抗腫瘍免疫能を高める以外に、がん細胞に直接働いて浸潤を抑えたり、アポトーシスを誘導するほか、腫瘍に栄養を与える腫瘍血管内皮細胞の増殖を抑える作用があるのです。これらの機能性食品は、補助療法に利用できますが、それ以上に予防食として有用ではないかと考えています。
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免疫力を高めがんに抑制的に働く
 とまつ内科・胃腸科クリニック院長
戸松 成 氏
コンスタントに使うのはアガリクスと漢方薬の十全大補湯あるいは補中益気湯で、プロポリスを併用する場合もあり、同時に玄米や根菜、果物などを多く摂る食事療法も勧めています。アガリクスや漢方を使う目的は、免疫細胞の機能を増強させることです。化学療法や放射線治療を受けている患者さんに使うと、副作用が確かに軽減し、嘔吐や下痢などの自覚症状も軽くなり、体が軽くなった、食欲が出てきたという声もよく聞きます。白血球数の低下も少なくなります。腫瘍が消失するわけではありませんが、その増殖のスピードは遅くなるように思います。私の患者さんではがんを抱えたまま、現役で働いている方が多くいます。
患者さんが治療の一環として興味を持つことには、危険なものや害のあるものを除いて、基本的に反対しません。ただ、健食について問題なのは、明確なデータの提示なしに有効性ばかり強調されることです。そのような意味からも、健食摂取に関して客観性を持って指導する医師が必要と考えています。
さいたま市高砂1-14-14 たけふじビル5F
とまつ内科・胃腸科クリニック
TEL/048-823-4111
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(Medical Nutrition 32号より)
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