肝機能障害の食事療法

安定期の肝疾患の食事療法は、高たんぱく、高エネルギー、高ビタミン食が基本となるが、病態によって異なる部分もある。それぞれの肝疾患の栄養食事療法について、聖マリアンナ医大病院栄養部の中村丁次部長の著による『食事で病気を治す本』(法研)から抜粋して紹介する。


 急性肝炎

急性肝炎は割合自然治癒する傾向の強い疾病であるため、ウィルスに対する抵抗力を高めるとともに、肝臓の細胞修復を目的とした積極的栄養摂取が重要となる。

特に急性肝炎の発病初期には食欲不振、発熱などの症状が重なり、摂食困難に陥り、消化、吸収能力も低下しているので、口当たりがよく摂食・嚥下しやすい粥食にする。脂質は食欲不振がある際や黄疸が強いときは制限する。

黄疸がもっとも強くなる頃になると、種々の自覚症状は軽減し、食欲も回復の傾向になる。食欲が回復してきたら、早い時期からご飯食とし、たんぱく質やビタミン、ミネラルを多く含む食事に移行させていく。これまでに、エネルギーを不足させず、たんぱく質やビタミン、ミネラルをできるだけ多く摂取する事が肝機能障害改善の早道とされている。

また、注意点としては、一般的に消化機能全般に低下がみられるため、食事の摂取量が自然に少なくなる。このため、少量で消化が良く、かつ栄養価の高い食品を積極的に摂るように心がける。

 慢性肝炎

原因療法として、抗ウィルス剤のインターフェロンα、βや対症療法としての強力ネオミノファーゲンCを用いるが、あくまで治療の中心は、各栄養素をバランスよく摂取することで、肝臓の炎症が鎮静し、障害が回復するのを待つことが重要となる。

1日に必要なエネルギーが不足すると、グリコーゲンやたんぱく質の分解が亢進し、肝機能回復の障害となるため、1日に必要なエネルギー所要量は満たすように心がける。

基本的には、肝細胞の再生修復を促進し、肝機能を早く回復させるためたんぱく質を十分摂取するようにする。GOT、GTPが非常に高い値を示す最中には、肝細胞の破壊が起こっているので、高たんぱく食にしてもたんぱく質が十分利用されない。むしろアンモニアの上昇が懸念されるので、1日の摂取量(60g以内)を制限する。

また、脂肪はとくに肝臓に悪い作用をすることはないので、ふつうに摂取し、糖質に関しては肝臓への有効なエネルギー源として十分に摂取する。ほかに、各種ビタミン、ミネラルの補給も重要なファクターで、牛乳、乳製品、肉類、レバーなどを積極的に摂るようにするとよい。

 脂肪肝

脂肪肝は文字通り肝臓に脂肪が異常に蓄積した状態を指す。原因としてアルコール、肥満、糖尿病などがある。脂肪肝になった患者では、蓄積した脂肪を除去するため、摂取エネルギーを制限することが求められる。エネルギー不足が生じ、それを補うために肝臓内の脂肪が使われる仕組みだ。

そして次に、たんぱく質の確保。良性のたんぱく質を十分に補給するよう心がける。肝細胞の再生促進と、リポたんぱくの生成による脂肪の血中への放出が目的だ。たんぱく質摂取量の目安は1.0〜1.2/kg。魚、肉、卵、豆腐などからたんぱく質を摂取する。

砂糖や、菓子類に含まれるショ糖は、体脂肪になりやすいため、できるだけ制限する。肝臓での代謝を円滑にするために、ビタミン、ミネラルは十分に摂取する必要がある。また、食物繊維は低カロリーで、食事のカサを増やしたり、脂質や糖質の吸収を遅らせる働きがあるので、野菜、海藻、キノコなどをしっかりと摂るようにする。アルコールが原因の場合はもちろん、肥満や糖尿病を合併するケースでも、飲酒は禁止とする。

 肝硬変

肝の線維化が進むと肝硬変となる。この時期になると安静と食事療法が治療の中心となってくるが、肝硬変は代償期と非代償期によって食事の内容は異なる。代償期では、十分なエネルギーの補給、高たんぱく質、高ビタミン食。肝性脳症を予防するために分岐鎖アミノ酸の多い食事を選択する。油は、植物油を適量摂る。

一方、非代償期では、血液中のアンモニアを低下させるため、たんぱく質の制限を厳しくする。1日30〜40gが目安となる。油は調理用も含めてほとんど使用しないこととする。胆汁の生成が悪く、脂肪の消化能力が著しく低下しているからである。しかし、肝臓の機能を維持するために、エネルギーは不足しないようにする。主食、あるいはデザートなど糖質からの摂取を中心とする。

(Medical Nutrition 31号より)


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