肥満は「生活習慣病」のもと タニタ体重科学研究所 池田義雄所長に聞く
かつて「成人病」といわれた高血圧や糖尿病が今は「生活習慣病」と呼ばれるように、食事や運動などの習慣が密接に関係する病気があることがわかっています。なかでも、肥満は多くの生活習慣病の引き金になるとされており、正しい知識に基づいた対処が必要です。肥満と生活習慣病の関わりや日常生活のポイントについて、タニタ体重科学研究所の池田義雄所長(前・慈恵医大健康医学科教授)にお聞きしました。
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さまざまな肥満のタイプ |
- ――何気なく肥満といいますが、正確にはどのようなことでしょう。
- 池田義雄所長(以下、敬称略)
- 医学的には、体の中に脂肪組織が過剰に蓄積した状態で、その結果として体重が増加します。日本肥満学会では、BMI[体格指数=体重(kg)÷身長2(m)]が25以上を肥満と判定します。
- ――原因は遺伝ですか、食べすぎですか。
- 池田
- 遺伝と生活習慣が半々でしょう。必要以上のエネルギーを摂りすぎたり、摂ったエネルギーが消費しきれなかったりすると、余分なものがどんどん蓄積されます。また、人によっては、遺伝的に脂肪を貯め込みやすい仕組みを持つ人もいます。
- ――脂肪は身体のどこにでもつくのですか。
- 池田
そうです。体についた脂肪を「体脂肪」といい、どこにつくかによって、「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に分けています。リンゴ型とか洋ナシ型といった言葉を聞いたことがあるかもしれません。前者は上半身肥満で内蔵脂肪型、後者は下半身肥満で皮下脂肪型を指します。部位の違いによって、生活習慣病のかかり方に違いが見られることがわかってきました。
- それとともに、「脂肪の性質」による分け方も知っておいて下さい。「白色脂肪」と「褐色脂肪」で、成人では95%以上は白色脂肪です。
- 問題なのは、白色脂肪がホルモンやそれに似た物質を出して、身体にさまざまな作用を及ぼすことです。例えば、食欲やインスリンの働き、動脈硬化などへの影響があり、白色脂肪自体が「巨大な内分泌組織」と言えましょう。
- ――白色脂肪が悪者ということですか。
- 池田
- そうとは言い切れません。長い人類の歴史の中で、自然に作られてきたシステムですから。
- 今でこそ私たちは「飽食の時代」に生きていますが、人間は飢えている時代の方がはるかに長かったのです。そのため、生命維持に必要なエネルギーを補給できないときに備え、体に脂肪を貯め込んでおく仕組みがありました。白色脂肪はその役割を担っていると考えられます。
- 人間の遺伝子には、飢餓に対する十分な備えがあっても飽食に対処するプログラムが組み込まれておらず、急激な生活様式の変化についていけないのでしょう。
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肥満と生活習慣病の「死の四重奏」 |
- ――その結果が肥満ということですね。
- 池田
その通りです。恐ろしいのは、肥満が生活習慣病の危険因子になると言うことです。ざっと挙げても、高血圧、糖尿病、高脂血症、痛風、変形性膝関節症などで、特に最初の3つは動脈硬化にもつながるので、肥満とあわせて「死の四重奏」と呼ばれています(図1、2)。同じ肥満でも、専門医は脂肪がどこにつくか、その脂肪の性質はどうか――の2点に着目しますが、その観点からすると、特に内臓脂肪型肥満が要注意です。
- なぜかと言うと、内臓脂肪の成分である白色脂肪の活性が高いこと、また、文字通り内臓にあるので、白色脂肪からの分解産物や分泌ホルモンなどが、巨大な化学工場である肝臓に集中して負担をかけるからです。
- 日本人の死亡原因で、がんが1位なのはご存知でしょう。2位は脳血管障害、3位は心疾患で、いずれも動脈硬化が関与しています。2位と3位を合わせると死亡数の約3分の1ですから、肥満が出発点となって、重大な病気に罹る可能性があることを理解しておきましょう。
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体重とともに内臓脂肪のチェックも |
- ――そうならないためにはどうすればよいですか。
- 池田
- 何と言っても予防が大切です。言いかえれば、20歳代の体重、体脂肪をいかに維持するか、ということ。増加は10%以内に抑えたいものです。また、ウエスト(へそ周囲の径)が増えた場合は内臓脂肪が蓄積した可能性がありますので、これにも気を配りましょう。家庭で体重、体脂肪率と内臓脂肪をチェックできるヘルスメーター「インナースキャン」がタニタから発売されています。
- 人間の体は、年齢や身体の状態に応じて基礎代謝(呼吸や心臓の拍動など、生きていく為に必要なエネルギー)が決まっています。年をとるにつれて、基礎代謝の量が落ちるので、(1)基礎代謝を落ちにくい身体にする(2)基礎代謝に見合った食事、運動を心がける――ことが大きなポイントになります。基礎代謝は年齢、性別などで異なりますが、成人1日あたり1200〜1400kcalです。
- 具体的な対策に入りましょう。(1)には、筋肉をつけるのが良いので、無理なく続けられる程度の筋力トレーニングをお勧めします。直接減量する効果はありませんが、基礎代謝を上げるので1年続ければ、太りにくい身体になってきます。(2)は、やはり食事の絶対量を減らすこと。3食とも減らすのはなかなか難しいでしょうから、どこか1食で行います。
こう話すと、昼にそばやうどんばかりを食べる人がいますが、同じ量でもよく噛んで食べられる食事の方が、肥満対策には合理的です。クラッカーやスープなどを組み合わせて、カロリーをセーブしながらも栄養素は落とさないように工夫された補助食品が発売されていますので、それを1日1回、通常の食事に置き換える方法もあります。大切なのは、それを良く噛んで食べることです。
- 最後に、肥満体質のチェック項目を掲げました(図3)。心当たりのある方は、先にお話した対策を、できることから始めて下さい。肥満だけではなく生活習慣病の予防にもなります。
プロフィール
池田義雄(いけだ よしお) 昭和10年生まれ。昭和36年、東京慈恵会医科大学卒業。昭和59年、同大第3内科助教授。平成5年、同大健康医学センター健康医学科教授。平成12年に退任し現職。専門は内科学および健康科学。 |
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(Medical Nutrition 31号より)
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