肝細胞に良い栄養環境を与える栄養食事療法

再生力に富み、予備能も大きい肝細胞に良い栄養環境を与えて、修復再生をはかることが肝臓疾患の食事療法の目的。その基本は、偏食や不規則な食事を避けて、バランスの取れた食事を心掛ける点にある。臨床で食事指導にあたる管理栄養士や医師に、栄養食事療法のポイントを聞いた。


 症状にあわせて使い分ける20種類の機能性素材

自由診療で予防医療と栄養療法を行う笹塚クリニック(東京都渋谷区)には、慢性肝炎の患者が多く訪れる。彼らを肝硬変や肝がんへ移行させないためにも食事指導はぜひ必要だ。首席研究員の浜田璋子さんは、5人の管理栄養士とチームを組むが、まず患者にその点を納得してもらうことから始める。

肝細胞は再生のスピードが早いが、栄養状態が悪いとそのスピードが遅いとされる。浜田さんによると、食事療法の基本は「高たんぱく質、高ビタミン」。

かつては高エネルギー食が推奨されていた。それは肝細胞の修復の際に代謝が増大し、エネルギーが必要と考えられていたためだ。しかし、太るとエネルギー代謝が増え、逆に肝臓に負担がかかるので、よくないとされるようになった。ビタミンは糖質、脂質を利用するのに必要。また、ビタミンC、E、β-カロチンは免疫力を高めてウィルスの活動を抑える作用などが期待できる。

同クリニックでは20数種類の機能性素材を、患者の症状にあわせて使い分けているが、肝疾患に使われるものとしては、(1)タウリン=肝機能の強化、(2)グルタチオン=解毒、過酸化脂質の分解、肝庇護、(3)ラクツロース=腸内のアンモニア発生の抑制、(4)分枝アミノ酸=肝臓の栄養状態の改善――がある。

こうした指導を守ると、患者は自覚症状(だるさ、疲れやすさ)の改善を感じる。また、血液検査、細胞分析の血液像も改善され、励みになるようだ。具体的な指導と、視覚に訴える検査を組み合せることで、食事療法は長続きできるという。

同クリニックのように食事療法の補完でサプリメントを推奨する医療機関は増えつつある。 女子栄養大学・栄養クリニック(東京都豊島区)では、今年1月からサラリーマンを対象にした健康教育講座「ヘルシーダイエット夜間コース」を開設しているが、受講者の中には市販のサプリメントを利用する人も少なくない。管理栄養士の松田早苗さんは、「脂質を抑える必要のある人は、サプリメントを摂取することも一つの手でしょう。ただ、断片的な情報から摂取している人が多いので、今後は体系だった栄養教育が必要です。基本は普段の食事。サプリメントはその補完剤です」と話す。

 肝機能対策に有効なプラセンタとウコン

10年ほど前から名古屋大学をはじめとする数施設で、C型慢性肝炎に対し瀉血療法が行われている。しかしこの療法を行った後も、食事の状態によっては体内の貯蔵鉄を示す血清フェリチン値やGOT、GPTが上昇する例があるという。そこで、綾部市立病院内科(京都府綾部市)の松本匡史医師は、C型慢性肝炎に対して鉄分摂取を抑える食事を指導している。

栄養士と連携し、患者の食事内容をチェックして鉄分の多い食事は控えるようにしている。食事療法が奏功した場合は、GOT、GPTが低下してくる。

一方、吉田クリニック(東京都渋谷区)の吉田健太郎院長は、プラセンタエキスを肝疾患の治療に用いて、効果をあげている。「プラセンタは、(1)肝細胞の増殖を活発にする、(2)血流量を増加させる、あるいは(3)SOD様の働きにより、肝疾患に効果を現すようです。だるさ、疲れやすさといった自覚症状および肝機能検査値の改善がみられます」(吉田医師)。

高田馬場病院(東京都豊島区)の中本譲院長は、第49回日本栄養・食糧学会大会で、ウコンの機能について発表したことがある。中本医師は「健康食品のなかでも、医薬品に近い効果があると思います。肝機能が少し悪い人、あるいは健康な人の二日酔いの防止には単独で使いやすい食品です。GOT、GPTといった数値が下がってきます」とその位置づけを語る。ウコンにはクルクミン、ターメリック、アズレンなどの成分が確認されている。胆汁の分泌促進作用があるので、食欲が進み、消化を助けるという。

(Medical Nutrition 17号より)


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