インタビュー
 帝京大学医学部附属市原病院 第三内科 並木隆雄医師

帝京大学医学部附属市原病院(千葉県市原市)の並木隆雄医師は、西洋医学に漢方による治療を取り入れ、軽症高血圧や肥満の改善などに効果をあげている。西洋医学と漢方を組合せた治療について、並木医師にその現状を聞いた。


 西洋医学はタテ系、漢方はヨコ系

―― 漢方を導入した目的は。
並木隆雄医師(以下敬称略)
小柴胡湯などポピュラーなものは以前から導入していました。まずはいわゆる西洋医学的な治療を行います。それに欠けているところを補う目的で漢方を使います。当院ではエキス剤を中心に扱っています。今は20種類ぐらいですが、今後エビデンスのあるものを採用し、徐々に広げていきたいと思います。

―― この場合のエビデンスとは。
並木
客観的に有効であるということ。漢方薬は、まだエビデンスが完全に確立されていません。客観的な効果を西洋医学的な方法で証明していく。二重盲検法とか、そういったものを出していかないと、漢方は広がらないと思います。逆に言えば、エビデンスをこれからつくっていこうと思っています。当院の消化器科の医師が大建中湯の腸閉塞に関する基礎的なデータを発表して、アメリカの学会でも取り上げられています。

―― 漢方薬はどのような局面で使うのですか。
並木
虚血性疾患などでは、なってしまった人の治療法は西洋医学の方が進んでいます。しかし危険因子に対する治療には漢方が使えるものもある。動脈硬化を予防するといったことです。
 
コレステロール値を下げるというような場合、西洋医学的な治療をしても動脈硬化が進むケースがあります。こうした場合に漢方を使います。作用が急激ではなく、長期の服用という点で安全性も考えると、有用性があると思います。できるだけデータのあることが条件です。大柴胡湯、小柴胡湯などの柴胡剤には、動脈硬化を進行させないという基礎実験データがあります。また、桂枝茯苓丸、桃核承気湯などの駆 血剤にも動脈硬化の進行を抑制するという基礎実験の報告があります。

―― 漢方に変えた患者に対して従来の製剤との相互作用は。
並木
今のところ作用が減弱したなどのケースはありませんが、これについてはまだ研究が進んでいません。

―― 患者の健康食品の利用について。
並木
薬剤の予想された効果がでないので患者に聞いたところ、健康食品を利用していることがわかりました。それを中止してもらったことがあります。患者にはそうした事実を話して欲しいと思いますが、逆に健康食品について聞かれても医師側がきちんと答えられないのが現状です。健康食品についても研究が必要だと思います。

―― 漢方治療の効果は。
並木
これまでに軽症高血圧や肥満の改善に効果を得ています。肥満を改善することで間接的に境界型の耐糖能異常や高脂血症を治すこともできる。例えば西洋医学では3種類の薬剤が必要なところを漢方では1種類の薬剤でできる。薬剤を減らすというコスト面でも有効な部分があります。西洋医学と漢方はタテ糸とヨコ糸の関係のようなものです。西洋医学は動脈硬化などの疾病に対して、漢方は患者の体質などに対してアプローチしていく。それら両方を編みこんでいく治療は全く矛盾しないのです。

(Medical Nutrition 18号より)


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