専門医が語る痴呆症対策
 浴風会病院 大友英一 院長

浴風会病院(東京都杉並区)の大友英一院長は、神経内科・老年医学の専門医として、長年にわたって高齢者を診察してきた。大友院長は、脳循環・代謝改善薬の開発に携わってきた一方で、予防策として機能性食品の可能性を探るため、食品の臨床試験にも取り組んでいる。


 脳の老化を遅らせることが予防の基本

アルツハイマー型痴呆の記憶・知能障害は、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンが不足して起きると言われる。新薬開発の現場も、アリセプトに代表されるようにアセチルコリンの作用を強めるものが主流となっている。大友院長は動物実験でアセチルコリン量を増大させる作用が確認されている卵黄コリン(ホスファチジルコリン)と、中枢神経系の働きとその維持に欠かせないビタミンB12を組み合わせた試験食を、痴呆症患者10人に投与して観察したところ、全般改善度は軽度改善6例、改善1例、不変3例という結果を得た。

高知医科大学の池田久男学長も、脳内のアセチルコリン血中濃度を増加させる物質としてビタミンB12に注目、「卵黄コリン+B12」の臨床試験で改善効果を得ている。食品機能の応用について大友院長は、発症を予防するためには有効という。

「今の段階では、痴呆症を治すクスリは存在しません。アリセプトにしても進行を抑えるだけです。また、ある特定の物質だけでは説明がつきません。多様な因子が関与していると考えられます。ですから何よりも予防することが重要になるのです」。

大友院長は、老人医療の現場に携わってきた経験から、脳の老化には個体差があるという。「アルツハイマー型もそうですが、血管性の痴呆症も脳の老化と関係しているわけですから、とにかく脳の老化を遅らせることが、痴呆症予防の基本と言えます」。浴風会病院の篠原医師らの研究によると、食事と痴呆症の関係では、甘い物が好きな人、夜に沢山食べる人などが、痴呆症になる可能性が高いという。

「老化を遅らせるには、まず食生活を改善すること。それと文章を書くなど頭を使って脳へ刺激を与えることです。副作用の心配がない機能性食品を利用することも、老化防止の有効な手だてとなるでしょう」。

脳機能の活性が期待される食品素材

脳機能の活性化に寄与するものとして、イチョウ葉エキスがある。
 
欧州では医薬品だが、米国では現在、抗痴呆薬の承認に向けて第3相臨床試験が実施されている。WHOでは脳血管性痴呆、アルツハイマー型痴呆など対象疾患を絞らず、抗痴呆薬として認めている。
 
EPA、DHAも有望視されている。スウェーデンのカロリンスカ研究所は91年に、アルツハイマー型痴呆で死亡した人の海馬付近のリン脂質中のDHA含有量が7.9%であるのに対し、それ以外を死因とする人では16.9%であったと報告。
 
また予防ガン研究所の平山雄所長らは、17年におよぶコホート研究で「魚を毎日食べる人」がアルツハイマー型痴呆で死亡する率は人口10万人に対し121であり、一方「食べない人」は175であると報告している。EPAに関しては2000年9月の日本痴呆学会でも発表があった。

(Medical Nutrition 19号より)


BACKSITE TOPPAGE TOP