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痴呆対策の決め手は、早期診断と生活習慣
2020年には現在の倍増の270万人と推定される痴呆症患者。有効な治療法や予防策が確立されていない現状で、最も期待されているのが早期診断により導かれる軽度痴呆の進行抑制だ。痴呆医療の現状と予防への展望動向を報告する。
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期待高まる早期治療 |
痴呆の治療法を巡っては、薬物治療で唯一、軽度ないし中等度のアルツハイマー病に対する「アリセプト」が承認されているものの、根治療法と言える有効性の高い治療法が確立しておらず、発症後のケアに頼らざるを得ないのが現状だ。
130万人(1995年現在)とされる痴呆症患者は、2020年には270万人へと倍増が予測されており、老人医療政策のなかで最大の課題となっている。脳神経科学や遺伝子解析の進展によって、今日までに原因となる遺伝子やタンパク質、酵素などが明らかになりつつあり、発症に至るメカニズムは解明に向けて激しい研究レースが展開されている。その反面、治療手段はもとより予防手段に目を向ければ、まだまだ課題は多く残されており、社会的な環境整備を含めて手探りの段階にあることは否めない。
痴呆症を巡る医療は介護保険のスタートにより、治療から介護へとシフト・チェンジする傾向が強い。しかし、初期のアルツハイマー型痴呆は適切な治療により進行を抑制することもあるため、早期治療法の確立に期待が高まっている。
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診断マーカーと環境因子の低減 |
96年7月に国内初の「痴呆予防ドック」を開設した津生協病院(三重県津市)では、先月11日までに444名の受診者を数えた。ドック開設に踏み切った脳内科の笠間睦医師は、予防ドックでMRI、問診テスト(改訂長谷川式簡易知能評価スケール、かなひろいテスト)、アポリポ蛋白採血検査(ApoE)で総合的な診断を行っている。診断の内訳は「正常」125名、「良性老人性もの忘れ」35名、「軽症認知障害」3名、「初期アルツハイマー病」75名、「アルツハイマー病」83名、「脳血管性痴呆」9名、そのほか脳腫瘍、クモ膜下出血後遺症、慢性硬膜下血腫など――。早期診断の有用性を期待してドックを開設した笠間医師も「治療効果が期待される痴呆は、初期ないし中期のアルツハイマー病。効果が見られるのはごく一部の症例に限られる。メ約9カ月進行を遅らせるモといった治療効果をメ社会的に有益モとするかは意見が分かれるところであり、今後の治療(予防)薬の確立と早期
その早期診断マーカーの発見は、研究者の悲願でもある。東京大学大学院加齢医学講座講師の難波吉雄医師は、生物学的診断マーカーを研究している。「痴呆はいかに早く見つけられるかが、治療効果を左右する。そのため現在の評価方法をより簡便に血液でできないかという研究が世界的な関心を呼んでいる」という。
また難波医師は「痴呆症は変性疾患ではあるが、食生活などの環境因子が深く関係し、象徴的な言い方をすれば生活習慣病と言える」とも語る。これは、自治医大大宮医療センターの植木彰医師と共同で行っている厚生科学研究に裏づけられたコメントだ。両医師はアルツハイマー型痴呆患者の血中成分について検討し、患者は対照に比べて魚、緑色野菜の摂取が少なく、カルシウム、ビタミンC、カロチンが有意に低いと報告。さらに多価不飽和脂肪酸n-6/n-3比が高く、n-3系が極端に少ないことを見出している。実際、難波医師は東大病院老年病科でEPA製剤「エパデール」を投与することがあり、「落ち着きや集中力が改善され痴呆症状がよくなることがある。食習慣だけでなく運動習慣や休養習慣なども関係するだろう」と語る。
99年、藤本クリニック(滋賀県守山市)を開業した藤本直規医師(院長)のもとには、専門医療を受けるため遠来の患者も目立ち、1年で550名が「もの忘れチェック外来」を受けた。「キーワードは受診のしやすさ。初期の患者の主訴や生活状況を捉えることが重要」と藤本院長。受診の遅れの解消が最優先課題だ。
かつて多数を占めた脳血管性痴呆に代わり、アルツハイマー型痴呆が全体の5割を占めるまでに増加した。脳血管性痴呆を導く脳梗塞の第一の予防策は、生活習慣の改善だ。アルツハイマー型痴呆についても、唯一原因遺伝子と認知されているApoEですらSNPsが未解明であり、環境因子が関係する以上、生活習慣の見直しによる一次予防が重要だ。早期発見・早期治療の方法論の確立が待たれ、老人医療の質的向上が叫ばれるなか、医師の職能が改めて問われている。
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メディカルフロンティア戦略
痴呆予防プログラムを来年度から 厚生労働省が2001年度からスタートする「メディカルフロンティア戦略」では、その核として痴呆の予防及び進行の抑制に関する研究事業が盛り込まれる。痴呆症のスクリーニングなどについて研究が実施される計画だ。 来年度のスタートに向けて、介護・予防研修事業研究会(会長=岡本裕三・神戸市看護大学教授)が発足し、転倒骨折予防、閉じこもり予防、脳機能低下予防、気道感染予防、介護予防企画推進――の5つの小委員会で検討が始まった。痴呆症の予防対策としては、脳機能低下予防小委員会(委員長=藤本直規・藤本クリニック院長)が2000年8月13日に開かれ、「痴呆予防教室」の運営に関するマニュアル策定作業が行われた。 メディカルフロンティア戦略では、地域型在宅介護支援センターを受け皿に「痴呆予防教室」が開設される。もの忘れなど痴呆の兆候を自覚した高齢者や痴呆を案ずる家族を対象にアルツハイマー型痴呆症の早期発見と進行の抑制・遅延を図るのがねらいだ。経費は2分の1を国が負担し、残りを実施主体である都道府県が負担する。 |
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(Medical Nutrition 19号より)
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