免疫活性素材の学術動向

世界規模で再評価が進む代替医療。しかし、がん治療の現場では代替医療というよりも、通常医療を補う“補完医療”という方が適切だ。免疫活性作用があるとされる機能性食品を臨床応用する場合も、その狙いは副作用を軽減させるなどQOLの向上を目的に戦略に使用するケースがほとんどだ。科学的根拠が乏しいと言われていた機能性食品も、近年は学術的なアプローチが進んでいる。主な食品素材の中から免疫活性作用を検証した学術動向をまとめた。


 アガリクス・ブラゼイ・ムリル

元三重大学教授の伊藤均氏らは、2000年10月4〜6日に横浜で開催された第59回日本癌学会総会で、アガリクス・ブラゼイ・ムリルの培養菌糸体由来の多糖体(ATOM)を使った抗腫瘍免疫作用について発表した。

試験は、マウスルイス(3LL)をC57BLマウスのfoot padに移植し、ATOMの肺転移抑制効果を調べた。また抑制機構を解明する目的で、対照群とATOM投与群における細網内皮系に対する血中貧食能、肺・腹腔内マクロファージ数及びラテックス粒子貧食能、脾臓内Tリンパ球サブセットに及ぼす影響や、ヒト血清を用いた抗原抗体交叉免疫電気泳動法により、生体内補体第3成分(C3)活性について検討した。

ATOMの肺転移抑制機構には、血中貧食能の亢進、肺・腹腔内マクロファージの増加、ラテックス粒子による抗体非依存性貧食能の促進、脾臓内全T細胞の増加、ヘルパー/インデューサーT細胞・NK細胞・活性化マクロファージの賦活及びEGTA存在下における抗体非依存性のalternativepathwayによる生体内C3活性化作用が関与することが示唆された。これにより、ATOMは担腫瘍マウスに対して免疫増強作用を有し、3LLの肺転移抑制効果を示した。

 マイタケ

米ニューヨーク医科大学泌尿器科の田崎寛教授、センスケ・コンノ助教授らが行った抗ホルモン型前立腺がんに対するマイタケ抽出物グリフロン・D-フラクション(GD)の抗腫瘍効果の実験では、がん細胞のアトポーシスを示唆する結果が得られた。

試験で、ヒト前立腺がん細胞であるPC-3に480μg/ml投与したところ、約99%のPC-3細胞に細胞膜の著しい酸化応力が生まれ、核内のDNAが分解し、細胞のアポトーシスが起こることが確認できたという。また、200μgのビタミンCやBCNL1(カルムスチン)という抗がん剤を併用した場合は、GDの濃度を1/8〜1/16にしても同様の作用が見られるとして、ビタミンCとある程度の抗がん剤との強い相乗作用も確認した。

富山医科薬科大学医学部の田澤賢次氏らは、マイタケによるAOMラット大腸発がんの抑制効果と発がん抑制作用を解析するため、フリーラジカルの抑制効果について調べた。その結果、@マイタケ粉末を20%含む餌Aマイタケ粉末を5%含む餌B通常の餌――の3群のがん発生率は、@が25%、Aが92%、Bが100%と@は著しい減少効果をみせた。活性酸素消去能についても、マイタケはヒポキサンチン-キサンチン・オクシターゼ(XDO)とフェントン反応においても最も高い活性酸素消去速度を示した(第59回日本癌学会総会ポスター発表/P16-2化学予防物質)。

 メシマコブ

韓国生命工学研究所の兪益東・研究部長らは、「メシマコブ が生産する免疫増強多糖体の化学の構造と抗癌と抗糖尿活性」について報告している。

同研究所では、メシマコブ菌糸体培養液の熱水抽出物から強力な抗がん、抗糖尿活性を示す免疫多糖体を抽出した。

 ハタケシメジ

三重大学生物資源学部教授の久松眞氏らの研究グループは、ハタケシメジ由来熱水抽出物の抗腫瘍効果を経口投与により検討し、第59回日本癌学会総会で発表した。それによれば、試験の結果からハタケシメジ子実体の熱水抽出物エキスの経口投与により延命効果が認められたという。

米国で解明が進むGCP

担子菌多糖のAHCCを研究する医師らのグループ「AHCC研究会」で、最近、GCPと呼ばれる機能性食品を臨床応用する動きが広まっている。

GCP(Genistein-Concentrated-Polysaccharide)は、大豆由来のゲニステインと担子菌多糖類を多く含む新規の天然抗腫瘍物質。ゲニステインは通常、配糖体という構造でゲニスチンとして天然中に存在しているが、摂取した際の吸収率が低いのが難点だった。そこでキノコを培養した際に生じるβ-グルコシターゼという酵素とゲニスチンを反応させ、配糖体ではないゲニステインを得ることで、吸収率を増加し、イソフラボン特有の薬理効果が期待できることになった。

GCPは、ゲニステインとキノコの多糖体による複合的な作用を持つ素材で、とくにゲニステインは新生血管抑制作用や、がん細胞増殖抑制作用、担がんモデル腫瘍縮小作用などが確認されるなど、現在、カリフォルニア大学デービス校やコロンビア大学で、盛んに研究が行われている。

画期的なバイオマーカー・8-OHdG

DNAの構成成分が酸化した8-OHdG(8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシン)は、がんと酸化ストレスとの関連の研究、あるいは治療効果の評価に有用なバイオマーカーとされている。なかでも京都大学産婦人科の山本氏らは、婦人科がんの有病者とそうでない者との比較から、尿中8-OHdGでがんの進行を判断できる可能性を示唆している。

一方、フィンランドのErhola氏らは、肺がん患者の治療への反応と尿中8-OHdGレベルの関連を調べている。

このように、治療効果の判定はもちろんだが、予防医療の観点からの活用も可能だ。すなわち、食事、運動、睡眠などの生活習慣を酸化ストレスの面から評価する際のマーカーとして、あるいは抗酸化機能を有する健康食品の評価など、幅広い用途が考えられる。

(Medical Nutrition 20号より)


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