|
がん検診システムの動向
厚生省(当時)が2000年9月に発表した「平成11年人口動態統計(確定数)の概況」によるとがんによる死亡者数は29万556人。死亡者全体に占める割合は29.6%となった。がんによる死亡者数は一向に歯止めがかからないどころか、男性は肺がん、女性は大腸がんと乳がんが増える傾向にあるという。英国では喫煙率を下げることで高水準にあった肺がん死亡率を低下させた。米国も国をあげて生活習慣改善キャンペーンを展開した結果、90年を境にがん死亡率が減少に転じている。日本では「健康日本21」に一次予防の達成目標が示されているが、具体策は明確になっていない。がん検診システムの動向、代替医療を取り入れた診療実態、臨床応用が進む免疫賦活食品の学術動向をまとめた。
 |
意外!? 乳がん等は早期発見が困難 |
1998年度の日本対ガン協会による集団検診の実施状況によると、同年度は受診者総数が初めて前年度を下回った。部位別では、胃がん=2.71%、子宮頸がん=6.10%、乳がん=3.93%、甲状腺がん=4.35%、肝胆膵腎がん=5.53%が、それぞれマイナスとなった。一方、肺がんは2.47%、大腸がんは4.39%の伸び率となった。
がん対策に費やされる公的資金は1999年度だけでも総額700億円。それでも罹患者や死亡者は、減少する気配が見られない。1998年4月に厚生省(当時)の「がん検診の有効性評価に関する研究班」が発表した報告書によると、子宮体がん、乳がん、肺がんの3種類については、検診では早期発見することが困難として、有用性を疑問視する見解を示している。これをきっかけに自治体の中には、がん検診を見合わせる動きも出ている。
 |
がん特化型の検査手法が不可欠 |
一般のがん検診、人間ドックで実施する血液・尿検査やレントゲン検査、バリウム撮影、超音波(エコー)検査などは、がん検出だけを対象にした検査項目ではない。このため生活習慣病など全身的に影響を及ぼす疾患の検出には適しているといった利点はあるが、がんに対する検査としては「間接サイン」をみているに過ぎないといった欠点もある。
がん専門の検査が含まれていないと、早期発見に対して初期の微小な異常を捉えにくく、またレントゲン検査などの画像診断についても、がんが検出できる大きさに育たないと発見が困難で、発見時にはすでに進行していたといった事態を招くことになりかねない。
一般健診で行うがんのスクリーニングは、経済性や簡便性を重視するあまり、がん検出に重要となる検査の専門性や精度の点では、まだまだ改良の余地があるといわれる。より早く、より確実にがんの兆候を捉えるためには、がん特化型の検査手法が不可欠になることは言うまでもない。
がん死亡者が30万人に迫るという危機的状況にある現在、検診技術の見直しや改良は、予防医学の分野における緊急課題となっている。
 |
免疫機能の異変をチェックする「がん免疫ドック」 |
※ 図表 がん免疫ドッグの受診要領
コンフォート病院(神奈川県横浜市)の宇野克明理事長は、がんをいち早く見つけるために免疫機能の異変をチェックする「がん免疫ドック」を開発した。一般的ながん検診は、ある程度成長したがんを画像診断によって見つける方法だが「がん免疫ドック」では、血液から免疫力と、がんが生じていく過程でつくられる物質を測ることで、異常を早期に発見することができる。
開発者の宇野医師は、「がん研究の進歩によりがんの原因は、遺伝子の変化によるものと免疫異常によるもの、の二つに分けられる。遺伝子はがんになるきっかけになり、免疫は発病の有無に関与していると考えられる。がん免疫ドックは、免疫メカニズムから詳しく調べることで、がんになりやすい体質なのか、がんの兆候が現れていないかがわかる」という。
「がん免疫ドック」システムは、イムノサポート(東京都中央区、TEL 03-3663-0436)が窓口となり、全国の医療機関へ導入を図っている。
 |
がんの危険度を5段階に色分けする「腫瘍マーカー検査」 |
2000年7月に発足した「がん予防ネットワーク機構」(東京都港区、TEL03-3560-6886)も、高度な腫瘍マーカー検査技術を駆使して全身のがんスクリーニングとリスク判定を行うがん専門の検診機関。同機構が展開する「GENKIがん予防健診」は、ホリスティック京北病院(東京都豊島区)の小林常雄院長が 考案した腫瘍マーカー総合解析法(TMCA)を用いて微小がんを発見するシステムだ。
腫瘍マーカー検査は、11項目を測定して、がんの危険度・健康度分類を5段階評価で、わかりやすく色とコメントで表す。このほか一般血液生化学検査、一般尿検査、良導絡測定(東洋医学で用いられる手足の皮膚の代表的測定点(12点)に微小電流を通して、その通電量により全身の経絡からみた健康状態を測定する方法)を行う。自律神経からみて、がんになりやすい傾向を点数化して評価するのが特徴だ。
 |
“代謝機能”を撮るPET 検診 |
欧米で普及しているPET(陽電子断層撮影装置)を導入して会員制の健診業務を行うクリニックも登場した。2000年10月2日にオープンした西台クリニック画像診断センター(東京都板橋区、TEL 03-5922-0700)では、本体価格が1台8億円もするPETを5台、MRIを2台、CTを1台導入した。
従来の診断方法の限界を破ると言われるPETは、体の代謝機能を撮ることで、がんの早期発見を可能にした。CTやMRIが病変の形態を確認するのに対し、PETは細胞の糖代謝の状況を見て、がんの増殖能力の強弱を判断するので、小さな病変でも悪性度の推定が可能になる。 しかも、PET検査を行うことで乳がん患者の場合、2万8000人で年間16億円もの医療費が節約できるという。
同センターの宇野公一院長は、「 将来は保険でカバーできるよう、厚生労働省に働きかけていく」という。

(Medical Nutrition 20号より)
|