アナタは大丈夫? 食生活の正しい知識 糖尿病薬と食品の併用は注意が必要
糖尿病患者は、糖尿病性合併症や動脈硬化性疾患の治療のために複数の薬物を併用する場合がある。相互作用により作用が減弱される場合は、血糖コントロールの悪化をきたす。逆に、作用が増強される場合は、低血糖値を引き起こす可能性がある。また、近年は「血糖値が気になる方に…」と表示されている特定保健用食品が市販されているため、薬物間の相互作用チェックに加えて、機能性食品の摂取状況にも注意を払う必要が出てきた。ここでは、薬物間はもとより、食薬間の相互作用情報にも詳しい医薬情報研究所/エス・アイ・シー医薬情報部門責任者の堀美智子さん(写真)と、薬剤師の青木吉次氏に併用の注意点などを解説してもらった。
 |
血糖値が気になる方のための「特定保健用食品」チェック |
わが国の糖尿病患者は年々増加している。1997年秋、厚生省(当時)の調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」は690 万人。「糖尿病の可能性を否定できない人」を合わせると1370 万人と、まさに国民病という状況である。生活習慣病である糖尿病に対する対策として、一番大切なのは、生活習慣の改善による予防ということになる。食生活に対する正しい知識の普及、すなわち情報が大切となる。
2001年4月、厚生労働省がスタートさせた「保健機能食品」制度は、国民のライフスタイル、栄養摂取状況の変化を受けたものであり、消費者に正しい情報提供を行う制度でもある。保健機能食品は、「栄養機能食品」と「特定保健用食品」の二つのカテゴリーに分類される。特定保健用食品は、「特別用途食品のうち、食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待出来る旨の表示をするもの」と定義された個別に許可を受ける食品で、「糖の吸収を穏やかにするので、血糖値の気になりはじめた方の食生活の改善に役立ちます」のような具体的な表示がされている。
2001年4月11日現在、16商品が血糖値の気になる方のための特定保健用食として許可されている(表参照)。
日本糖尿病学会は、2000年に発表した糖尿病治療ガイドライン2000で、糖尿病の境界型患者の取り扱いを明確にした。「OGTT2時間値が、境界型の中でも高い(170 〜199 ・/dl)群は、糖尿病型への移行率が大であることから、糖尿病に準ずる状態、また、動脈硬化を促進する状態として、定期的に生活習慣の改善を指導することが必要である」と報告している。血糖値が気になる人向けのこれら食品は、食生活習慣の改善に役立つと思われる。また、糖尿病の人は、ビタミンB群、C、Eなどを出来るだけ多く摂ることを勧められているので、栄養機能食品の積極的な活用が望まれる。
 |
糖尿病に対する「特定保健用食品」、その成分一覧 |
表に示す食品に含まれる成分は4種類で、以下のようなものである。
1.小麦アルブミン 小麦蛋白質の約15%を占める水溶性蛋白質である。哺乳類のアミラーゼに対する阻害活性を有するとされ、食後の血糖上昇をゆるやかにする。
2.L−アラビノース アルドベントースの一種で、ショ糖からブドウ糖、果糖に分解する酵素活性を抑えて、小腸から糖質が急激に吸収されるのを抑制するとされる。
3.グァバポロフェノール 熱帯アメリカ原産、フトモモ科のグァバの葉に含まれる成分で、糖質分解酵素マルターゼ、ショクラーゼ、α−アミラーゼいずれの作用も抑制することで、小腸での糖質吸収をゆるやかにするとされる。
4.難消化性デキストリン 水溶性の食物繊維の一種である。デンプンの部分加水分解により得られ、種々の重合度をもったものが存在する。食事といっしょにとることで、小腸での糖質の吸収を遅延させる。
上記のいずれの成分も、摂取した食事に占める糖質の消化・吸収速度と、それに対応する速やかなインスリン分泌の障害を是正させることを目的に商品化されている。この治療アイデアは、医療用の食後過血糖改善薬:α−グルコシダーゼ阻害薬(アカルボース、ボグリボース)に大変近い。すでにα−グルコシダーゼ阻害薬を服用されている患者さんから、これら特定保健用食品の利用相談を受けたときは、慎重にアドバイスすべきである。
もちろん、これらの食品によって低血糖症状が引き起こることはないと思われるが、α−グルコシダーゼ阻害薬と、経口糖尿病薬の併用で、低血糖症状が引き起こされることが知られていることから、α−グルコシダーゼ阻害薬使用中の患者だけでなく、糖尿病治療中の患者に対しては、たとえ食品と言えどもその使用にあたっては医師に相談すべきである。
 |
医療用医薬品と食品成分との相性に要注意 |
ところで、糖尿病の治療中の患者に対して注意をすべきものとして、医療用医薬品の食品成分への影響も考慮すべきである。特に、ビグアナイド系の経口血糖降下薬によるビタミン成分への影響に注意が必要である。
これは、ビグアナイド系の経口血糖降下薬(メトホルミン製剤)を長期に服用した米国患者の約7%にビタミンB12の吸収不良が認められた、との報告がり、国内の同医薬品添付文書でも長期服用患者への注意が記載されている。相互作用のメカニズムは、メトホルミンがビタミンB12とコンプレックスをつくり、容量依存的に吸収を阻害するとされる。国内での服用量は、米国のそれに比較して少量ではあるが注意が必要と考えられる。
過去のわが国の報告では、メトホルミン553 ・/日を平均10.6カ月にわたり服用している患者の調査で、ビタミンB12や葉酸の吸収障害はあっても、わずかであるとされ、臨床上大きな問題とはなっていない。だが、葉酸やビタミンB12の不足は、動脈硬化のリスクとして注目されているホモシステイン値の上昇に関係するとされる点からも、積極的摂取がすすめられていることから、ビグアナイド薬(メトホルミン、ブホルミン)を服用している患者には、ビタミン12の不足に注意した食生活が求められる。
(Medical Nutrition 27号より)
|