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インタビュー
肥満の研究者として知られるタニタ体重科学研究所・池田義雄所長(前慈恵医大健康医学センター教授)に最新の知見と対処法を、また、せんぽ東京高輪病院栄養管理室・足立香代子室長には肥満に対する栄養指導の実際を聞きました。
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「太らぬ先の予防」の啓発を |
- ――最近の研究の動向は。
- タニタ体重科学研究所 池田 義雄所長(以下敬称略)
- 肥満の予防、スクリーニングのために、非侵襲的で実用性のあるシステムを研究しています。まず、従来の生体インピーダンス法を発展させ、体脂肪の分布を体の部分ごとに測定する製品を開発しました。内蔵脂肪が皮下のそれより生活習慣病のリスクが高いことはわかっており、上半身、下半身、四肢と分けてチェックします。これを用いて、腹部の体脂肪率と糖・脂質代謝、血圧との関連を明らかにし、北米肥満学会で報告します。
- もう一つは、インピーダンス法で得られた除脂肪重量から、個人の基礎代謝をより正確に算定できることがわかりました。除脂肪部分が生体のエネルギー代謝に関係するのではないか、という理論から出発しました。これは非肥満の人が、どの程度のカロリー摂取なら健康体重を維持できるかを検証するのに役立ちます。さらに、それが体脂肪計で測れれば、個人対応のきめ細かい食事指導が可能になります。
- ――肥満の病態をどうとらえているか。
- 池田
- 遺伝子異常は決定的な要素ではありません。社会の変化につれてBMIも変化していることから見ても、遺伝と環境因子の両面から追究すべきでしょう。確かに「太りやすさ」はあります。その素因としてレプチン、β3アドレナリン受容体、そして最近では、PPARγ(倹約遺伝子)が注目されています。この遺伝子をもつ人は脂肪の蓄積を招きやすいのです。また、肥満の人はレプチン濃度が高いので、レプチンが効きにくいことは確かでしょう。ただし、通常の程度の肥満への影響は分かりません。 要するに、エネルギーの摂取から消費まで、どの段階でも肥満、やせの可能性があります。それが各人各様なのが、予防と治療に釈然としないファクターが出てくる原因です。
- ――肥満への対処法はどうしたらよいか。
- 池田
- 一般診療でも、特に中高年の患者では、BMIや体重歴を見ていただきたいと思います。20代の頃に比べて体重が10%以上増えていたら、その中身は脂肪だと思ってよいと思います。次に体脂肪の量と分布に注目します。そして十分な問診。具体的には、(1)飲む(2)食べる(3)体を動かすC喫煙――などのライフスタイルを中心に、血縁者の肥満の状況もチェックします。その中に予防と治療のキーワードが隠されているはずです。
- 先ほどの体重歴でいえば、増加を10%未満にするなど、具体的な目標を設定し、ライフスタイルを一つでも、二つでも変えていく。ライフスタイルは相互に関連しているので、どれか一つを変えると、他の因子も変容する可能性があります。太る背景には心の問題があるので、メンタルケアも必要です。
- ――サプリメントの位置づけについて。
- 池田
- 生活習慣の改善が可能なら、あえて摂取する必要はありません。ただし、最近ではα-グルコシダーゼを阻害したり、脂肪吸収を抑制する機能の素材が登場しているし、大豆タンパクが熱産生を高めるとのデータもあり、興味深いところです。
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患者ができることから段階的に |
- ――まず、患者の肥満の現状についてお伺いします。
- せんぽ東京高輪病院 栄養管理室 足立香代子室長(以下敬称略)
- これまで診てきた患者から言えることは、体重が多いのは40代までがピーク。50代以降は健康指向がみられ、体重は落ちてきます。また、体重はそれほど多くないのに体脂肪が多いという、いわゆる隠れ肥満が男女ともに増えています。
- ――病医院で対応すべき肥満とは。
- 足立
- 病医院ですべきことは、患者への動機づけと、指導内容の継続という点です。健診で検査値は分かります。その場で指導もできますが継続がむずかしい。患者に継続して指導できるのが健診との対応の違いです。また、血圧がからんでくると重篤な疾患につながる可能性もあります。こうなると生命にかかわってくる場合があり、病医院で対応すべきです。
- ――肥満に対する栄養指導は。
- 足立
- 基本は患者ができる範囲で、今よりエネルギーを減らすというやり方を繰り返して、減らなくなった時点で他の治療法を考えるという方法です。例をあげますと、36歳の男性で1月の健診時には、身長168cm、体重104kg、体脂肪率は45.5%でした。8月には13kg減量して体脂肪率は32.5%になりました。
- この患者は、コレステロールが222mg /d、中性脂肪は97mg/d、尿酸が若干高く、ASTは47mg/d、ALTは99mg/d、γ-GTPは43IU/lでした。飲酒は家で缶ビール1本程度。アルコールを多量に飲むタイプではありません。エネルギーは約3000。菓子とジュースが好きで全体に過食傾向が見られました。
- この患者の場合は脂肪肝で、血圧も問題でした。栄養指導前の数値で血圧が168/120mmHgと高かったが、薬を使わない方向で食事と運動の指導を行いました。食事だけでは体脂肪が減らないことや、リバウンドが起きる場合があります。この患者も体重が減りにくくなり運動が必要になってきました。最初は運動量が少なかったのですが、その後トレーニングジムに通う気になったようです。生活の中の行動変容が大切なのです。
- ――栄養指導で重要な点は。
- 足立
- 最初から食事や運動など全て実行するのは困難です。前出の患者はスナック菓子といっしょにお酒を飲んでおり、お酒はそれ程多い量ではないので、まずツマミに気をつけるように指導しました。スナック菓子ではなく、野菜、魚や豆腐を摂るように指導したところ、それだけでも体脂肪が減ってきました。
- 効果的な指導は、まず検査値で患者を説得することです。検査の見方は、体重と体脂肪を組み合せて見る。次に肝機能のAST、ALT、γ-GTPを見る。原因はアルコールなのか、夕飯に食べ過ぎているのか、それらが重なっているかなどを見ていきます。患者に検査値を提示し、自分の肥満の現状や原因を理解してもらうことが重要です。そして患者が奪われたくない食べ物や生活スタイルを把握します。できることから薦めることで、患者が継続できるように段階的に指導していく。患者自身が何ができるかを探り、確認しあうことが大切です。患者に3つのことをやって欲しいと思っても、そのうち2つできれば合格と考えています。
(Medical Nutrition 19号より)
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