『骨量』維持にダイエットは逆効果?


 筑波大学研究チームが骨密度に及ぼす運動・食事制限を調査

骨量や骨密度を保つには運動が効果的でダイエットは逆効果――。一般にダイエットをすると骨粗しょう症を招くと考えられているが、筑波大学の研究チームが実施した調査では、この定説に疑問を投げかける結果となった。

筑波大学体育科学系助教授の田中喜代次氏らは、「運動と食事制限による減量が閉経後肥満女性の骨密度に及ぼす影響」について、調査を行ったところ、運動併用群の方が食事制限群に比べて骨量減少の程度が大きくなった。調査の詳細を紹介するとともに、田中助教授にダイエットと骨密度の関係について聞いた。

肥満は、高血圧や高脂血症、高血糖などの生活習慣病と密接に関連しているため、一般に肥満者に対しては減量指導が行われる。その際、食事(摂取エネルギー制限)のみの減量では、脂肪量と同時に骨量も減少することが知られている。

一方、定期的な運動は、骨量を維持もしくは増加させる効果があることが知られている。しかし、食事制限に運動を加えた際の骨量への効果は、「骨量が維持された」「減少した」といった異なる報告があり、一定の見解が得られていない。そこで田中氏らは、肥満の閉経後女性に対する減量プログラムが骨量と骨密度にどのような影響を及ぼすかを検討した。

【対象と方法】

1.対象者
対象者は、BMIが25以上であり、二重エネルギーX線吸収法の全身測定による体脂肪率が30%以上である閉経後女性34人(平均年齢55.7±4.1歳)。このうち田中氏らが開催した13週間の減量教室に参加した22人を(1)食事制限プログラムのみの群9人(食事制限群)、(2)食事制限プログラムに運動プログラムを加えた群13人(運動併用群)、(3)対照群12人とした。閉経の定義は、介入前の時点で最終月経発来後1年以上が経過していることとした。また、対象者の中には骨代謝に影響を与える疾患を持つ者や、薬物治療を受けている者がいないことを確認した。対照群には介入期間内に生活活動内容を変えないように指示した。

2.検査項目及び測定方法
身長、体重、BMI、体脂肪率、脂肪組織量(Fat)、除脂肪組織量(Lean)、骨量、骨密度の8項目を測定した。測定は、介入前と13週間の介入期間終了後の2回にわたって実施した。測定機器、測定手順、測定検者は2回とも同一にした。体重、体脂肪率、Fat、Lean、骨量、骨密度は、DEXA法の全身骨測定より算出した。

3.食事制限プログラム
食事制限プログラムでは、減量補助食品として臨床応用されているマイクロダイエット(製造:サニーヘルス社)を用いた。原則として、初期の2週間はマイクロダイエットを1日2食(1食当たり169〜173kcal)、その後は1日1食を摂取させ、他の食事は1食当たり400〜600kcalの普通食を摂取するよう指示した。対象者には1食ごとに食事内容を記載させ、定期的に管理栄養士のチェックを受けた。1日の総摂取エネルギー量の平均値は、食事記録から推定で、食事制限群972kcal/日、運動併用群1054kcal/日であった。

4.運動プログラム
運動プログラムは、専門の運動指導者の監視下で、ベンチステップエクササイズを週2回、油圧抵抗式マシンによるペーストレーニングを週1回実施した。ベンチステップエクササイズは、個人の体力レベルに合わせて高さが調節できるベンチを用いたエアロビックダンスの一種。運動強度は、主観的運動強度(RPE)が12〜14に保たれるように指導。1回の運動時間は、準備体操と整理体操を合わせて約80分間。ペーストレーニングは、有酸素性運動のステーション(フロアエアロビクス)と、レジスタンス運動のステーション(油圧式マシン8台)を30秒間ずつ交互に繰り返すサーキット形式のトレーニング。運動強度は、RPE13〜15程度を維持するように指導。1回の運動時間は、準備体操と整理体操を合わせて約75分間とした。

5.統計処理
検査項目の値は、平均値±標準偏差で表した。介入前と介入後の測定における群内での平均値の差異は、対応のあるt-testにより検討した。3群における平均値の比較には、一元配置の分散分析を適用し、有意差が認められた項目にはScheffe testを施した。項目間の相関は、Pearsonの積率相関係数から検討した。統計的有意水準は5%に設定した。

【結果】

1.身体組成の変化
運動併用群、食事制限群で体重、BMI、体脂肪率、Fat 、Leanが有意に減少した。対照群では体脂肪率が有意に減少し、体重、BMI、Leanが、いずれもわずかに増加していたが、その減少量や増加量は他の2群と比べるとはるかに小さかった。介入期間中の変化量について3群比較を行うと、いずれの項目にも有意性が認められた。中でも体重、BMI、体脂肪率、Fatの減少量は運動併用群で最も大きかった。

2.骨量と骨密度の変化
運動併用群および食事制限群で骨量が有意に減少した。また、骨密度は運動併用群で有意な減少、食事制限群では減少傾向であった。また、介入前の値を基準として介入期間での変化の程度を変化率(%)で示した。

骨量、骨密度の変化量および減少率を3群間で比較したものを図に示した。骨密度では、運動併用群と対照群および食事制限群と対照群との間に有意差が認められた。中でも運動併用群における減少率が最も大きかったが、運動併用群と食事制限群の間では有意差は認められなかった。骨量についても運動併用群と対照群、食事制限群と対照群の間に有意差が認められ、運動併用群と食事制限群では差が認められなかった。

3. 骨密度と身体組成項目の関連性
減量プログラム参加者(運動併用群と食事制限群を併せた22人)を対象とし、骨密度の変化量と体重や身体組成項目の変化量との相関関係を調べた。その結果、体重、BMI、体脂肪率、Fatの各項目と骨密度との間に有意な正の相関関係が認められた。

 ダイエット食品だけよりも運動併用の方が骨量は減少

一般に運動を行うと骨量が減らない(若年者の場合は増える)と言われるが、田中喜代次助教授らの調査では、食事制限のみよりも、むしろ運動の場合および食事制限に運動を加えた場合で骨量と骨密度のより大きな減少が観察された。

―― 調査を踏まえて骨量とダイエットの関連についてお聞かせ下さい。
田中助教授(以下敬称略)
今回の調査で使った減量補助食品(マイクロダイエット)は、骨密度の減少を予防するものではありません。基本は様々な栄養素をバランス良く摂って、総カロリーを減らし、体脂肪を効率良く落としていくことです。
 
一般にダイエットは骨量や骨密度に悪影響を与えると言われる一方、運動が良いと過度に強調されています。今回の調査では、一般に言われるほど運動の効果はなく、逆に一般に認識されているほどダイエットは悪くないということがわかりました。確かにダイエット食品だけに頼るよりは、運動を取り入れた方が良いことは間違いありません。ただ運動の効果とダイエット食品のデメリットの差は一般に認識されているほど大きくないという点を指摘したいです。

―― 骨密度を落とさず効果的に体脂肪を落とす方法とは。
田中
運動だけで1カ月間に5〜6kg痩せるには、毎日1万歩どころか3万歩あるかないと効果は出ません。毎日3万歩はとても無理ですから、現実的にはダイエット食品を組み合わせざるを得ないでしょう。最初の2、3カ月は食事療法だけで十分です。栄養不足に陥らない食事に徹しながら体重を7〜8kg減らし、体を軽くしてからウォーキングをやる。次にジョギングなりその人に合った運動、スポーツを取り入れる。そうすればエネルギーを消費しながら、体の機能を落とさず体力、筋力、持久力もうまく回復させることができます。太った人が最初から運動をやると膝や腰を傷めることがよくあります。ですから最初は食事療法を行い、次に食事コントロールと運動を併用して行えば、結果的に脂肪を理想通りに落とすことができ、一度減少したかもしれない骨量も、徐々に回復していくと考えられています。

―― 若い女性の間には過度なダイエットを行う傾向が見られますが。
田中
本来のダイエットは、必要な栄養素を十分に摂ることを意味しますが、単純に体重を落とすこと、つまり痩せることがダイエットだと思っている人が非常に多いようです。血糖値が高い人にとっては糖分を減らすことがダイエットです。また痩せている人にとっては、食事を十分に摂って太ることもダイエットです。つまり、個人に合った食事調整を行うことが本来の意味なのです。

プロフィール

田中喜代次(たなか・きよじ)
昭和58年3月、筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了(教育学博士)。昭和58年4月〜平成元年3月、大阪市立大学教養部講師。平成5年4月、筑波大学体育科学系助教授。平成8年4月、筑波大学先端学際領域研究センター人間生態システム研究アスペクト・プロジェクト代表を兼ねる。

(Medical Nutrition 21号より)


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