生活習慣病予防への研究が進む機能性食品

高齢化、慢性疾患の増加、医療費削減、規制緩和など、医療はまさに変革期にある。その流れをうけ、近年は機能性食品を臨床へ取り入れる大きなうねりが起きている。医療サイドの関心の高まりを裏付けるように、2000年には代替医療関連の学会や機能性食品の研究会が本格的に活動し始めた。その一方、大手食品・医薬品メーカーの機能性食品市場への参入も相次いでいる。しかし、医療者にしてみればこれまでの臨床データが少ないこともあり、実際の使用に戸惑いがあるのも事実だ。本特集では、生活習慣病への研究がなされている機能性食品を概観し、その研究動向と現場での使用実態を報告する。


 医療現場での機能性食品

2001年4月から、新しい健康食品の枠組みがスタートした。従来の特定保健用食品の形態、表示を拡大することに加え、ビタミンやミネラルの一部で一定の基準を満たすものについては、栄養機能の表示が認められるようになる。これにより、食生活の補正の際に製品の表示を参考にすることが可能になった。特定の疾病の予防、リスクの低減表示はまだ認められていないが、本格的な疾病予防時代の幕開けであることは間違いない。

すでに海外では、栄養素と特定の疾病のリスクリダクション表示が認められている国もある。また機能性食品の臨床研究が進んでおり、New England Journal of Medicine やJAMA(米国医師会雑誌)といったハイクオリティな雑誌にサプリメントの二重盲検試験やメタアナリシスが報告されている。

「これらの結果を吟味することが、どういう人がサプリメントを飲むべきなのか、具体的なテーラーメイド医療の指標になります」と語るのは、高輪メディカルクリニック(東京都港区)院長の久保明医博。同クリニックでは、例えば肥満に対して、機能性食品を作用機序から4群に分類し、問診や遺伝子診断などの情報をもとに使い分けている。

また、糖尿病の症例では検査会社と提携して体内のSODなどを調べ、SODが少ない患者には抗酸化能のあるサプリメントを積極的に使う。同じ糖尿病でも80例ほど調べると、患者によって大きく異なるという。久保医博は「どのような患者に、どの機能性食品を、いつ使うか。そのための臨床データの蓄積が求められています」としている。

このような医療サイドのニーズを受けて、作り手側にも変化が現れており、基礎研究費の増額や医家向け機能性食品の開発が見られるようになった。

(株)上薬研究所が昨秋発売したキャッツクロー製品は、補完・代替医療の実践者の使い勝手を考慮して開発された。聖マリアンナ医大難病治療研究センターと同社の共同研究では、ヒトマクロファージ系細胞の増殖を特異的に抑え、炎症局所で単球、マクロファージに働いて抗炎症効果を発揮することが見出されている。臨床現場では、神経痛やリウマチなど痛みを伴う訴えに医師や薬剤師が推奨している。

 歯科と生活習慣病

もう一つのうねりとして、生活習慣病と歯科疾患との関わりの追究がある。「口腔の健康=全身の健康=人格の成長」という視点を重視するのは、東京医科歯科大学・志村助教授。口腔には全身の適応の生理機能と同様のフィードバック機能があり、生活の質いかんで全身や口腔の健全度が左右されるとの科学的事実が明らかにされているからだ。志村助教授は、人間の意識が外界に開かれているとき、全身の適応の生理機序も口腔の適応能も強化されていることを、臨床研究、疫学的研究から明らかにし、口だけを診てなされる予防は人間にとって不自然であるという。

「たいていの子どもは一度は虫歯に罹ります。私たち歯科医師は今まで子どもたちに対して熱心な歯磨き指導を心がけてきました。しかし、歯磨き以前の問題が歯科疾患予防に関わっていることが判ってきています」と志村助教授は歯科界の通説を覆す発言をしている。「今の子どもには虫歯に罹ったことによって今後の自分の生活習慣改善の布石になれば」とのコメントには、虫歯を単なる口の中の一疾病として捉えるのではなく、生活習慣病を見据え、かつ重要視している証といえる。

同氏は『身体・口腔・心理』を一体と捉え、口腔内は食物、生活習慣、人間関係を介して全身の健康に関連していると強調する。加えて、「ある一面だけ見て問題解決をはかると健康体になるどころか、病気の予防すらできないのではないか」と指摘している。

(Medical Nutrition 22号より)


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