免疫系の生体防御機能を高める抗体食品に脚光

バイオ技術の進展でメ抗体医食産業モが脚光を浴びている。米国の市場調査会社は、2010年の抗体医薬品の市場規模は約5兆円まで拡大すると予想している。その一方で抗体食品は日本国内だけでも1000億円になるとの予想もある。退行性疾患の増加や、新興・再興感染症の拡大が予想される中、免疫系の生体防御機能を高める抗体医食産業は、ポストゲノムの主流分野になると見られている。


 抗体食品が疾病予防食の主流に

抗体医薬品とは、感染したウイルスや細菌を構成する物質に結合(抗原抗体反応)し、撃退するという抗体の特徴を利用して、体内の標的分子に結合させる目的で投与される抗体のこと。狭義の抗体医薬品は、非特異的なポリクローナル抗体と特異的なモノクローナル抗体に大別され、これにワクチン、サイトカイン、組み換えタンパク質などを加えたものが広義の抗体医薬品となる。米国PhPMA調査によると、バイオテクノロジーを利用した新薬の臨床試験は、2000年9月時点で369 種類にのぼっているが、このうち63種類が抗体医薬品であるという。

野村証券金融研究所の調べによると、「抗体医薬品は、日米の開発進展度のギャップから今後米国から日本への流入が盛んになると予想される。2010年の米国抗体医薬品の市場規模は、アブジェニックス社集計によるウォール街のコンセンサス予測では、約5兆円まで拡大するとされており、少し遅れて日本市場に浸透すると予想している」としている。

創薬アプローチが抗体医薬品にシフトする一方、機能性食品の分野でも抗体食品の開発が急がれている。抗体食品は自然抗体と免疫化処理抗体に分けられ、免疫化処理抗体はさらに単一抗体からなる市場と複数抗体からなる市場に分けられ、その機能的特徴を生かした商品開発が進むと予想されている。

現在、免疫系に作用する機能性食品はキノコ由来のβ-グルカンに代表されるように、マクロファージやNK細胞などを活性させ、間接的に免疫系を強化するものが主流だが、今後は抗体そのものを経口摂取する“抗体食品が、疾病予防食の大きな柱になる可能性もある。

 老人病の多くは生体防御力の低下による日和見感染

抗体食品の作用機序は、抗原となるウイルスや悪玉菌を減少させ、消化器管内の感染を防ぐとともに、体内への侵入を防ぎ、日和見感染などの感染症を防ぐことにある。

例えば、抗生物質への耐性菌が原因で日和見感染症にかかると手の施しようがないが、抗体食品によって生体防御機能を高めておけば予防が可能になる。

また、がんの場合も、がんに命を奪われるよりも生体防御力の低下によって肺炎などの日和見感染で亡くなるケースが多い。抗がん剤は、効果発現量で骨髄抑制等の強い副作用が高頻度で見られる。従って骨髄に打撃を与えることで、がんと闘うT細胞、B細胞の産生を抑えることになる。

日本移植学会理事長の野本亀久雄氏は自著「免疫力」(ダイヤモンド社)の中で、「がんをはじめ高齢者がかかる病気の多くは、生体防御力の低下に起因する日和見感染である。その生体防御力の低下は腸管内のバリアーが弱まることで起きる。腸内の悪玉菌への対応にこそ日和見感染を防ぎ人間の寿命を延ばす秘密がある」と指摘している。

 主な抗体食品素材

抗体食品の主なものは、免疫ミルク、免疫タマゴ、仔牛グロブリン、初乳などがある。

免疫ミルクとは、米国スターリ研究所(SMBI)の過免疫技術を用いて搾乳された抗体含有素材で、脱脂粉乳タイプと、有効成分だけを精製濃縮したタイプ(WPIプラス)がある。

乳牛に対し、人に感染しやすい多種類の病原菌の死菌をワクチンとして繰り返し接種することにより、牛乳中に人に対して有効な抗体を産生させる。人に有用な26種類の活性抗体成分を含む免疫ミルクには、感染防御、老化防止、アレルギー症状の緩和などが確認されている。

免疫タマゴは、抗体産生応答の特に高い鶏に抗原接種を行い、それに対する抗体を卵黄内に産生させた活性抗体含有素材。免疫ミルクとの相違点は、多種類の抗原を同時に免疫化処理することはせず単一の抗原のみを使用する点にある。

仔牛グロブリンは、生後6カ月以内の仔牛から採取した血清を分離、濃縮した抗体食品。母牛の胎盤を通じて得られたIgGなどの抗体成分や生理活性物質が血液中に豊富に含まれている。牛の常在菌が抗原となっており、50種以上の抗体が多量に含まれている。動物試験では、感染防御力の弱い新生ブタなどで疾病率、死亡率の低下が報告されている。

初乳は、出産後0〜5日目頃まで分泌される抗体含有素材。この抗体も牛の常在菌を抗原とする自然抗体である。しかし、日本国内では法律上、産後5日目までの牛の乳は搾乳・販売が禁止されている。

免疫ミルク等の問合わせは、(株)生存環境科学研究所(TEL 03-5810-5676)

海外トピックス
免疫担当細胞を活性させるマイタケ 米国では5000人の医師が臨床応用

米国のがん専門医の間で、日本の食用キノコ「マイタケ」に注目が集まっている。これまでの臨床報告によって、抗がん剤と併用した場合の抑制率、単独投与の場合の腫瘍縮小作用が明らかになってきたことから、治療に応用しようという動きが急速に広まっている。
 
マイタケを食べる習慣がない米国でなぜマイタケに注目が集まるのか−。この問いにアメリカ癌治療センター長で、自身もマイタケを食べているマイケル・ウイリアム医師は、これまでの臨床データにより、マイタケは化学療法の副作用を軽減するだけでなく、がんそのものを縮小させる効果があると指摘する。ウイリアム医師は、「吐き気、食欲不振、抜け毛など、患者の苦痛が明らかに緩和される。これは患者のQOLを高めるという観点から大変重要なこと」と話す。
 
代替医療の先駆者、ロバート・アトキンズ医師もマイタケを「安全な抗がん物質」と高く評価している。また、ホメオパシー治療で著名なアブラム・バー医師が、6人の子宮筋腫患者にマイタケ治療を施したところ、6カ月から1年で筋腫が著しく縮小したという。
 
現在、米国でマイタケをがん治療に応用する医師は5000人にのぼる。98年2月にFDA(食品医薬品局)が米国で販売されている「グリフロン・マイタケD−フラクション」に対し、新薬申請試験(IND)の試験食として認可したことがきっかけだ。
 
ニューヨーク医科大学泌尿器科の田崎寛教授らの研究グループは、この試験食によって、ヒト前立腺がん細胞のアポトーシス効果を確認している。また、試験食にビタミンCを加えるとその効果が高まることや、抗がん剤カルムスチンを併用すると、さらに強い相乗効果があることを突き止めた。これまでの研究では、マイタケ由来の活性β-D-グルカンが免疫担当細胞を活性させることがわかっているが、アポトーシス誘発作用があることが確認されたのは、田崎教授らの研究が初めてだ。田崎教授は、「グリフロン・マイタケD−フラクション以外にもキノコや海藻などの天然抽出物も実験したが、D−フラクションが最も作用が顕著に表れた」としている。

(Medical Nutrition 23号より)


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