実地診療レベルでさまざまな工夫

がんに対する第4の治療法として、免疫療法を導入する医師が増えている。用いられる健康食品や方法はさまざまだが、「体内の環境を調整し、免疫力を高める」目的は共通している。その診療現場を取材した。


 科学的根拠と価格で選択

「患者と相談しながら使っているのは米糠由来のレンチンプラス、韓国で免疫賦活剤になっているメシマコブ、それとアガリクス・ブラゼイですね」。こう語るのは、末期がん患者の緩和医療にあたる東京衛生病院(東京都杉並区)の水上治医師。水上医師は、化学療法剤と免疫活性食品の併用療法を行っているが、その目的は抗がん剤の副作用を抑えQOLを改善させることだ。また、術後の再発を防ぐ目的から免疫活性食品を単独で使用する場合もある。

使用に際しては、まず科学的根拠がはっきりしていること、さらに価格が手頃で継続的に使用できるものを優先させている。メシマコブ は、菌株PL2、PL5の培養菌糸体を使っているが、これは韓国で医薬品として認可されているものと同規格のもの。「ヒト試験のデータがあり、エビデンスという点では申し分がない」(水上医師)。

レンチンプラスも基礎データ、動物試験による免疫賦活作用が確認されており国内はもとより米国、英国の医療機関でがん治療に応用されている。

これらの食品は、患者との相性によって使い分けている。「Aという食品が一人の患者に効いたとしても、他の患者にも効くと限りません。効かない場合はAを止めてBに切り換えるわけです」(水上医師)。ある程度、体力がある患者なら免疫をあげることで腫瘍が縮小する場合もあるが、マーカーが測定不能など重症の場合は、治すというよりは、延命効果やQOLの改善に役立つという。

 「鍛錬」と「保護」を使い分け

1991年に誠快医院(東京都品川区)を開業した鹿島田忠史医師は、自由診療で免疫療法を中心とした治療を行っている。患者はがんが約半数。残りは更年期障害、整形外科疾患などだ。

鹿島田医師は、免疫力を規定する要素は4つあるとしている。(1)年齢(2)体質(3)精神的要素(4)肉体的要素――だ。免疫療法ではそれぞれに対して手をうつ。

まず、(1)年齢そのものは戻すことはできないが、肝機能が低下すると老化を促進することが知られていることから、肝機能をいかに維持するかに着目する。次に(2)体質。もしも自分ががん家系に属するようであれば、早いうちから予防策を講じるとよい。例えば、「パン酵母から抽出したβ―グルカン(NBG)などの免疫賦活食品を摂取する」、「発がん物質(タバコなど)を避ける」、「ストレス抵抗性を高める」――などが挙げられる。

(3)と(4)に関して、鹿島田医師は「それぞれを『 鍛 錬 』する方法と、『 保 護 』する方法がある」と話す。たとえば精神面を鍛えるには、「危機的状況に自分を追い込み、そこでもがくことで本能を呼び覚ます」、保護するには、患者さんとよく話し、「ストレスとなっているものを取り除く」――といった具合だ。

 1ヶ月で体調がよくなれば有望

(4)に対しては医薬品や健康食品を活用する。鍛錬するものとしては丸山ワクチン、蓮見ワクチン、ピシバニールなどの医薬品のほかに、前述のNBGがある。保護するものは、乳酸菌エキスなどで、鹿島田医師は腸内フローラの異常を改善することが免疫力保護に重要だと強調する。

各種キノコ類はそれぞれがNK細胞の活性増強など、さまざまな機能をうたっているが、目の前の患者に合うかどうかはわからない。そこで、「当院ではまず、1ヵ月摂取してみて、体調がよくなったものを相性がよいと判断し、そのまま続けるように指導しています」と言う。

AHCC研究会の会員でもある鹿島田医師は、健康食品の情報収集には余念がない。なかでも「患者さんから『XXはどうですか』と聞かれて勉強するのが一番多い」と言う。いずれにしても、ヒトでのデータがしっかりしたものを使用していく方針だ。

 アポトーシス誘導剤を併用

西新宿クリニック(東京都渋谷区)の佐野鎌太郎名誉院長は、最近「CPL(環状重合乳酸)」をがんの臨床に取り入れ始めた。CPLは乳酸分子が環状また銷状につらなった低分子の乳酸重合体で天然型の乳酸オリゴマー構造を持っている。数々の代替療法を組み合わせてがんの治療にあたっている佐野医師が興味をもったのは、CPLががん細胞をアポトーシスに追い込む作用だという。「CPLは、嫌気性解糖系において必要な酵素の働きを遮断するとされています。当院では従来から、同じくアポトーシス誘導を目的とした薬剤CDA−IIを使用していましたが、CPLとは作用機序が異なるため、併用することでより効果が高まると考えました」(佐野医師)。

すでにこの両者の併用で、2ヵ月後にがん細胞の壊死が見られた症例を経験している。佐野医師は「副作用もなく、CDA−IIと並んで当院の主力療法になるでしょう」と期待を寄せている。

健康食品のコンビネーション療法 岡本記念クリニック

統合医療に長年の経験をもつ岡本記念クリニック(東京都品川区)の岡本丈院長は「健康食品を治療に導入している先生方でも、患者ごとの効果のばらつきを感じている医師が多いかと思います」と語る。岡本医師によれば、いかによい機能性素材が出てきても、それが体内で効力を発揮できる状況にないといけない。薬剤と同じように、吸収され、血液によって全身に運ばれなければならないわけだ。
 
そのため、岡本医師は、健康食品の効果を最大限に引き出すことを目的に、いくつかの素材を組み合わせて使用している。
 
それは、「(1)腸内環境を整え、健康食品を吸収をしやすくする乳酸菌生成物質(2)血流を改善し、吸収された有効成分の効果を全身に到達させるSOD様食品(3)免疫力を高め、生体ががん細胞とたたかうのを助ける食品――これらを併用することです」(岡本医師)。同クリニックでは5〜6年前から導入しはじめ、治療成績が飛躍的に向上したという。

(Medical Nutrition 23号より)


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