インタビュー 「プラス思考を強く、マイナス思考は軽く弱く」 柴田病院 難治疾患研究部 ルイ・パストゥール医学研究センター客員研究員 米国・医学博士 伊丹仁朗医師
日米のがん患者220人が挑んだ富士山登山は、伊丹仁朗医師の生きがい療法の実践として記憶に新しい。「笑い」と免疫の相関を見出したのも伊丹医師の功績だ。伊丹医師に、多角的がん療法「ソラリア療法」について聞いた。
 |
「ソラリア療法」で多角的アプローチ |
- ――診療方針についてお聞かせ下さい。
- 伊丹仁朗医師(以下敬称略)
- がんに罹る人が増える一方で、大学病院などで手術、抗がん剤、放射線といった高度な標準的治療を受けたにも関わらず、困り果てている人が増えています。そこで免疫物質の投与やライフスタイルの改善など、可能性があるものを積極的に取り入れていこうと考えました。
- 私の診療方針は、多角的基本療法にあります。最先端の医療手段と代替医療などの作用が異なるものを多角的に組み合わせることが効果を生むと考えています。がん治療のすべてのステージにわたって、太陽のような明るい光・エネルギー・暖かさがまんべんなく当たるという意味を込め、「ソラリア(温室)療法」(図参照)として提案しています。
- ――精神免疫学の応用について。
- 伊丹
- 精神免疫学は、この20年に大変な進歩を遂げ、憂うつ、悲しみによってNK細胞の働きが弱くなり、がんに悪影響を与えることを明らかにしました。またどういう心の状態が望ましいかという研究も進みました。楽しく笑うと免疫調整作用を持つCD48が免疫機能を正常化させることが明らかになり、楽しく笑うことやイメージトレーニングがNK細胞を強くすることを証明しました。つまり、プラスの心の働きを強くし、マイナスの心の働きを軽く短くすることが重要となります。
- 生きがいに取り組むことでNK細胞を強化する「生きがい療法」も効果を上げます。闘病者は、家族との生活、仕事を生きがいとする人が多く、ボランティア活動、趣味に生きがいを見出す人も少なくありません。生きがい療法には5つの指針(囲み参照)を設けていますが、マイナス部分を克服して、初めてプラスの心の働きが活きてきます。日本人のうつ発症率は7%と言われますが、がん患者に限ってみれば45%以上になります。誰でも告知を受ければ精神的ダメージを受け、NK活性が下がるので、抗うつ剤などで早く手を打つことが肝心です。また、イメージトレーニングも有効な手段です。体の中を熱帯魚が泳ぎ廻ってがん細胞を食べていくイメージなどトレーニング用に吹き込んだ15分間のテープを活用すると患者のNK細胞は例外なく強化されます。
生きがい療法の基本方針
1.自分が自分の主治医のつもりでがんと闘う。
2.今日一日の生きる目標に打ち込む。
3.人のためになることを実行する。
4.死の不安、恐怖と共存する訓練をする。
5.死を自然現象として理解し、現実的・建設的準備だけはしておく
|
- ――患者の免疫機能を高める意義はどこにありますか。
- 伊丹
- 私が診る患者は、既に標準的な治療を受けて来て、治療法がないという人がほとんどです。私は抗がん剤を使いませんが、検査してみると患者のほとんどが抗がん剤で免疫能が低下しています。
- NK細胞の強弱は、がんの予防と治療に大きな影響を与えます。手術前にNK活性が高い人の3年生存率は80%以上ですが、低い人は40%以下と報告されています。ですからがん治療に臨むには、先ず患者のNK活性が高いかどうかを測定しながら高めていく必要があります。
- ――精神免疫学的アプローチのほかに、どういった治療をされますか。
- 伊丹
- 適度な運動を含むライフスタイルの改善はがんの予防や再発予防につながります。食事は低カロリーで少な目と指導し、特に緑黄色野菜や玄米、食物繊維、大豆製品、魚を摂ることを勧めています。
- 標準的治療で免疫を強化する方法は限られていますが、丸山ワクチンなど利用できるものは積極的に取り入れています。海外の新しい治療法も取り入れており、乳がんや前立腺がんに多い骨転移に対しては、フィンランドからクロドロネートを輸入して使っています。これは骨の代謝を正常化させる原因治療型の物質で、腫瘍マーカーを下げ、副作用がなく和痛もでき、非常に効果を上げています。またサメの軟骨を利用することもあります。粉末製品は分子量が大きく小腸から吸収されませんが、液体のサメ軟骨(カナダ製)は腫瘍部位での血管新生を抑えることができます。
- 再発予防としてはエビデンスに基づいて、肺がんに抗菌剤のクラリシッドを少量投与したり、胃がんにピロリ菌除菌療法を施したりしています。脳内ホルモンで話題になったメラトニンには、手術前に摂っていると大腸がんの再発率が下がるという報告があるので、がん治療に併行してメラトニン徐放錠を投与することもあります。
- またATK誘導療法をこれまでに10例ほど実施していますが、進行がんでは発熱や悪寒などの負担があるので適用の可能性を充分に検討する必要があります。
プロフィール
伊丹仁朗(いたみ じんろう) 1937年岡山県生まれ。64年岡山大学医学部卒。生きがい療法を開発し、87年にがん闘病者とモンブランに登山し、がん治療における生きがいの重要性を広めた。95年に「心の動きと免疫能」の研究で、米国医学博士。現在、柴田病院難治疾患研究部勤務、ルイ・パストゥール医学研究センター客員研究員。 |
|
(Medical Nutrition 23号より)
|