免疫療法の現状と可能性

近年、「がんの克服には免疫」という認識が一般に広まっている。すでに、がん患者の多くは医師による承諾の有無を問わずして健康食品をはじめとする免疫強化を目的とした代替療法を取り入れている。がんに対する第4の治療法といわれる「免疫療法」の現状を探る。


 LAK療法によって肝臓がん再発予防40%の効果

LAK療法、TIL療法、ATK誘導療法といった免疫療法が、新たながん治療法として期待されている。この治療法はもともと体に備わった免疫機能を補助して高めることで、がんに挑む治療法だ。しかし、免疫療法が浮上するほとんどの局面は、手術、抗がん剤、放射線などを施し、免疫機能が下がりきった免疫抑制状態であることが多く、患者が末期を迎えていることも少なくない。

免疫療法自体は80年代に米国で始まり、臨床応用に期待が高まったが、統計的なデータは未だに乏しい。また現在再評価されつつあるものの、免疫療法による十分な治療を行うには、大きな経済的負担が患者にのしかかることもあり、導入する医師(医療機関)も少ない。

しかし免疫療法に対する評価方法にも問題がある。免疫療法を主体にがん治療を行う後藤重則医師(瀬田クリニック院長)は、免疫療法が通常の診療として評価されない理由を「その臨床効果が十分に科学性を持っていないため」と前置きしたうえで、実質的に化学療法との比較となる通常の評価法では、がんの長期不変を含む効果の持続性が期待される免疫療法を正当に評価できないというのである。また化学療法の評価法では副作用などの治療毒性に対するマイナス評価が欠如しており、一般に治療毒性が少ない免疫療法の利点が評価されない点も大きい。

インターロイキン2でリンパ球を活性化するLAK療法に、漢方薬、健康食品を加味した統合医療として免疫療法を行う星野泰三医師(東京医科大学病院婦人科講師)は、「メラノーマや肉腫系、腎臓がんなど、がん抗原がはっきりしている場合は効きやすいが、単独で大きくなった腫瘍を撃破するのは困難。目的と効果を検討した上で行う必要がある」と強調する。「免疫療法はステージ1に近いほど抗腫瘍効果が期待でき、初期がんや再発予防に適している。しかし末期に近づくほど期待は低下し、コストもかかるので、免疫能向上によるQOL改善を目的とすべきだ」と語る。

2000年9月、関根暉彬医師(元国立がんセンター研究所室長・現リンフォテック代表取締役)の論文が英医学誌ランセットに掲載されて話題になった。論文によれば、LAK療法によって肝臓切除後のがん再発を40%予防することができ、LAK療法を行わなかった患者とは約20%の開きがあるという(表1参照)。LAK療法に不可欠なリンパ球大量培養法を開発した関根医師の論文は、免疫療法に関するエビデンスとして大きな意味を持つ。

 漢方、健食、イメージ療法など組み合わせで免疫活性

免疫療法を行うには、患者の免疫状態を把握することが欠かせない。臨床検査会社の研究検査などでは、インターフェロン産生を検査したりできるが、現在では免疫活性をより細かく測定し、免疫活性物質の適否を判断する検査システムまで登場している。またこうした検査システムのなかには、がん免疫ドックのように、がん発症前に予防策を立てるためのシステムも開発されている。

生きがい療法で知られる伊丹仁朗医師(柴田病院難治疾患研究部)は、がん治療を実施する前に免疫状態を把握し、免疫活性が低い場合は高めてから手術すべきだと主張する。これには手術前の免疫活性が高い人は低い人に比べ3年生存率が倍になるというデータに基づいた理由がある。おもむろに治療を進めるのではなく、検査値等を利用し、最適な治療法を選択することが効果へと導く。

とりわけがん治療には医師の豊富な選択肢が求められる。前述の星野医師の場合、漢方薬が大きな役割を担っている。卵巣がん、胃がん、大腸がんなど15名の患者に十全大補湯を併用したLAK療法で、免疫機能だけでなく、自律神経系やホルモン系、QOLは3人に2人が向上したと報告している(表2参照)。また「食道がんや胃がん、舌がんなどには抗菌作用のあるプロポリスが直接的な効果を現すことがある。抗がん剤でも最近は低分子のものが注目されている。低分子化合物を含むアガリクス・ブラゼイはある程度の量を摂ることで免疫を上げて体調をよくする」と健康食品の研究にも余念がない。

(Medical Nutrition 23号より)


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