統合医療・実践報告シリーズ

 第3回 がん治療における統合医療

 ゲートタワーIGTクリニック院長 堀 信一 

 手術・放射線・抗がん剤のガン3大療法の有用性と限界が見えてきた。ゲートタワーIGT クリニック院長の堀 信一氏は発想を切り替えてガンを見直す必要があると、IGT、すなわち血管内治療に取り組んでいる。3大療法から発祥した血管内治療からの統合医療へのアプローチを探ってみた。


 ITG、血管内治療によるガン治療のため、クリニックを開設。  

私は放射線治療とマイクロカテーテルを用いた血管造影を専門にやってきた。 私は勤務先で血管内治療をベースにしたガン治療を進めていこうと考えたが、 がん3大治療を旨としている大病院では、 設備投資費で何億もかかるし、 システムを変えて、 スタッフの意思統一をするなどの体系化は母体が大きければ大きいほど困難である。 したがって、 まずは自己責任で行なえる範囲ということで、自分でクリニックを開設しようと思い立った。 関西空港近くにあって、 西日本でいちばん背の高いゲートタワービルに 『ゲートタワーIGTクリニック』 を開設したのが平成14年11月のことだ。 IGTとは、 Image Guided Therapyの頭文字でCTや血管造影などの画像をガイド役にしてカテーテルという細い管を使って、 身体を切らずに病気を治療しようとする方法だ。 日本語で言うと 「血管内治療」 と呼ばれるが、 具体的には物理的に身体の一部分に照準をあて、 その部分の血流を止めたり、 抗がん剤を高濃度に注入したりする。 もともとIGTという名前は米国の友人と相談して決めた名前だが、 ありがたいことにアメリカでも最近では血管内治療のことを 「Image Guided Therapy for Cancer」 と言い出している。

 保険診療が認められている血管内治療。その普及を目指して。  

マイクロカテーテルや血管造影装置などの医療機器の進歩によって、 今はどんな血管の情報もつかまえることができる。 この15〜20年の技術革新によって手術・放射線・抗がん剤のガン3大治療の有用性と限界がだいぶ見えてきたように思う。

私はガン治療の正道だといわれているところから、 発想を切り替えてガンを見直していく必要性を感じている。 しかし、 こういった方法が医者の世界ですぐに認められるわけではない。 3大療法支持サイドから見れば傍流の徒として見られることもある。 IGTは現在の立場としては"がん3大療法から発祥したもの"ということで、 保険点数表内の血管塞栓術ということで保険診療が認められている。 患者の疾患分野をみると95%以上が肝臓ガン、 乳ガンといった固形ガンだ。 IGTはかたまりになってそこからたくさんの血流をひっぱってくる性質のガンに適している。 逆にリンパ節や白血球のガンなどの血管をほとんど作らないタイプのガンはこの治療に向かない。 問合せはインターネットからのものがほとんどで、 セカンドオピニオン的に利用される方が最近は増加傾向にある。


 快適さへの追求。患者の身体・精神的なケアを。  

入院前の患者に対し全ての検査を行い、 事前にディスカッションをして患者に対する総意をスタッフ内で固めることは重要だ。 また、 入院時には患者がQOLを落とし、 治療に響くことがないように気を使う必要がある。 また、 情報管理には電子カルテを用いて患者さんにも一部データ開示を行なうなどの工夫をしている。

「統合医療」 のコンセプトが重要になってくるのはこうしたところだろう。 患者との信頼関係を構築するための手順や方法、 快適さなど、 患者の身体・精神的なケアは統合医療がカバーすべき点だと思う。 日本医師会の発行雑誌で 「補完代替医療の現状と問題点」 という編集記事があり、 医療の中で代替医療をどう展開したらいいかといった取り組みは本格化する兆しが見える。

私たちの医療は医用画像を見ながら動脈塞栓術などの治療をするというものであり、 3大療法でうまくいかない人が来院する。 最近ではサリドマイド・セレブレックスやインターロイキン2などをやったが、 それでも腫瘍の拡大が止められないといった腎細胞ガンの患者さんに対して動脈塞栓術をしたところ3ヶ月で全身状態が改善されて今でも元気で生活されている。 これはほんの一例ではあるが、 通常のガン治療ではうまくいかなかった人から見れば、 新しい概念・治療技術ないところでないと期待できないし、 なかなか満足してもらえない。 そういう意味において血管内治療には大いに可能性があると思うし、 ここをセンター化させて広げていきたいとは思っている。 しかし、 現実的にはそう簡単にはいかない。 血管内治療を始めるには高額なCTや血管造影装置が複数台必要になってくるからだ。 開業医から見れば普及浸透していない診療技術にコストをかけるのは非常に勇気がいることだろう。

将来的には終末期医療を含めた入院施設の併設も必要だと思う。 こうした場合においても、 ことさら統合医療的なアイデアが必要になってくる。 つまり、 単なる治療の場にとどまらず、 身体と心の癒しを感じてもらえるような場にしていく配慮が必要になってくるということだ。


(Medical Nutrition 76号より)


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