統合医療・実践報告シリーズ

 統合医療・実践報告シリーズ 第2回
 女性疾患を癒す統合医療とは?
 「統合医療展」 講演録より

 富永 国比古氏 (ロマリンダクリニック院長)

 昔は見られなかった女性疾患が増えているという。環境ホルモンやストレス社会の影響が考えられる。また、女性は一人で悩んでいるケースが多く、カウンセリングという方法も有効だ。こうした女性疾患への統合医療からのアプローチを探ってみた。


 ホルモンバランスと女性の健康。  

最近、 ジェンダー・フリーという考え方が日本の社会に広まりつつあるが、 医学の世界では逆に性差に考慮した医療――性差医療 (Gender Specific Medicine) が注目されつつある。 女と男では生物学的にも異なっているので、 病気発症のメカニズムや治療法についても差異があるのが当然だ。 女性について言えば、 身体と精神の両面において、 ホルモンによってコントロールされているという点に特性がある。

昨今の女性疾患を見ていると、 昔は見られなかったものが増えている。 子宮内膜症、 子宮腺筋症、 月経前症候群、 排卵障害およびその背景にある多嚢胞性卵巣など昔はあまり見られなかった病気がここ15年で非常に増えている。 これは何を意味しているかというと、 環境的な因子が作用しているのではないか。 「環境ホルモン」 や 「ストレス社会」 の影響を疑わずにはいられない。

私が行なっている女性への統合医療的アプローチを紹介していくと、 治療の選択肢としては食事療法から始まって、 サプリメント、 漢方、 場合によっては抗うつ剤SSRIを中心とした精神療法などのオプションを用意している。

女性の3〜4割方が悩んでおり、 さらにその中の1割くらいの方が精神科レベルでの治療が必要だと思われる疾患に月経前症候群 (以下PMS) がある。 PMSにおいて月経前に悩まされる症状としては下腹部膨満感、 頭痛、 乳房の張り、 腰痛、 むくみ、 肌荒れ、 食欲亢進、 便秘、 下痢、 悪心、 動悸、 うつ、 不眠、 無気力、 イライラ、 怒り、 集中力低下、 絶望感、 孤独感、 被害妄想などである。 たとえば、 最近では夫に女性が優しい言葉をかけている光景を見ると、 つい夫の浮気を疑ってしまい、 それが妄想とわかっていても感情を抑えられない自分が辛いと訴える患者さんがいた。 さらに極端な例では、 PMS患者の0.1%くらいが衝動的に万引きをしてしまうと言われる。 このような場合、 日本では性格的・人格的な問題として片付けられてしまうだろうが、 イギリスでは、 PMS専門クリニックに行って医師からの診断書をもらえれば万引きをした人でも免罪されるという。 イギリスではそこまでPMS患者への理解が進んでいる。 日本も今後、 考慮していくべき問題であるだろう。

こうした、 うつや悪心、 イライラ、 絶望感などのメンタル的な症状ではハーブの存在はないがしろにできない。 セントジョンズワートなどのメンタルハーブは、 今後の成長が期待できる素材だ。 私の場合、 PMSにおけるうつ状態に対して、 ラフマ・エキス (常盤植物化学研究所) を用いているが、 抗うつ剤SSRIに匹敵する効果を得ている。

 統合医療でもっと考えたい、カウンセリングの導入。 

女性は一人で悩みを抱えている方が多く、 カウンセリングという手法をとることでその悩みを真摯に受け止めることができる。 カウンセリング的アプローチは, 統合医療においてもっと取り入れられていくべきものだと思う。 患者は医者の前に座ると、 萎縮してしまい自分が感じていることをなかなか話せない。 医者と患者で教える→教えられるという図式になってしまいがちだ。 「医者と患者は対等な立場である」という原点に立ち、医者はもう少し目線を下げ、 一緒に考えていくというスタンスをとる必要があると思う。

人は自分の前にある情報に対して、 省略したり、 歪曲したりして、 不正確に捉えてしまうことがある。 病気になると不安・うつ状態になりこの傾向がますます強くなる。 自分の健康状態を否定的・悲観的に捉えてしまい、 これが症状の治癒・改善を遅らせるケースが多い。 そこで必要になってくるのが 「認知療法」 だ。 認知療法とは、 病気に対する認知の歪みを修復する作業であり、 自身が物事を認識するときの傾向 (=心のくせ) を検証することで、 認知の歪みのパターンを知り、 それを修正し、 ものの見方を柔軟にしていく一連の作業だ。 これを行なうことで、 病気について否定的思考から脱却し、 病気に積極的に立ち向かう気持ちが強くなる。 多くの慢性疾患に対して、 標準的医療でなく、 こうした心理療法を取り入れるなどして患者には多様な治療法があることを知らせ、 納得いく治療を受けてもらうようにすることが重要であろう。


(Medical Nutrition 75号より)


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