統合医療・実践報告シリーズ

 クリニックの診療・運営のポイント 「統合医療展」 講演録より

 統合医療ビレッジ・グループ総院長 山本 竜隆

 統合医療の"統合"とは、 西洋医学と補完・代替医療の包括を意味する言葉であるが、 それは単純に現代西洋医学と代替医療を寄せ集めたものではなく、 相互の関係性を保ちながら、 患者をより多角的に見ていく医療である必要がある。


 統合医療の統一見識を。  

統合医療の実践していくためには、 その理念をスタッフ間で共有していなければ成功しくにいと思われる。 統合医療の"統合"とは、 西洋医学と補完・代替医療の包括を意味する言葉であるが、 それは単純に現代西洋医学と代替医療を寄せ集めたものではなく、 相互の関係性を保ちながら、 患者をより多角的に見ていく医療である必要がある。

種々の医療を取捨選択する立場にある医療機関から見れば、 代替医療と西洋医学を比較し、 優越を議論する段階から、 いかにこれらを組み合わせるかという時代に入っているといえる。 したがって、 それぞれの役割をもつスタッフがいかにディスカッションできるかということが重要になってくる。 アメリカの医療モールはこうした意識が不足していた。

私が参画している 「統合医療ビレッジ」 は、 保険診療クリニック、 自由診療クリニック、 薬局、 カフェの集合体であるが、 統合医療の理念がスタッフ全員に理解・共有・浸透されるまでに3年以上の期間を要している。

統合医療ビレッジの来院者分析を報告すると、 開設後約10ヶ月間で1700名が来院し、 女性の割合が70%以上で、 年齢層では30代の23%を筆頭に20代〜60代がほぼ同等に割合で分布していた。 受診形態は保険診療のみを希望する人は8%と意外に少なく、 保険診療と自由診療の併用を希望した患者が50%以上いた。 大学病院で半日もしくは1日休み、 3時間待って10分くらいの診療を受けるのを5日間繰り返すくらいなら、 30分から1時間予約してじっくりと相談に乗ってほしいと考える人が増えてきている印象だ。 また、 西洋医学的な検査では異常がないが、 つらいという患者もよく来訪する。 そうした患者には東洋医学の基本診察である脈診・舌診・腹診を行なう。 また、 大学病院では認められていない検査法、 足裏診断・ホメオパシー的な問診、 血液分析、 波動検査などを行なう。 たしかに一つ一つだと信頼性に乏しく、 従来の科学では認知されていない検査かもしれないが、 複数の結果が重複して示すものは信頼性が高いと考えていく。 実際にそこが治療の突破口になることも多い。 たとえば2年間、 外来で貧血症と診断されていた方が、 当院の検査で甲状腺機能亢進症だったことが判明した。 また、 ガン治療に成功したものの再発・転移への恐怖感にさいなまれている方々へのケアも看過できない。 彼らにとって半年に1回だけの検査は、 「次のガンが出てくるのをただ待っているだけではないか」 という不安を抱くに十分だといえる。 西洋医学では治療医学がベースとなっており、 予防に対しての医療システムはまだ確立していない。 予防への意識の高い人たちの受け皿があまりないというのが実状だ。 また、 医薬品に関して言えば、 高血圧だったら降圧剤、 糖尿だったら血糖降下剤というように、 薬剤と病症で1対1対応となる。 対して漢方では患者を面で捉えていくので、 病症と1対1対応ではなく、 証が合えばいろんな症状がいっぺんに改善するというケースがある。 たとえばメタボリックシンドロームでは複数の疾病因子が重なり合うために、 西洋医学で対処すると、 薬剤の数が増える、 コストや副作用のリスクが増える、 相互作用が不明、 などの欠点が出てくる。 こうして見ていくと、 再発防止や予防に対するニーズを捉え、 患者のもつ複数の疾病を横断的に捉えていくセラピーや商品が今後ますます重要となってくることがわかる。

 統合医療ビレッジの診療システム。  

統合医療ビレッジでは、 フロアを隔てて保険診療を行なうクリニック、 自由診療を行なうクリニックとがある。 保険担当医師が診療を行ない、 保険がきかない部分の医療が必要だと判断した場合、 別途にどんな医療を行なうか、 コストはどのくらいかかるかを提示して患者に納得してもらったうえで、 自由診療担当医師に依頼して診てもらうようにすすめる。 また、 逆に自由診療型クリニックに来訪した患者が保険診療で対応できる部分があれば保険診療クリニックで診療を受けるように勧める (図参照)。 保健所でもレントゲンを2つの医療機関でやっているのではなく、 1つ、 保険のきく医療機関で行なって、 それを他方のクリニックとデータ共有している点などを理解してもらっている。 混合診療が認められない今でも合法的に行なえている。 もちろん、 保険診療だけでやりたいという患者さんに自由診療の話をしても苦痛になるケースが多い。 患者の経済的背景も見ながら、 その人に合った治療法を提示していかなければならない。

 今後、注目される統合医療は。  

アリゾナ大学で統合医療のプログラムを開設した、 世界の統合医療の第一人者であるアンドリュー・ワイル氏は、 予防医学・健康増進への意識の高さに関して、 ドイツを見習うべきであるとしている。 たとえばドイツの自然療法では水療法というものがあり、 冷たい水 (鉱泉) をうまく利用する。 あたたかい水を交互に使い分けることで自律神経失調症や冷え性に効能があることがわかっている。 今、 スパの専門医は100人くらいしかいない。 日本はこれだけ温泉が豊富なのに、 それについて勉強している人が少ない。 レジャーでなくテーラーメイド医療への活用を今後、 追究していくべきだと思う。 私自身、 修善寺でスパの勉強をしたいと考えている一人だ。

また運動療法では、 家や施設の中でただ機械的に筋肉運動をするのではなく、 森林の山や坂を用いて患者に合わせたコース設定し、 楽しみながら療養に励んでもらう。 ほかにもハーブ・アロマ・太極拳・瞑想・座禅などとうまくコーディネートした新しい医療のスタイルを模索している。 また、 こうした自然と絡めた医療は都会でストレスに悩んでいる人たちのいい治す手段になるし、 受け入れられていくと思う。

大学病院では、 医薬品を使っていると、 5年後にはその薬が無効だと言われたり、 副作用が強すぎるなどの理由で中止されたりすることがよくある。 患者さんに 「この薬はいいから」 と勧めていたのに、 ある日とつぜんその薬はダメと言わなければならない。 健康食品やサプリメントに関しても5年後、 同じことが言えるのかといつも考える。 大学病院では循環器・消化器内科で活躍している先生が花形だが、 大学を離れて10年くらい経つと過去の人になっていることが多い。 これに対し、 東洋医学や自然療法では大家的な先生は年月を経てもなお大家であることが多い。 そういう意味で一度、 確立されると風化しにくい医療だと思う。


(Medical Nutrition 74号より)


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