教育とサポートがある統合医療

 食事・栄養・解毒・通常療法の統合/ゲルソン・インスティテュートの実例から
 <第11回> タンパク質の制限について

 ジャーナリスト 氏家京子

 ゲルソン療法の食事では、 3つの栄養成分に関して制限規則がある。 ひとつは 「ナトリウム制限」、 2つ目は 「脂肪」 だった。 今回は、 3つ目の 「タンパク質」 について述べる。


 動物性も植物性も、 ともに制限。  

一般的に、 がんなどの生活習慣病にかかった患者に対して、 医師や栄養士が指導する食事では、 肉を控え、 代わりに魚をよく食べるように、 などと言われる。 加えて最近では、 コレステロールが無い高タンパク食品ということで、 大豆食品が人気だ。

しかし、 ゲルソン療法の場合は、 肉、 魚と同時に、 乳製品 (※例外有り)、 卵、 そして大豆食品も、 基本的に食べることが無い。 こうした高タンパク食品の制限は、 とくに治療開始初期に厳密に行うことになっている。 治療開始初期とは、 ゲルソン療法を開始後、 約6週間〜12週間後まで、 をいう。

この治療開始初期に、 タンパク質が豊富に含まれる食材を口にしないことのねらいは、 患者の免疫反応を向上させるため、 と説明されている (『決定版ゲルソンがん食事療法』、 徳間書店刊、 p.30)。

マックス・ゲルソン医師が、 がん患者の食事療法で、 高タンパク食品の制限を導入したのは、 彼自身が1930年代にミュンヘンで行なった実験に端を発している。 患者の食事中から、 タンパク質の豊富な食材を除いたところ、 患者の細胞水腫が吸収され (水腫が改善され)、 全身の細胞機能が向上し、 健康状態が全体的に改善することがわかったからだった。

ただし、 だからといってゲルソン療法ではタンパク質をまったく摂取しないかというと、 そうではない。 実際は、 野菜に含まれているタンパク質を毎日豊富に摂取しており、 たとえば1日13杯飲む搾りたてのジュースや、 野菜だけで作られた特製スープなどから、 健全な生命活動を維持するのに十分なだけのタンパク質を、 消化・吸収しやすいかたちで常時摂取している。 ただ、 それ以上には、 とくにタンパク質を多く含む食品を摂らない、 という制限のしかたなのである。

そのうえ、 このタンパク質の制限は、 期間が限定されている。 この制限期間は、 とくに成長期の子どもや、 高齢者の場合には、 より短く設定される。

理由は、 タンパク質の摂取量制限により、 窒素バランスが崩れることを防ぐためである。 窒素バランスが崩れると、 患者の筋肉は急速に衰え始める。 これでは、 患者は、 がんの治療以前に、 健全な生命活動を営むことができない。 したがって、 筋力の衰えが生じないように、 初期の制限期間が過ぎると、 患者は食事に無脂肪・無糖・無塩のオーガニックヨーグルト (製品としては販売されていないため、 安全な無脂肪牛乳から自家製でヨーグルトを作る) や、 ミツバチ花粉食品 (ビーポレン) を導入し、 安全なかたちでタンパク質やアミノ酸の補給をする。


 大豆食品を食べない理由。  

しかし、 この治療開始初期が過ぎても、 ゲルソン療法を行なう患者が、 大豆食品を食べることは無く、 この点が日本人患者の疑問を大きく膨らませている。 日本人患者のなかには、 「ゲルソン療法の食事は欧米の食文化を基本にして考案されたので、 彼らには大豆の良さがわからないのだろう」 と解釈する方が多い。 しかし、 今や大豆食品は、 日本やアジアだけの健康食品ではなく、 どちらかというと先にアメリカやカナダで健康食品としてのブームが起こった。 したがって、 欧米の人たちにとって、 もはや大豆はポピュラーな食品であり、 それでもなお、 ゲルソン療法では、 敢えて大豆を食べない。

ゲルソン療法で大豆を除去する大きな理由3つを、 以下に挙げる。 (1)大豆に含まれる脂肪酸の問題、 (2)穀物・種子類・木の実などと同様に消化が困難な点、 (3)大豆など完熟豆類に多く含まれている酵素抑制成分 (エンザイム・インヒビター) の問題。 この他にも大豆食品には細かい問題点が多く存在しており、 現在の大豆ブームを疑わない消費者にとっては驚きかもしれないが、 詳細が知りたい方には、 アメリカの臨床栄養学者カイラ・ダニエル女史 (Kaayla T.Daniel,PhD.) の著書、 『The Whole Soy Story』 が参考になるだろう。

まず、 (1)の脂肪酸の問題だが、 この連載中で述べたように、 ゲルソン療法では亜麻仁油などに多く含まれる 「α-リノレン酸 (オメガ-3系)」 以外の脂肪酸を制限することになっている。 それ以外の脂肪酸が患者の食事中に多いと、 腫瘍の成長を促す恐れがあるからだ。 大豆は大豆油があるように、 非常に脂肪分が多い食材である。 そして、 その脂肪中に多く含まれる脂肪酸は、 「リノール酸 (オメガ-6系)」。 この種の脂肪酸の摂取量が多いと、 善玉コレステロール値を下げる、 「α-リノレン酸」 の効果を抑制する、 ことなどがわかっている。

(2)の消化の問題については、 すべての穀物、 豆類、 木の実、 種子類に共通する問題である。 がん患者は、 胃酸の分泌量が少なくなっているなど、 もともと消化力が非常に低下していると考えなければならない。 そこに、 消化の悪い玄米ご飯などを常食させると、 すぐに消化障害を起こし、 栄養失調で患者はエネルギーを失い、 痩せてゆく、 ということが起こる。 したがって、 ゲルソン療法では玄米を常食するということもしないし、 大豆食品も同様に食べることが無い。

(3)酵素抑制成分とは、 大豆などの完熟豆が、 種として子孫を残す能力を持ったときに増える成分のひとつである。 種は発芽する際に、 発芽に関係する酵素の働きが必要である。 しかし、 この酵素の働きを抑える成分も同時に持っていて、 それにより、 水・光・栄養などの環境が揃わない限り、 無駄な発芽をしないようにコントロールするのである。

一方、 ゲルソン療法では、 さまざまな種類の酵素の働きを利用して患者の代謝を改善させてゆき、 がんの治療を進めてゆく。 したがって、 酵素の働きを抑えるような抑制成分は摂りたくない。 したがって、 大豆などの完熟豆は食べることが無い。 ただし、 さやいんげんなど、 未成熟の豆は抑制成分が少ないため、 ゲルソン療法でも野菜として食べる。


(Medical Nutrition 84号より)


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