教育とサポートがある統合医療

 <第9回> コーヒー浣腸のバリエーション
 食事・栄養・解毒・通常療法の統合/ゲルソン・インスティテュートの実例から

 ジャーナリスト 氏家京子

 前回は、 ゲルソン療法に組み込まれている解毒療法のひとつ、 「コーヒー浣腸」 について、 その基本的な解説を行なった。 今回は、 前回少ししか触れなかった、 ひまし油の浣腸について、 それから、 カモミール茶を使う浣腸についても触れてみたい。



 3つの浣腸を患者によって使い分け。  

ゲルソン療法では、 3種類の浣腸を患者によってうまく使い分けてゆく。 その一つが、 前回解説したコーヒー浣腸で、 これが最も使用頻度の多いものである。 もうひとつは、 カモミール茶を使うもの。 それから、 コーヒーにひまし油を入れて使う、 いわゆる、 ひまし油浣腸とがある。 これらの違いは、 その解毒力の強さにある。 解毒力が強い方から順にならべると、 ひまし油、 コーヒー、 カモミール茶、 となる。

ゲルソン療法で解毒療法を重視しているのは、 がん患者の代謝レベルを可能な限り高めていくためで、 それを邪魔している不要なもの (発がん性物質を含めた毒物) を細胞外へ、 そして体外へと、 どんどん排泄させていくために行なう。

解毒により代謝が改善され、 代謝レベルが高まれば、 免疫システムが正常に働くようになる。 そこへ不足していた栄養を補っていくことで、 身体の修復が進むのを期待するわけである。

ならば、 もっとも解毒力の強い、 ひまし油浣腸の使用頻度を多くすれば、 解毒スピードがアップし、 患者が治るのも速まるのではないか、 と想像される方がいるかもしれない。 しかし、 そこが解毒療法の難しいところで、 危険なところでもある。


 難問題への直面、失敗の歴史。  

ゲルソン療法をつくり上げた、 マックス・ゲルソン医師 (1881−1959) は、 ヨーロッパから米国ニューヨークへ移住し、 パーク・アヴェニューで開業した1938年以降、 治療方法のさらなる改善につとめ、 がんを含めた変性疾患の患者たちを数多く救っていった。 その経験から記された書籍が、 『マックス・ゲルソン ガン食事療法全書』 (今村光一訳、 徳間書店) で、 そこには彼が救った末期ガン患者50人の記録が掲載されている。

ところが、 この書籍が出版された1958年頃から、 徐々に、 ゲルソン療法によるがん治療は困難になっていった。 それまで、 末期がんの患者でさえ、 約50%の確立で治癒させていった驚異の療法が、 ある問題に直面してからは、 なかなか上手くいかなくなったのである。

その問題とは、 抗がん剤である。 ゲルソン医師の書籍が出版された頃、 世界のがん医療の現場では、 抗がん剤治療が一般的ながん治療のひとつとして導入されるようになってきた時代だった。 それまでは、 がん治療といえば、 手術と放射線だけが選択肢だったのである。

つまり、 ゲルソン医師が書籍で報告した50例の治った患者たちのほとんどは、 抗がん剤をまだ使用していない患者ばかりだった。


 解毒が要のゲルソン療法、強い毒性を持つ抗がん剤。  

がんの治療方法に抗がん剤が加わることは、 ゲルソン療法をそれまでと同様に行なうことを難しくさせた。 なぜなら、 解毒が大きな要となっているゲルソン療法にとって、 抗がん剤治療を経験した患者が体内に蓄積させた毒物の量は、 あまりにも多過ぎたからである。
毒物の蓄積量が多いということは、 解毒に時間がかかる、 というだけの問題では済まない。

その他の、 細胞の死を目的としていない、 たとえば現代の生活環境で少しずつ体内に蓄積されてきた毒性物質とは違い、 抗がん剤に含まれる細胞毒は、がん細胞を死滅させるために意図的に投与される毒性物質である。 微量で即効性があることが求められるわけで、 その強い毒性のために、 患者は投与中にしばしば副作用に悩まされる。


 抗がん剤投与患者に見られるフレア・アップとは。  

抗がん剤が投与されたときに生じる副作用は、 そこに含まれる毒性物質が患者の血液中に入るため発生する。 私達の血液では、 細菌などの異物が入り込むと、 それを排除しようとするシステムが働くことになっているわけだから、 抗がん剤の細胞毒が入れば、 当然、 その反応が起こるわけである。 吐き気、 下痢、 食欲減退などは、 血液が異物と戦っている証である。

ゲルソン療法で、 そして他の解毒療法であっても、 こうした抗がん剤などの強力な毒性物質を患者の体から排泄させてゆこうとするとき、 程度は様々だが、 患者は必ず不快症状に悩まされる。 これが、 フレア・アップと呼ばれるものである。

フレア・アップの症状は、 たとえば、 抗がん剤治療によって生じる副作用に、 よく似ている。 なぜなら、 患者の細胞中に蓄積していた毒性物質を細胞外へ出した時、 その毒物は一時的に血液中に放出されるからだ。 そして、 血液を介して、 腎臓、 肝臓、 皮膚などへ行き、 そこから体外へと排泄されてゆくのである。

つまり、 解毒を行なうとき、 出される毒素は、 抗がん剤治療を投与するのと逆の経路を辿るということである。


 解毒スピードをゆるめて、フレア・アップを抑制。  

したがって、 解毒力がもっとも強力だからといって、 抗がん剤治療を終えたばかりの患者が、 たとえば、 ひまし油を使った浣腸を行なえば、 血液中にあまりにも多くの毒性物質が一気に流れ込むことになる。 これによって発生するフレア・アップに、 患者は耐えられない。 フレア・アップが単なる不快感で終わらず、 場合によっては、 ショック症状を示すケースもある。 それで、 ゲルソン医師は、 抗がん剤ががん治療の歴史に登場し始めた時代、 いくつかの失敗を経験したのである。

この失敗から、 抗がん剤治療を経験した患者には、 少なくとも最初の半年間はひまし油を浣腸に使わないこと、 コーヒー浣腸を始める際にも十分に気をつけ、 必要ならカモミール茶でコーヒーを薄めて行ない、 場合よってはカモミール茶だけで浣腸を行う、 というような工夫を加えるようになった。

これにより、 患者の体の解毒スピードをゆるやかにし、 耐えられないほどのフレア・アップを発生させないようにしたのである。

こうした療法の改善により、 抗がん剤治療を経験した患者でも、 ゲルソン療法で効果的に治療することが可能になった。 それを解説したのが、 『【決定版】ゲルソンがん食事療法』 (徳間書店) である。

(Medical Nutrition 82号より)


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