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<第7回> 続・ゲルソン療法と組織損傷症候群(TDS)
食事・栄養・解毒・通常療法の統合/ゲルソン・インスティテュートの実例から。
ジャーナリスト 氏家京子
前回は、 ゲルソン療法の特徴のひとつである徹底したナトリウム (塩) 制限について、 組織損傷症候群との関係から解説を始めた。 今回も、 そのつづきである。
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細胞浮腫による体力低下。 |
「細胞レベルで浮腫が進むと、 患者は体力の低下を実感するようになる」。 今回は、 その大きな理由をわかりやすく解説するところから始めてみたい。
まずは、 ひとつ一つの細胞内にあるミトコンドリアで、 生命エネルギーであるATPを正常に作ることができなくなるからだ。
各細胞内にあるミトコンドリアで作られる生命エネルギー・ATPは、 私達が食べている食事から得たグルコース (ブドウ糖) を原料にして作られ、 たとえて言うなら、 車に必要なガソリンのようなものである。 したがって、 私達が生命活動を行ない、 それを持続させていくためには欠かせないものである。 電池やバッテリーと考えてもよい。 これが、 細胞浮腫になると正常に補充されなくなるわけだから、 まるで電池が切れるように、 患者が体力の低下を実感するようになるのは当然と考えられる。
このように、 生命エネルギーが作られなくなるのと同時に進行するものには、 タンパク質生合成の悪化と、 脂質代謝の悪化が挙げられる。
たとえば、 高タンパク質の食事を行なえば、 それを代謝させるためにも多くのエネルギーが使われることになるが、 細胞浮腫が進行していればエネルギー不足がすでに存在し、 それも適わないことになる。 したがって、 細胞浮腫が起こっている限り、 高たんぱく質の食事は、 エネルギーを消耗させる悪循環を一層推し進める要因となってしまう。
また、 高タンパク質食を行なえば、 当然の結果として、 より多くのアミノ酸が細胞内に流れ込むことになるが、 このときに一緒にナトリウムも入ってくる。 とくに、 動物性の高タンパク質食品を食べれば、 より多くのナトリウムを摂取することになり、 細胞浮腫の促進、 エネルギー不足の促進、 さらにはタンパク質の生合成悪化を招く。
そのようなことがあるため、 ゲルソン療法ではナトリウム制限とともに、 初期に限定し厳格なタンパク質制限も行なう。
1957年という早い時期に、 米国ナショナル・キャンサー・インスティテュート (NCI) の助成金で研究を行なっていたクリスティン・ウォーターハウス (Christine Waterhouse) とアルバート・クレイグ (Albert Craig) は、 がん患者たちの水貯留を測定している。 それは、 全身の組織で起こっている水腫だった。 視覚的に、 臨床で認識できるものではないが、 測定可能なものだったと述べられている (Body-composition and changes in patients with advanced cancer, the American Cancer Society's journal, Cancer 11(6), November- December, 1957)。
クレイグらは、 次のように述べている。 「どのような腫瘍の周りでも、 どのような炎症が起こっている関節の周りでも、 また多くの慢性ウイルス性疾患が起こっている場所において、 カリウムを失った組織はナトリウムを取り込み、 過剰な水によって腫れている」。
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東洋医学でいわれる 「水毒」。 |
日本では、 東洋医学の知識がある医師に、 ゲルソン療法に関心を持ったがん患者が意見を求める、 というシチュエーションがよくある。
中医学などに 「水毒」 という概念があるため、 多くの場合、 患者は"生野菜や果物のジュースをたくさん飲むゲルソン療法では、 水が多すぎて体を冷やします。 冷えは、 がんには良くない"と言われて帰ってくる。
「水毒」 は、 まさに 「細胞浮腫」 や 「組織損傷症候群」 のような状況を指していると考えられる。 つまり、 動かない水が体の局部や全体に溜まり、 同時に血流が悪くなり、 エネルギーが低下し、 冷えが生じる、 というものであろう。
たしかに、 ナトリウム制限などの食事管理を行なわずに、 ジュース療法だけを始めれば、 より一層 「水毒」 を悪化させることになろう。 なぜなら、 ナトリウムと同時に水分を補給すれば、 細胞はナトリウムの濃度を薄めるためにどんどん水を取り込まざるを得ないからだ。
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水毒改善にジュース療法。 |
だから、 ゲルソン療法では、 「水毒」 のような状況を改善させるために、 ナトリウム制限やタンパク質の一時的な摂取制限を行いつつ、 ジュース療法を行なう。 その結果、 患者は、 組織内に溜めていた水分とナトリウムを主に尿として排泄し始めるため、 ゲルソン療法開始初期には頻繁に小便へ通い、 尿中のナトリウム濃度も通常より高いものになる (だから、 飲尿療法も行なわない)。
東洋医学的な考え方の食事として、 またゲルソン療法の対極にある食事療法としてよく話題にされるのが、 マクロビオティックだ。 マクロビオティックの流れを汲む流派はいろいろだが、 全体として自然塩の使用を好む傾向にある。 マクロビオティックでは、 ゲルソン療法のように生野菜やジュースは取り入れない。 これは、 自然塩を摂取しながら、 生野菜やジュースも同時に摂取すれば 「水毒」 が進行するからで、 理論的にも納得がゆく。
ゲルソン療法を自己流で行なう患者には、 食事だけは玄米菜食やマクロビオティックにし、 それ以外のジュース療法や浣腸をゲルソン療法の規定どおりに実行する人もいる。 この場合、 細胞浮腫の改善が達成できないことが考えられる。
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お知らせ(1):本年、 国際オーソモレキュラー医学協会 (http://www.orthomed.org/)において、 故マックス・ゲルソン医師の医学への功績が評価され、 その殿堂入りを果たした。 同組織は過去に7名の偉人を評価しており、 ライナス・ポーリングも含まれる。 ゲルソン医師の偉業は、 昨年は英国のチャールズ皇太子が公式発言の中で述べたことで話題になった。
お知らせ(2):米国ゲルソン・インスティテュートは、 「ゲルソン/GERSON」 および 「ゲルソン療法/GERSON THERAPY」 を日本でも商標(r)として登録しており、 これを商品・施設・媒体などの名称に使用することを認めていない。 類似商法には慎重に御検討をしていただきたい。
(Medical Nutrition 79号より)
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