教育とサポートがある統合医療

 <第4回> ゲルソン療法ができないケース
 食事・栄養・解毒・通常療法の統合/ゲルソン・インスティテュートの実例から。

 ジャーナリスト 氏家京子

 これまでの連載では、 統合医療としてのゲルソン療法、 その統合形態、 そして教育・サポート体制の存在について紹介してきた。 今回からは、 筆者が実際に体験取材した教育内容や、 その後ゲルソン・インスティテュートから受けているサポートについてレポートしていきたい。


 「私のがんに、 効きますか?」   

さまざまながんの治療法を紹介する講演会に出かけてみると、 質疑応答の時間に、 「私は○がんの●ステージで、 △と▲の治療をしています。 私のがんに、 この治療法は効きますか?」 という質問が会場からは必ず出てくる。

どんなに経験豊富で腕の良い医師でも、 そのような少ない情報から初めて会った患者さんの容態について把握することはできない。 従って、 その治療法で効果があるかも判断できない。 しかし、 患者さんは、 患者がどんな容態なのかを医療従事者はすぐに把握でき、 その後にどうすれば良いのかもわかるだろうと誤解している場合が非常に多いようだ。

したがって、 どのような治療法でも、 それが患者に施せるかどうかを判断するのには、 どの程度の情報が治療者側に必要か、 そして、 その情報から治療者は何をどのように判断するのかを患者さんに知ってもらう必要があるだろう。

ゲルソン療法の場合も同じことが言える。 すべての患者さん、 すべてのがん患者さんがゲルソン療法を行なえるわけではない。 たとえ自宅で自己治療を行なう場合でも、 実行するには、 家庭環境、 経済的な問題、 手伝ってくれる人の存在など、 さまざまな前提条件が整っていなければならない。

また、 それを確認するために、 たとえばゲルソン療法の認定クリニックに入院を申し込む際など、 患者さんは以下のような情報をクリニック側に伝え、 非常に細かい質問表にも答えなければならないことになっている。
(1)過去の病歴と治療内容 (抗がん剤、 摂取薬剤なども含む)
(2)3週間以内のCBCと血球別検査結果
(3)3週間以内の代謝パネル血液検査結果
(4)腫瘍マーカー検査の結果
(5)病理検査結果 (生検)
(6)CT、 MRI、 X線などの検査結果 (フィルムではなく、 結果報告書)
(7)手術報告書と退院時の報告書
(8)質問表への回答
(9)写真付ID (パスポート、 運転免許証)

(7)の質問表は非常に多くの細かな質問から構成されており、 含まれる質問には、 例えば次のようなものがある。

透析治療の有無/腹水の有無とその処置回数や頻度/抗がん剤治療の有無/放射線治療の有無/過去5年以内の手術の有無/がん以外に持っている疾患や症状/ゲルソン療法以外に行なっている治療法/痛みの有無と痛み除去に使用している薬/何らかの移植の有無 (美容整形や歯科治療も含む)、 その他。

こうした質問に迅速に答えられる人は、 稀だろう。 しかし、 できれば健康な時から、 何かあったときのために、 医師に渡すこうした情報を患者側が作り慣れておくのは、 大病をしたときの治療を成功へと導く大事なポイントかもしれない。
(※一例だが、 日野原重明氏が理事長を務めるライフ・プランニング・センター主催の、 患者のための病歴の書き方講座などは非常に参考になると思う。)


 ゲルソン療法の禁忌  

ゲルソン療法による治療を希望する患者側から、 治療者側に患者情報が渡り、 その内容を検討した結果、 クリニックでの治療はできないと判断されるケースがいくつかある。 ひとつひとつのケースにより条件は多様なので、 ここでは比較的判断が簡単、 且つ明瞭な場合を記す。

【消化器系の問題】飲食と排泄が不可能/胃瘻造設術後/回腸造瘻術後/重篤な肝機能障害/重篤な肝腫脹/急性出血【循環器系・呼吸器系の問題】呼吸機能不全/タンポナーデを伴う心内膜液浸出/人工心臓弁/鬱血性心不全【血液学的問題】急性白血病/骨髄移植後/リンパ球減少症 (8%以下)【神経系の問題】パーキンソン病/脳への転移【腎臓系の問題】腎不全/透析中【そのほか】閉塞がある/寝たきり/衰弱が激しい/化学療法を行なっている最中、 など。

がんのなかでも、 患者が急性白血病の場合は、 病気の進行スピードが非常に速いため、 ゲルソン療法の効果が進むスピードとの駆け引きになり、 良い結果を導けない可能性が高い。 従って、 原則的に患者さんの治療は引き受けないことになっている。 また、 がんの再発時にゲルソン療法による治療を希望する場合、 2回目の再発までは受け入れるが、 3回目以降の再発に対しては、 その治療効果を約束することができなく、 治療期に困難な状況が生じることも多いため、 やはり患者の入院を原則的に受け入れていない。

各種移植術や臓器摘出術を経験しており、 免疫抑制剤を生涯止められない場合にもゲルソン療法を行なうことはできない。 これは、 ゲルソン療法が患者の免疫系の働きを活発にさせるため、 目的が相反し、 現在の治療と並行して行なうことが不可能だからである。

美容整形などで、 たとえば鼻を高くするために患者がインプラントなどを埋め込んでいるような場合も、 ゲルソン療法は行なえない。 なぜなら、 インプラントを無視してゲルソン療法を行なえば、 患者の体がインプラントを異物として確実に認識するようになり、 それを体外へ排除するための反応を始めるからである。 結果的に、 患者はインプラントを摘出するための手術を別に行なわなければならない。 実際、 ほとんど同じようなことが過去にゲルソン療法の認定クリニックであった。 患者が、 事前に医師にそのことを知らせていなかったためである。 (※ 『マックス・ゲルソン ガン食事療法全書』 徳間書店刊の411ページにある症例23の患者も類似ケースといえる。)

人工肛門などを付けている患者の場合、 その部位や形状、 長さによっては、 ゲルソン療法を行なえる場合もある。 判断のポイントは、 患者が人工肛門を装着しながら浣腸を行えるかどうかだ。 コーヒーやカモミール茶を使用する浣腸は、 ゲルソン療法では欠かすことができないからである。

(Medical Nutrition 76号より)


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