教育とサポートがある統合医療

 <第2回>ゲルソン療法の統合形態
 食事・栄養・解毒・通常療法の統合/
 ゲルソン・インスティテュートの実例から

 ジャーナリスト 氏家京子

 今回は、 「がんの治療体系」 としてのゲルソン療法について、 その全体像をご紹介しておきたい。 というのも、 医事ジャーナリストの今村光一氏が、 マックス・ゲルソンの著作 『ガン食事療法全書』 (徳間書店) (※1) を日本語で翻訳出版してから15年余りが経つ今でも、 ゲルソン療法の正確な全体像がなかなか日本人には伝わっておらず、 何か別の治療方法を補完する療法として受け止められていることが多いからだ。 特に、 「ジュース療法」、 「塩を入れない食事療法」、 「コーヒー浣腸」 などの一部が単独で一人歩きしていることがよくある。 しかし、 それだけではがんの治療法と呼ぶには程遠い。 ゲルソン療法は、 がんを治すためのメインの治療方法として不足が無いように、 全体構成が考えられているのである。


 栄養療法と解毒療法は補完し合う。   

どのようなパーツが、 ゲルソン療法の全体をかたち作っているのか、 基本的な構成と、 その目的を簡単な表にまとめた。

ゲルソン療法の原型を作り上げたマックス・ゲルソン医師は、 その臨床経験から、 がん発生の大きな原因が現代的な栄養失調と、 さまざまな要因からなる毒の蓄積であると考えたため、 各治療手段に求められている大きな目的は、 吸収の良い栄養補給と確実な解毒になっているのが特徴的である。

さて、 この表に書き出したものは省略されるものは一つも無い。 どれも、 がんのためのゲルソン療法の一環として外すことができないものばかりである。 かえって全体が不確かで危険な治療になる可能性さえあるからだ。

このほか、 必要な患者に対して、 いわゆる通常療法を加えることがある。 具体的には、 一刻をあらそうケースの場合、 手術による腫瘍摘出や放射線治療を行なった後に、 正規のゲルソン療法を行なってゆくことになる。 しかし、 どのような患者にも、 第一に腫瘍の摘出手術をすすめたり、 どのような場合でも、 抗がん剤治療を選択することは無い。 なぜなら、 解毒を治療の大きな目的とするゲルソン療法に逆行するからだ。

抗がん剤治療を経験している患者は、 無経験の患者に比べると、 ゲルソン療法を行う過程でより多くの困難に立ち向かうことになる。 実際、 1958年に米国で 『ガン食事療法全書』 を出版して以降、 ゲルソン医師のクリニックを訪れる患者には、 徐々に抗がん剤治療の経験者が増えていった。 そのため、 ゲルソン医師はゲルソン療法の全体構成を見直す必要に迫られている。 そして、 抗がん剤治療を経験した患者に対するゲルソン療法については、 娘シャルロッテが著した 『【決定版】ゲルソンがん食事療法』 (徳間書店) で公開されることとなった。


  不正確さが危険性を高める。 

ここで、 がんに対してゲルソン療法を行う際、 一部を省略すると危険性が高まるわかりやすい例をひとつ挙げておく。

たとえば、 ゲルソン療法では、 1日13杯 (基本は1杯約180cc) に分けて、 搾りたてのジュースを飲む。 これは、 実際には、 「新鮮な植物に含まれるビタミン類や酵素類などを、 その栄養成分をなるべく損なわない低速回転ギアのジューサーで搾り出し、 消化の良いかたちで起きている間じゅう少しずつ摂取し、 治療に必要な栄養成分を体内に供給し続け、 絶やさない」 ようにすることが目的である。 したがって、 半日分をまとめて飲んでは意味が無いし、 缶ジュースなどでも目的を果たさない。 これで、 初めて治療の一部分としての意味をなす。

新鮮なジュースを飲むことは、 第一の目的が栄養補給である。 しかし、 別な目的も同時に持っている。 適切な栄養補給を行なった結果に生じる、 解毒効果も同時に期待しているからだ

ゲルソン療法のこれまでの歴史的経験から、 新鮮なオーガニックのしぼりたてニンジンジュースには強力な解毒効果があることがわかっている。 あまりに強力なため、 患者によっては、 解毒過程で患者に生じる症状 (フレアアップ、 治癒反応。 悪心、 発熱、 痛みなどさまざまだが、 がんの進行や再発とは明らかに区別される) に耐え切れないことさえある。

このフレアアップは、 治療開始初期がもっとも強く現れる。 さまざまな毒素 (過去に使用した抗がん剤も含む) は、 患者の細胞、 組織、 器官から血液やリンパ液を通じて体外へ排出されていく。 この過程で、 フレアアップが起こるのだ。

最終的な解毒は、 患者の肝臓、 腎臓、 皮膚などの解毒器官が受け持つことになるが、 それが三つの器官には逆に大きな負担になる。 とくに、 がん患者の解毒器官はすでに機能が低下していることが多いため、 解毒器官の負担を取り除くためのあらたな解毒療法が必要になってくる。

そこで、 ゲルソン療法ではコーヒー浣腸などを行う。 コーヒー浣腸は、 腸洗浄よりも、 肝臓の解毒を促すことが大きな目的である (詳細は後に解説する)。 コーヒー浣腸を行わずにジュース療法を行えば、 リンパ液内に毒素が停滞し、 患者の皮膚は黄色身を帯びるようになる。 これは、 ニンジンを大量に飲んだために、 その色素が皮膚を黄色く染めるのではない。 毒素の停留が理由である。 また、 肝臓に負担がかかり、 解毒能力が低下し、 ジュース療法を行ったために、 かえって肝機能の数値が悪化するケースもある。

このように、 ゲルソン療法では、 その全体構成の意味を理解せずに一部だけを行うと、 かえって危険になる可能性もはらんでいる。 したがって、 こうした統合医療を行なう際には、 教育やサポートの存在が重要になってくるのである。

※1  『がん食事療法全書』 の英語原書の方は現在第6版で、 重要な情報が新しく加筆されている。 一方、 日本語版の内容は初版のまま。 関心のある方には、 原書も読んでいただきたい。

※2 今年4月から 「日本人の食事摂取基準」 (栄養所要量) が新しくなった。 これは昨年10月に厚生労働省が発表したもので、 摂取量を増やすべき栄養素として 「n−3系脂肪酸」 も挙げられた。 筆者の最新刊 『食用油は危険がいっぱい!』 (中央アート出版社) でもわかりやすく解説している。 2005年5月発売。


プロフィール
 氏家京子(うじいえ・きょうこ)
ジャーナリスト。 国内外の栄養療法や自然療法を取材し、 執筆・講演・翻訳・消費者教育を行っている。 訳書に 『【決定版】ゲルソンがん食事療法』 (徳間書店) がある。 南房総の自宅で、 ゲルソン療法の学習会を開催。 日本人初の米国ゲルソン・インスティテュート認定ケアギバー。 JFJ会員。 藤女子大学文学部・英文科卒。

(Medical Nutrition 74号より)


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