統合医療カンファレンス

 第1回「なぜ今統合医療なのか」
 医学の常識を変える主流に。
 東西融合医療(中西医結合医学)。

 統合医療ビレッジ理事長 星野泰三

 治療効果、 医療資源の有効配分、 患者の満足度─。 様々な観点から、 西洋医学と補完代替医療を融合させる 「統合医療」 の必要性が叫ばれている。 連載では、 統合医療のアプローチ法や医学教育の課題、 医療職種の連携のあり方、 さらには医療経済の問題にも触れながら、 統合医療のあるべき姿を探っていく。


 統合医療ビレッジ構想の背景。 

昨年7月に満足の得られる医療を作ろうと有志70名が集まり東京都千代田区に統合医療ビレッジという新医療組織を立ち上げました。 この構想は約4年にわたる毎月の発起人集会の会合の結果生まれました。 昨今はゲノム医療とかIT医療とか医学の世界にも新しい波が押し寄せてきております。 ここ数百年のあいだ西洋医学と東洋医学の二系統が二大巨頭でありました。 今後10年のあいだに統合医療が大風呂敷を広げるわけではありませんが、 医学常識を変えて主流になることはまちがいないと思います。


  統合医療とは何か? 

統合医療に共鳴参加される方々もどちらかというと自然療法家、 代替療法家がほとんどでございます。 本当の統合医療には信頼できる医療体系として西洋医学的基盤が必要です。 通常の西洋医学にかわるものとして東洋医学などの伝統医学あるいは自然療法などの代替医療です。 しかし、 代替医療の世界にも怪しげなところがあり、 医療とはいえない部分が多く占めています。 そこで西洋医学と東洋医学の利点を加算していかしたものが東西融合医療とか、 中西医結合医学というものでしょうか。 さらに進化して旧来の医学体系を一度解体して再構築したものが統合医療とよばれる耳慣れない新医療体系なのです。 そしてまさにこの統合医療という新しい概念、 従来では想像もできなかったものですが、 10年先には必ずや根付くはずです。 今は時期尚早という批判もあります。 しかし、 どこかでだれかがはじめないかぎり世の中は動きません。 今回踏み切れた原動力となったのは、 しっかりしたメンバーが70名も集まり統合医療という同じ方向性を共有していたという点であります。 世紀の事業と自負しているだけにもし参集する人数が少なければそれだけ勇気もくじけていたかもしれません。 統合医療は一人でできるものでなく、 西洋医学、 東洋医学、 各々代替医療のスペシャリスト、 看護師、 薬剤師などが集合してなしえるのもの、 そのような統合医療という新医療体制をまとめるコンシェルジュのはたらきをするのが統合医療医であると意気統合したのが今回の統合医療ビレッジ構想のなれそめでした。 いくら勉強したとしても一人で内科から皮膚科、 漢方からハーブ、 抗癌剤からリンパ球療法、 ホメオパシーから音薬療法までスペシャリストになれるはずはないのです。 したがってコンシェルジェとしての統合医療医を養成し、 ひろく統合医療を広めることこそ統合医療ビレッジの使命であると考えております。 包括医療の制度により過剰医療は緩和されるとしても質の高い医療を求めるならば、 あるいは健康日本21の一次予防の担い手として統合医療は今後貢献できるものと確信いたします。


  統合医療に期待すること。 

これまでの医学の主流である近代西洋医学は病気の原因をひたすら一点に見つめ続けてきました。 この近代医科学の発展は今話題のゲノムプロジェクトによって行きつくところまで到達したという感があります。 1980年代の分子医学という希望の光はあたかも万病の悩みを消し去る万力のように考えられていました。 私もそもそも分子医学信望者の一人で医学部を志し、 ついには分子医学のメッカNIH (米国衛生研究所) にフェローとして留学しました。 しかし、 現在のような分子医学の発展を目の当たりにしても未だ癌を克服するめどはたたず、 むしろSARSをはじめとする新型感染症の出現のみならずストレスやうつ、 アレルギーなどの現代病は癒えるどころか拡大の一途をたどるばかりです。

一点を見つめるという近代医科学の治療手法には結核や疫病といった急性の感染症、 外科的手術を要する外傷の処置としては評価すべき多くの利点があると思います。 それでもたとえSARSなど感染ひとつをとっても、 その病気の背景を突き止めない限り本当の意味での医学体系とはいえず、 また、 癌の手術水準や有望な抗癌剤が開発されたとしても、 患者さんや家族の心身ケア領域を考えると一点豪華主義の近代医科学には限界点というよりむしろ大きな欠陥があることに今まさに気付く時期であったかと思います。

そこで東洋医学やホメオパシーなどの広い視野に立脚した伝統的医学の考え方を取り入れることこそが近代医科学にたち憚る壁を乗り越えさせる突破口になるものと確信いたします。 そのような時代の叫び声を真摯に聞き入れ、 今ここに解決の糸口として統合医療ビレッジ構想が産声をあげました。 統合医療ビレッジは単に一所の総合医療ビルではなく、 集合した村人たちが相互に統合医療という合言葉のもとにカンファレンスを通じて連携しあう組織として構築されております。 さらには統合医療という診療行為に専心するのみならず統合医療的医療従事者を育成することも設立目的の一つです。 この点が一つのクリニックビルとの大きな差異であると考えます。 ここでいう統合医療とは旧来西洋医学と代替医療の加算ではなく、 統合医療ビレッジ参加者の英知と英断をもって一度従来の医学体系を解体し個人差を重視しながら体内環境、 精神環境、 生活環境、 社会環境まで考慮した新医学体系を再構築することと心得ます。


 <統合医療>  

特徴:解体再構成型
発展型医療
利点:最適医療
テーラーメイド医療
医療費の削減
問題点:医学体系やシステムの構築の難易性
課題:統合医療医の育成
展望:未解決の疾患や病状、 現代病の克服, 従来にない医療の創造


(Medical Nutrition 61号より)


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