医療経済とCAM

 CAMとがん治療
 <CAMの落とし穴>

 医療提供サイドは情報開示し信頼関係を。
 メディカル&メディスン・リサーチ代表 松田 孝

 がん治療の入院患者や通院患者には、代替医療食品を利用している方が多い。その代表がアガリクスなどのキノコ類だ。化学療法剤との 「併用」 を条件に「免疫賦活剤」 として評価されているのだが、そのエビデンスは曖昧模糊としている。CAM普及のために、代替療法に求められるのは何かを探ってみた。


 免疫賦活食品に求められる臨床試験や疫学調査。  

各種疾患の中で治療を受ける立場の患者さん達が最もその効果に期待を抱いているのが 「癌治療」 であろう。 古いデータだが02年に厚労省の研究班が、 がん専門病院やホスピスなど約130施設の入院患者や通院患者に代替医療の実態調査を行った結果をみても、 全体の44.6%が代替医療を利用し、 その中で健康食品の利用が90%近くにのぼっている。

そんな折も折、 この8月中旬に、 医薬品と免疫賦活食品を組み合わせて内服する 「がん新免疫療法」 で脚光をあびていた医師が、 日本がん患者協議会 (JCPC) から告発されると言う記事が一部全国紙と医薬品業界紙の紙面を賑わせた。 がん治療の判定で 「虚偽のデータに基づいた行為」 があったし、 この件で告発者サイドは 「医師が正しい情報を提供せず、 患者の治療に対する選択の権利を踏みにじった」 と述べている。

代替医療食品の中で一番人気のあるのがアガリスクに代表されるキノコ類で、 カワラタケ、 シイタケ、 スエヒロタケの抽出物 「クレスチン」、 「レンチナン」、 「シゾフラン」 が、 免疫賦活剤として医薬品の認可を受けている。 これらは人を対象とした本格的な臨床試験の結果、 化学療法剤との 「併用」 を条件として 「抗がん剤」 ではなく 「免疫賦活剤」 として評価されているのだが、 アガリスクはエビデンスに基づく臨床試験データは無く、 誇大妄想的なキノコとしか言い様がない。 人には個体差があるので、 効果が全く無いとも言えないだろうが、 それを検証するのが大規模な臨床試験や疫学調査でもある。 告発された医師が投与している免疫賦活食品には、 どんなエビデンスがあるのだろうか?


  インフォームドコンセントの大切さ。  

「アトピービジネス」 と言う言葉まで生んだアトピー性皮膚炎の治療では、 (1)今もって病因が明らかにされていない(2)治療法のガイドラインが作られたが、 原因を特定する方法論が明確でない(3)何より患者数が多く、 医療ビジネスや健康ビジネスにとって魅力的である(4)マスコミの支援 ("アトピービジネス"竹原和彦:著より) が、 アトピービジネスの格好のターゲットになったとして、 その要因として挙げられている。 竹原医師は、 医療機関との関係でアトピービジネスを、 (1)既存の医療との共存を基本戦略とするアトピービジネス(2)既存の医療を100%否定する事を基本戦略とするアトピービジネス(3)医療機関における非保険診療として実践されている治療そのものがアトピービジネス(4)医療機関を経営するアトピービジネス(5)皮膚科医或いは他科の医師が実践してマスコミに登場しブームになったが、 その背景にアトピー企業の関与が大きいもの──この5つに分類している。

この分類が 「がん」 であれ 「アトピー性皮膚炎」 であれ、 ともに共通していると感じるのは筆者だけではあるまい。 同時に、 ともに話題となる健康食品の価格の何と高い事か。 良く言われるのが 「処方権は医師にある。 しかし服用権は患者にある」 と言う言葉である。 医療提供サイドの十分な情報開示と、 お互いの信頼関係を醸成し、 治療効果を促進するに必要なインフォームドコンセントの大切さが新ためて求められている事がCAMの普及のためにも示唆されてもいる。


(Medical Nutrition 66号より)


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