医療経済とCAM

 〈第1回〉血栓塞栓症予防管理料新設と褥創対策に関する診療計画書
医療費軽減に大きく貢献

       メディカル&メディスン・リサーチ代表 松田 孝

 病気にかかるリスクの軽減、すなわち予防を柱とする代替医療は医療費の軽減化という側面からも注目されている。この連載では、健康器具や食事療法、栄養飲料投与などの代替医療がどれだけ医療費の軽減に寄与するかをみていく。


  肺血栓塞栓症予防管理料が新設されたことの意味。 

平成16年度診療報酬改正の目玉の一つに、 肺血栓塞栓症予防管理料が新設され305点がつく事となった。 これは一般病棟に入院した患者で、 肺血栓塞栓症のリスクが高い患者に対して、 この症状の予防を目的とした場合に限り、 入院期間中に1回限り算定できるようになったもので、 肺血栓塞栓症状 (いわゆるエコノミー症候群等) の予防に使われる弾性ストッキングやフットポンプの購入が認められたわけである。 弾性ストッキングを使う事で肺血栓塞栓症状が完全に防げるわけではないが、 少なくとも予防価値が認知された事になる。

とは言え、 弾性ストッキングの市販価格は1足3,000円程度なので、 2足目は自己負担となる。 薬物としてはアスピリンが血液の濃縮度を薄める効果がある。 食品成分の中にも血液のレオロジーの改善に寄与できるものがある。 DHAや納豆成分であるナットウキナーゼ等がその代表で、 DHAはn-3系必須脂肪酸の代表格である魚油から摂取でき、 我々が大量に消費しているNSAID3や抗アレルギー剤、 ステロイドホルモンと同じ効果を、 副作用のない食事療法でかなり達成できる。 肥満や糖尿病などは肺血栓塞栓症の発症のハイリスク因子となり得る。 運動療法や食事療法はこれらハイリスク因子の生活習慣病の予防にも繋がる。

一方、 ナットウキナーゼの機能性として血栓溶解作用が認められており、 食品として日常の摂取は十分に予防効果が期待できよう。 肺血栓塞栓症の予防指針では、弾性ストッキング、 フットポンプ、 抗凝固剤の併用で、 発症率が半分に低下するとされているが、 日常の食事療法の効果は、 この疾患のみならず、 心筋梗塞等の生活習慣病の予防にも期待されることは、 疫学的にも認められており、 結果的に医療費の軽減に寄与することとなる。


褥創発生の危険因子を低下させる治療用食品。

さて、 平成14年10月から褥創対策未実施減産で、 「褥創対策に関する診療計画書」 作成が求められ、 褥創発生が懸念される疾患の急性期・終末期・高齢者での低栄養状態対策の重要性がようやく医療現場で認識されるようになった。 褥創治癒の過程で微量元素の亜鉛は10mg以上の摂取が必要だが、 医薬品での補給は高カロリー輸液製剤としてエレメンミックしか無い。 経口剤では亜鉛含有胃潰瘍治療剤プロマックが上市されているが、 販売しているゼリア新薬は適応症拡大を行っていないので、 亜鉛補給の薬剤としては使えない。

亜鉛は一般食品のみで補給し難いので、 治療用食品が必要となる。 この治療用食品を使うことで褥創発生の危険因子を低下させた臨床症例を発表しているのが、 尾鷲総合病院の東口高志医師(現:藤田保健衛生大学)だ。 東口医師は微量栄養素補給飲料 (Vクレスα:三協製薬工業) を高齢者の消化器外科症例119例に連続経口投与することで褥創発生率を比較した。 その結果、 Vクレスα投与群 (50例) では、 8.0%の発生率であったが、 非投与群 (69例) では31.9%と有意に発生率が高かったと報告している。 代替医療としての栄養飲料の投与が、 入院期間と入院治療の軽減に大いに貢献している代表的な例であろう。


(Medical Nutrition 61号より)


BACKSITE TOPPAGE TOP