ドイツ自然療法を訪ねて

 霊性あふれるハーブ「ヤドリギ」。
 「ドイツにおける最も一般的な抗腫瘍薬」。

 ドイツ自然療法の現場で広く用いられ、特に前回紹介したシュタイナー医学では、ある種の「畏敬の念」さえもって使われているハーブ、それがヤドリギ(mistletoe)である。
国連欧州センター予防医学研究所のGrossarth-Maticek氏らが、「ドイツにおける最も一般的な抗腫瘍薬」と述べているヤドリギの魅力を探ってみた。


 ドイツを中心にヤドリギの臨床試験。がん患者に有意な生存期間延長。

学名はViscum album。その名の通り、ホストとなる他の樹木に寄生している。ホストとなるのはリンゴ、ポプラ、プラムなど。この性質が、「ヒトに寄生して増殖する」がん細胞と同じ性質と見られているのかもしれない。

ヤドリギの臨床試験はドイツを中心に行われている。例えば、転移性大腸がんに(1)5-FU+葉酸群(2)5-FU+葉酸+ヤドリギ群で比較した試験。CR+PR+MCの奏効率は(1)群60%、(2)群65%と差はないが、生存期間中央値が(1)群13.6ヵ月であったのに対し(2)群では26.7ヵ月と大きな開きが見られた。さらに注目すべきは、NCとPDの症例でも、生存期間が(1)群4.8ヵ月から(2)群では11.9ヵ月と大幅に延長していたのだ。

一方、前出のGrossarth-Maticek氏らは、ドイツのある集団(約1万人)のがん患者を対象としたコホート研究を行っている。追跡期間中、1668人がヤドリギ(イスカドール)による治療を受けた。8475人はヤドリギ製剤による治療を受けなかったので、このグループを対照とした。判定は生存期間を指標とした。

その結果、イスカドール群では、がんの種類を問わず生存期間が長かった。対照群とイスカドール群をマッチさせた396組で検討すると、イスカドール群の平均生存期間は4.23年、対照群の生存期間は3.05年であり、有意な延長がみられた。


 免疫刺激作用を発現させる時は皮下注射で。 

細胞障害性を示す化合物は、ヤドリギの幹、葉などに含まれているアルカロイド、ビスコトキシン、レクチンである。一般には乾燥種子に含まれるものがもっとも細胞障害性が高いと考えられている。

レクチンはアポトーシス誘導により、ビスコトキシンは細胞毒性によって抗腫瘍効果をもたらす。レクチンにはいくつかの分画があり、レクチン1がそのなかで強力だとされる。

一般的には皮下注射で用いられることが多いが、シュタイナー医学では、免疫刺激作用を発現させる時は皮下注射で、細胞毒性作用を期待する場合は静脈注射で投与している。また、ヤドリギ製剤にはホスト樹木によっていくつかの製品があり、これらの微妙な違いを臨床適用の指標にしている一派もある。

臨床効果の指標としては、注射部位の急性炎症、体温の上昇、QOL向上がある。検査上の指標には、抗酸球、リンパ球、Th1/Th2の比、ECP、CRPがある。なお、ヤドリギ製剤は低血圧、徐脈、アレルギー反応を起こすことがある。


(Medical Nutrition 48号より)


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