カロテノイドのすべて

 <アスタキサンチン>  自然の恵みの抗酸化能。安定供給も可能に。

 アスタキサンチンはサケ、オキアミ、イクラなどの魚介類に多く含まれている色素成分で、近年の研究により、優れた抗酸化作用が着目される機能成分である。構造上はβ−カロテンやリコピンと類似し、カロテノイドに属する。その抗酸化能をさぐってみた。


 抗酸化作用に加え血液脳関門、血液網膜関門を通過するのが特徴。

アスタキサンチンの生産地と生産方法にはいくつかある。主な生産地はハワイとイスラエル。例えばハワイ・マイクロガイア社では、ヘマトコッカスという藻類をドーム状の培養槽で培養してアスタキサンチンを生産している。この方法により、外部からの汚染を防ぐことができ、安定供給が可能になった。すでにこれを利用したアスタキサンチンのサプリメントが日本の大手食品メーカーから発売されている。

アスタキサンチンは、抗酸化作用が強いことと、血液脳関門(BBB)、血液網膜関門(BRB)を通過するのが特徴で、他のカロテノイドと異なるところである。抗酸化能は動物実験で、β−カロテンの数十倍、ビタミンEの数百倍とされている。β−カロテンと異なり、酸素が4つ結合しており、水への親和性が高まる。細胞膜内で、細胞外に接する部分と細胞質に接する部分にアスタキサンチンの水酸基が結合するので、抗酸化能が高まると考えられている。

BBBやBRBを通過することは、脳神経および視覚機能への作用が期待できることを示す。特に視覚機能への働きは、それをもつ食品素材の数が少ないことも相まって、ニーズが大きい。なにせ、人間の五感のうち、9割は視覚に頼ると言われるほどだから。加えて、人口の高齢化、さらには活性酸素、紫外線と、われわれをとりまく環境には、目の健康を脅かす因子があふれている。

「目の健康を守るヘルスフード」として注目され、美容分野への応用も可能。その中で、抗酸化作用、抗炎症作用を有するアスタキサンチンは、目の炎症性疾患、進行性疾患(白内障、緑内障、加齢黄斑変性)など、高齢者のQOLを低下させる疾患を予防することが期待される。高齢化社会で「目の健康を守るヘルスフード」として注目されるだろう。

一方、その抗酸化能から、シミ、シワといった美容分野への応用も可能だ。シワは老化や紫外線などの影響で、真皮のコラーゲンが酸化されてマトリックスが引き締まった結果である。体内で吸収されて真皮に到達したアスタキサンチンは、特に紫外線によって生じる一重項酸素を消去して、シワの形成を阻止する。さらに、基底層でのメラニン生成を抑えてシミの予防にもつながる。

以上のような予防医学の観点からは1日3〜5mgの摂取が目安。ちなみにこの量はイクラ丼1杯にあたり、連日摂取するのが困難な場合は、サプリメントを利用する手もある。自らの食生活の現状と将来のリスクを把握し、文字通り補助食品としてサプリメントを取り入れていくことは、現代人の「知的食生活」と言える。


プロフィール
矢澤一良
東京水産大学大学院客員教授 

(Medical Nutrition 53号より)


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