|
トマトが含む 最強の抗酸化物質、リコピン。
リコピンが注目されるようになったのは、1989年にその抗酸化作用がビタミンEの100倍、α-カロテンの2倍強いことが明らかにされてから。吸収は生野菜よりも加工品のほうが良く、また油を使った料理ではさらに吸収性が高まるため、リコピンを効率的にとるには、生のトマトよりも加工品を利用するほうが賢明という。トマトに含まれるリコピンの作用をさぐってみた。
 |
カロテノイドのなかでリコピンが最も強い抗酸化作用。 |
リコピンは、トマトに含まれる赤い色素で、β-カロテンと同じアルカロイドに分類されます。スイカ、グアバ、ピンクグレープフルーツにも含まれていますが、トマトほど豊富ではありません。
リコピンは、熱に安定で加熱調理しても壊れません。吸収は生野菜よりも加工品のほうが2〜3倍も良く、また油を使った料理ではさらに吸収性が高まるため、リコピンを効率的にとるには、生のトマトよりも加工品を利用するほうが賢明です。
リコピンが注目されるようになったのは、1989年にその抗酸化作用がビタミンEの100倍、α-カロテンの2倍強いことが明らかにされてからです。自然界には600種類以上のカロテノイドが存在しますが、現在のところ、リコピンが最も強い抗酸化作用を示しています。
 |
トマト摂取やリコピン濃度が発がんリスクを低下。 |
リコピンは、ヒトの体内では前立腺に多く含まれています。1995年Giovanucciらは、リコピンの摂取と前立腺がんの発生率低下の関連性を見つけました。ハーバード大学の研究では、トマトやトマト製品を食べる量の多かったグループが前立腺がんになるリスクは、最も食べる量の少なかったグループの1/3という結果でした。
血中リコピン濃度、トマト摂取量およびトマトを原料とする食品の摂取量と発がんリスクに関する72の研究報告を集計したreviewによれば、このうち57の研究においてトマト摂取やリコピン濃度が発がんリスクを低下させており、トマト摂取と発がんリスクに正の相関を示したものはなかったとしています。前立腺がんについても、数種類の抗酸化物質の血中濃度と前立腺がんリスクについてcase control studyが行われており、リコピンのみが有意に前立腺がんリスクを低下させることが報告されています。
リコピンは前立腺がんだけでなく、すい臓がん、膀胱がん、子宮頸がんなどの予防効果の報告があり、がんの発症リスクを減らせる可能性から、世界中でがん予防効果の有無を確認する試験が進行中です。
日本では、秋田大学医療技術短大が、ラットに発がん物質を直腸から投与し、同時にリコピンを投与した発がん防止実験で、リコピンが大腸がんの発生を抑制することを示しました。
 |
動脈硬化の防止作用、皮膚に対する作用も注目。 |
リコピンの動脈硬化の防止作用も注目を集めています。リコピンは悪玉コレステロールであるLDLの酸化を防止することにより、動脈硬化の予防に働くと考えられ、心筋梗塞の予防作用についても精力的に研究されています。疫学的手法によると、脂肪組織のリコピン濃度の高いグループが低いグループに比べ、心筋梗塞の発症リスクが有意に低いことが分かっています。その作用機序として、抗酸化作用だけでは説明できず、遺伝子レベルなどでの機序が検討されています。
また、皮膚に対する作用も注目されてきました。トマトは日光を浴びて熟す時、その光線から自らを守るためにリコピンを使用します。同様のことが臨床試験で検討された結果、紫外線の照射により、皮膚のリコピンはβ-カロテンに比べ大きく減少することが分かりました。このことから、リコピンは自分が分解することにより、紫外線による肌のダメージを抑え、日焼けや皮膚がんの予防に役立つと考えられています。
(ゼリアヘルスウエイ(株)学術部長・菊地信幸)
(Medical Nutrition 51号より)
|