<がん食事療法の父、マックス・ゲルソン医博のゲルソン療法>
"自ら学び、自ら治す「ゲルソン療法」、ライフスタイル修正で再発なし。 フリーライター 氏家京子

ゲルソン療法は、故マックス・ゲルソン医学博士が自身の偏頭痛を食事の変化だけで治したことに端を発して考案された、病気の治療方法。がんの食事療法として、既に世界でも有名になっているゲルソン療法の現在について紹介してみたい。


 自然の食材から栄養を。がん患者にはたんぱく質制限も。

さて、前回は、「ロサンゼルスなどで会ったがん克服者たちの自立度は非常に高かった」という私の個人的な感想をお伝えした。ちょうど、この連載のための取材に出かける前、『決定版ゲルソンがん食事療法』(シャルロッテ・ゲルソン、モートン・ウォーカー予防医学博士著、9月30日徳間書店刊)の翻訳作業に当たっていた私は、この原著者らも"患者自身の依存体質からの抜け出しと自立"ががん克服者には共通して見られることを述べていたため、自分の個人的な感想もそれほど的を外れたものではないのだろうと感じていた。この経緯から、今回はがんの食事療法としては既に世界でも有名になっているゲルソン療法の現在について紹介してみたい。

ゲルソン療法は、故マックス・ゲルソン医学博士が自身の偏頭痛を食事の変化だけで治したことに端を発して考案された、病気の治療方法である。この治療方法の主なコンセプトは、がんやその他の慢性病患者に共通してみられる欠乏を補うことと、やはり共通してみられる毒の蓄積を体外に排出させる「解毒」である。また、全身の細胞や組織に損傷を与える原因になっているナトリウム過多を克服するために徹底した塩分制限を行ない、代わりにカリウムを多量に供給する。

実際に患者が行うのは、最もバランスが取れた状態で栄養を補給できる新鮮で自然な食べ物からの多量栄養摂取(自家製無塩スープ等)と、生の食材による酵素摂取(搾りたてジュース等)、肝臓の解毒と再生のために行なう自家製コーヒーの浣腸、自然な甲状腺成分・希釈ルゴールヨウ素溶液・カリウム溶液・ペプシン・ナイアシン・膵酵素・亜麻仁油などの補給である。がん患者の場合は、これに加えてたんぱく質の制限も期間限定で行う。

マックス・ゲルソン博士亡き後、遺志を継いでこの療法の普及に奔走しているのが娘シャルロッテ・ゲルソン氏だ。もう80歳近い高齢だが、自分でも食事療法や浣腸を毎日実践している女史は、生き生きとしており、老いを感じさせない魅力的な女性である。

このシャルロッテ氏の講演を聞くために、ロサンゼルスのコンベンション(前号を参照)を訪れる人も多い。なぜなら、他の講演者とは違い、シャルロッテ氏は治った元患者数人を一緒に演壇に引き連れて体験発表をさせるからである。一般の聴講者にとってこれほど具体的で正確な、そして勇気付けられる情報源は無い。講演後、壇を下りた元患者たちやシャルロッテ氏とは誰でも自由に話をすることができる。ここでも大切な情報交換が行なわれる。


 3週間の入院で学ぶ"自分で治す決心と、その実行"。 

ゲルソン療法は米国の通常医学(現代医学)界から徹底的に攻撃されてきた代替療法のひとつだと言えるが、治った患者の存在とその数の多さ、そして探究心の強い専門家たちがその効果の高さを証明してきた療法でもある。

しかし、この療法には他の治療には無い難しさがある。それは"自分で治す決心と、その実行"を患者自身に求めることである。"入院して治してもらう"方式ではなく、患者自身がライフスタイルを変えて、その中で治療を行う"ライフスタイル修正治療"方式とでも言えるだろうか。

これは、誰かに治してもらったとしても、その後のライフスタイルが以前と同じであれば、その生活習慣や環境から病気が再発すると考えるからである。つまり、ゲルソン療法で治った患者は、そのライフスタイルを続けている限り病気の再発という憂き目には会わないことになる。

現在、患者が行うゲルソン療法を助け、医師らが指導を行ってくれる「病院」と呼べる施設は、正確に言えば世界に1ヵ所しかない。今年の5月にゲルソン協会の認定病院になったバハ・ニュートリ・ケア(メキシコ、ティファナ)である。ここでは約3週間だけ患者を入院させ、導入治療とその後自宅でゲルソン療法を続けるための教育を患者に対して行なう。

しかしながら、世界中のがんやその他の難病患者がここに来るわけにはいかない。従って、ゲルソン療法を行うために世界中の患者たちはゲルソン療法に関する情報を独自で入手し、それ以外の健康情報に対してもアンテナを張り、アメリカにあるゲルソン協会(ホームページhttp://www.gerson.org/)に問い合せたりしながら治療を実行しているのである。このことが、否応なく患者を自立させるのかもしれないが、患者自身が自分のための健康ジャーナリストになること、患者自身が自分の治癒に対して自信を持つための根拠になるのだろうと思う。

『決定版ゲルソンがん食事療法』の中で、代替医療専門のジャーナリストでもあるモートン・ウォーカー予防医学博士は次のように述べている。「…家庭でゲルソン療法を行なうのであれば、恐らく"不治の病"の生還者は…(中略)…有機農業、栄養科学、身体の解毒、心理学、視覚化イメージ、瞑想、がんの医学治療を取り巻く政策、変性疾患に関する一般的な情報、これらについて学ぶ学生のようなものだ。何が身体にとって純粋なもので、良いもの、本当に役に立つ本物なのかを知る教育者でもある」


元患者たちと講演するシャルロッテ・ゲルソン氏 バハ・ニュートリ・ケアのキッチン。大量のオーガニック野菜と果物が患者の食事として用意される

(Medical Nutrition 43号より)


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