医薬ネットワーク時代−新医療システムの構築をめざして

北大薬学部を中心に進む健康食品データベースづくり。
 医療ジャーナリスト 平野勝巳

副作用を防ぐための医薬分業は進んでいるが、薬と健康食品の併用に関しては手つかずの状態だ。クスリとの併用で薬効を阻害したり、副作用を起こす健康食品があることも指摘されている。まずはこれら健康食品の詳細なデータベースづくりが必要と北海道大学薬学部を中心とした調査が行われた。


 クスリと健康食品の飲み合わせにもっと関心を。

クスリの飲み合わせによる副作用などを防ぐために、最低限の医薬分業はすでに実施されている。しかし、それでは「クスリと健康食品の併用は?」となると、ほとんど手つかずの状態。この現状を調べるため、北海道大学薬学部を中心として各地の透析患者にアンケート調査が行われた。

その結果、患者の約半数が健康食品を飲んでいることがわかったが、一方で「今飲んでいる健康食品について医師・薬剤師から質問を受けたことがある」という回答はほぼ皆無だった。

一部の健康食品は、クスリとの併用で薬効を阻害したり、副作用を起こす危険性がある。この事実が医療現場ではまったく無視されていることが、今回の調査で明らかになった。調査に加わった札幌市の薬剤師、中村峰夫さんは「医師と薬剤師への正しい情報提供が急務だ、と痛感しました」という。

これを受けて今、同大大学院薬学研究科の井関健教授を中心に、中村さんら有志の薬剤師が協力して「健康食品データベース」の構築が進んでいる。


 商品別に検索できるデータベースで、商品を丸裸にして公開。

このデータベースの最大の特徴は、商品別に検索できる点だ。成分別のデータはすでに整備されている。例えば、きのこに「β−D−グルカン」という抗がん作用がある成分が含まれていることはよく知られている。しかし、それでは、きのこ健康食品ならどの商品にも抗がん作用が期待できるかというと、かなり疑わしい。こうした曖昧さをできるだけ排除するために商品ごとのデータ検索が必要になる。

データ内容も詳細にわたる。主材料、特記すべき成分、効能効果などのほか「類推される効能」や「薬理作用」「アレルギー物質」…と、商品を丸裸にして公開する姿勢だ。

中村さんは「特に国が指定しているアレルギー物質は、表示義務があるにもかかわらず、ほとんど表示されていない。こうしたメーカーのいい加減さを指摘し、意識改革を求めるのも今回のデータベース構築の一つの目的です」という。

ちなみに、アレルギー物質について先ごろ、イチョウ葉エキス製品の半分以上からアレルギー物質「ギンコール酸」が検出され、問題化している。しかし、同データベースを見れば、「これは氷山の一角に過ぎない」(中村さん)ことが一目瞭然だ。


 正しい情報の共有を。今年は、健康食品の"情報開示元年"に。

さらに医療関係者向けに、薬理作用や相互作用、安全性の文献も検索できるようにする。それも、その商品の文献にとどまらず、「同一成分で異なる商品の文献」「同じ作用を類推できる類似成分での文献」まで掲載する予定で、これも徹底している。

もちろん、これほど詳細で客観的な情報は、メーカーの資料から拾い集めることはできない。そのためデータ入力は、全国の約20人の有志の薬剤師がインターネットや文献資料を駆使して作業を続けている。

ある程度の情報の入力が整えば、今夏から順次にデータベースの公開が可能だが、本格的な公開は来年になりそう。中村さんは「正しい情報が医師・薬剤師と利用者に共有されることが大切。より充実したデータベースにするために多くの心ある薬剤師の方々に参加してもらいたい」と呼びかけている。

中国製ダイエット食品が死亡者まで出す重篤な健康被害を広げ、大きな社会問題になったのは昨年のこと。この事件で健康食品の情報開示をもとめる声が高まった。こうした流れのなかで、今年は健康食品の"情報開示元年"になりそうな機運だ。


(Medical Nutrition 47号より)


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