|
医師・薬剤師が力を合わせた施設づくりを。
医療ジャーナリスト・平野勝巳
仙台市から東北本線で南に13分。JR名取駅にほど近いところで「薬局」を開業している岡義也さん(40)は昨年5月、それまでの「うさぎ薬局」という局名を「うさぎ薬品」に変えた。「薬局」という看板を掲げている以上、薬の調剤をする責任がある。「うちは調剤はしません」という"拒否宣言"としての名称変更である。
 |
「薬の調剤はもうしたくない」と"薬局"の看板を降ろす。 |
「医師から、あきらかに不必要な薬の処方箋を渡されてくる患者さんに、"害にもなるのに……"と思いながら調剤をすることはできません。"薬局"の看板を降ろして薬剤師の本来の仕事に戻ろう。そう決心したんです」
こうして、調剤もしなければ、風邪薬も一般的な化粧品も雑貨も置いていない「薬品」店が生まれた。店内にあるのは岡さんが「これは本物!」と納得した機能性食品や漢方薬だけである。
「薬剤師の本来の仕事」をするために岡さんが掲げたもっとも大きなテーマは、「自分の健康は自分で守る」というセルフ・メディケーションの啓蒙。「病気になったら病院に行く」というのではなく、「病気になるまえに生活習慣を変えましょう」と顧客に岡さんは口酸っぱく声をかけている。
しかし、かけ声だけでは足りない。セルフ・メディケーションを実体験してもらえる環境が必要ではないか。そう痛感した岡さんが今、夢見ているのが総合健康・医療スペースの建設だ。
構想が浮かんだのは、北海道・赤平市にある「スペース 元気の丘」という施設を訪問したことがきっかけだった。
 |
医師と薬剤師が連携した総合健康・医療スペースを。 |
この施設は、バイオメディカル研究所(株)が1万5000坪の広大な丘陵地に「動植物と接し、自分でつくった有機野菜を食べ、心身の本来の姿を取り戻す」というコンセプトで展開しているもので、全国から医師や予防医学の研究者などの視察が相次いでいる。
敷地内にあるヘルスフル・センターには、「笹ムロ」と呼ばれるユニークな施設がある。利用法は、まず機能性食品のクマイ笹エキスを希釈したドリンクを飲んでムロに入る。室内は摂氏42 度に保たれており、板の間でゆったりしていると、壁面に埋め込まれたクマイ笹からの遠赤外線作用でじわじわと発汗する。これで老廃物が汗として流れ出て、エキスの成分が細胞に染みわたる……というしくみだ。
笹ムロを体験した岡さんも「あれほど汗をかいたのは、生まれて初めて。サウナのように高温ではないので、息苦しさがまったくない。心臓の弱い方にも勧められるすばらしい施設だと思いました」と絶賛する。
笹ムロの効用については、前回紹介した札幌市の平田章二医師によって臨床実験も行われている。
健常者の12人を対象にした実験では、CD4、CD8などの免疫機能の状態をしめす指標が、笹ムロに入るまえより、出た直後と1時間後のほうが優位さをもって上がった。実験結果は日本補完・代替医療学会で発表された。「元気の丘」には医療施設の建設も検討されており、実現すれば、予防医学を前提にした本格的な総合健康・医療スペースの第1号になる。
しかし、岡さんが住む宮城県から北海道は遠すぎる。そこで、この"お手本"を参考に、岡さんが新たな健康スペース建設の候補地として考えているのは宮城蔵王の山麓だそうだ。「すばらしい眺望の場所で、私のイメージにぴったり。ここに心ある医師と薬剤師が力を合わせた施設をつくる。夢をぜひ実現したいですね」と目を輝かせる岡さんだ。
(Medical Nutrition 46号より)
|