医薬ネットワーク時代−新医療の構築をめざして

「患者中心の医療」目指し、医師・薬剤師が連携を。
 医療ジャーナリスト 平野勝巳

医師と薬剤師の連携プレーは、医療の現場でも切実なテーマになっている。がん治療で注目されている免疫療法。その分野で独自の治療法で成果をあげている札幌市の平田章二口腔顎顔面外科の平田章二院長は先月、金沢市で開催された第5回日本補完代替医療学会で画期的な研究発表を行った。


 抗がん剤と機能性食品の併用で免疫力をあげる。

平田医師はこれまでも同学会で、抗腫瘍効果をもつクマ笹エキス「AHSS」を使った臨床例を数多く発表しているが、今回はAHSSを中心に代替医療単独で治療を受けている舌がん患者と、AHSSに加えて通常の10分の1の量の抗がん剤と免疫強化剤(OK−432)を併用した舌がん患者との免疫反応を、病理組織学的に比較した。その結果、特徴的な差が明らかになったという。

AHSS単独のケースでは確かに全身の免疫応答(CD4、CD8、IL−12、IFN−γ、NK活性など)は高くなったものの、がん病変部周辺の局所的な免疫応答は低い状態にとどまる傾向にあった。それに対して、AHSSと低用量の抗がん剤を併用したケースは、全身免疫応答もあるうえに、がん病変部周辺にも免疫細胞が集中していることが確認され、明らかな抗腫瘍効果が見られる症例が多く認められた。

この試験結果について平田医師は、「まず低用量の抗がん剤でがん細胞にダメージを与え、細胞表面を修飾することで免疫細胞ががん抗原を見つけやすい環境をつくる。そのうえでAHSSを摂取することにより、生体のもつ一連の免疫能が活性化され、抗腫瘍効果が発揮されると考えられる」と結論づけている。


 医薬連携が生み出す「患者中心」の医療。

今回の平田医師の研究発表は、西洋医学に機能性食品を取り入れる「統合医療」の可能性を示した重要なエビデンスだが、こうした新しい動きを支える背景に医師と薬剤師の連携プレーがある。

実際、平田医師の治療・研究両面のパートナーになっているのが中村薬局の薬剤師、中村峰夫さんだ。たまたま平田医師のクリニックが中村薬局の近くに開設され、調剤薬局としての付き合いが始まったあと、医療に対する平田先生の考え方に共感して、自然に協力関係が生まれていったという。

「以前は、がんの患者さんから相談を受けても、抗がん剤や放射線治療に頼る医師には紹介できず困っていました。そんなとき、患者のQOLを大切にされる平田先生と出会えて、安心して患者さんを紹介できるようになりました」と中村さんはいう。
 一方、平田医師も、中村さんとの出会いによって「統合医療」の実践が可能になったという。


 いろいろな医療関係者が協力し合ってケアしていくのが医療の本来の姿。

「大病院で抗がん剤や手術を受けたあとに免疫能が著しく低下する患者さんが多い。また治療のあと月1回の検査を受け、再発を心配しているだけというのが常識化しています。こんななかで、患者一人ひとりと向き合って代替医療を中心とした食事療法や生活・心理指導を行っている当院では、薬剤師との連携は必要不可欠です」(平田医師)。

こうして平田医師と中村さんの連携プレーは、大きな成果を生み出しているが、一般に医師と薬剤師の間には"溝"が存在している。その中でもっとも深い溝が、有り体に言えば「この患者はうちのもの」という損得勘定にからむ縄張り意識である。

しかし、平田医師と中村さんは、「そんな縄張り意識は、患者さんを中心に考えればそもそも生まれてくるはずのないもの」と口を揃える。

「一人の患者を治すために、いろいろな医療関係者が協力し合ってケアしていくのが医療の本来の姿。そこに縄張り意識が生まれるとしたら、誰が中心の医療か、という根本を見失っている証拠」と平田医師は言い切る。

「患者中心の医療」が単なるお題目に終わらずに医療現場で実践されるためにも、「医師と薬剤師の連携」の実践は危急のテーマになっている。


(Medical Nutrition 45号より)


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