マルチビタミンはがんに有効か。
 運動と酸化ストレスはどう関係しているか。

 高輪メディカルクリニック院長 
 秀明大学客員教授 久保 明


 マルチビタミンでのがん予防は10年スパンで。

米国のJacobs氏らは、 市販のマルチビタミンを10年間摂取していた集団では大腸がんの発生が3割減少するとの調査結果をまとめ、 American Journal of Epidemiology (158巻621ページ、 2003) に報告した。

およそ14万5000人の男女を対象に、 1992年から93年にかけてマルチビタミン使用状況を聞き取り、 その後97年まで追跡した。 年齢や性別などの因子を調整して解析すると、聞き取り時点ですでに10年間マルチビタミン摂取 (週4回以上) を続けていた群では、 使用していなかった群に比べて大腸がんのリスクが29%減少していた。 10年使ってやめた群でもこの傾向は変わらない。 一方、 調査時点での使用の有無のみ (期間は不問) では、 摂取群と非摂取群に差はなかった。


 運動と酸化ストレス、 抗酸化療法の総説。 

米国のUrso氏らは、 酸化ストレス、 運動、 そして抗酸化サプリメントについての総説をToxicology (189巻41ページ、 2003) に発表した。

ある種の運動によって酸化ストレスが増強すると考えられているが、 それは生体の反応として起こるもの。 生体防御的な役割を果たし、 最終的には抗酸化能が高まる可能性もある。 そのため、 抗酸化サプリメントによって活性酸素を全部除去しろというには不明な点があるとしている。

総説の中では、 ビタミンCを12.5mg/kg、 N−アセチルシステイン (NAC) を10mg/kg投与したら、 投与群の方が活性酸素の指標 (8−イソプロスタグランジンF2αなど) が多くなったという結果が紹介されている。 また、 ビタミンE270mg、 ビタミンC600mg、 CoQ10 100mgをトライアスロン選手に6週間投与したところ、 最大酸素摂取能と筋疲労度の指標では、 効果を示さないという成績もある。


 ■がん予防なら 「急がば回れ」

コメント:
久しぶりにビタミンのクリアな結果が出た。 およそ15万人の調査が出来るあたりは、 さすがアメリカといった感じである。 ポイントは、 10年という歳月。 これまでの研究ではせいぜい数年で答えを出すケースが多かった。 もちろん何を評価項目にするかで適切な試験期間は変わってくるのだが、がんの予防効果を検討するには、 これくらいの年月をかけないとモノが言えないと考えるべきだろう。 そうすることで、 サプリメントがどういう集団において、 発症のどの段階に働くのかが明らかになってくる。

同様に、 酸化ストレス下でのサプリメントの役割も、 種目と運動する人のレベルによると考えられよう。 すなわち、 有酸素運動か否か、 トップアスリートか趣味の範囲か、 あるいはまったく運動しない人かを分けて考える。 競技大会に出るレベルのアスリートなら、 サプリメンテーションの意味はあるだろう。

当院で行っている 「健康寿命ドック」 の結果では、 週3回くらいの軽い運動をするような集団では、 抗酸化能が上がるというデータが出ている。 運動によって活性酸素の発生が高まると、 その反応として抗酸化能が上昇するのではないか。


(Medical Nutrition 56号より)


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