栄養摂取は食事からか、サプリメントからか。
 高輪メディカルクリニック院長
 秀明大学客員教授 久保 明

米国予防医療サービス調査会は、どのビタミンも単独、併用にかかわらず、がんと心血管疾患の発生またはこれらによる死亡に対して有意な効果は示さなかったと報告。また、ギリシャのTrichopoulou氏らは、伝統的な地中海食の順守が全死亡率の有意な低下につながるとの疫学調査をまとめ、サプリメントはこのところ連敗といった趣だ。


 ビタミンサプリによる疾患予防は根拠不十分。

米国の大学研究者らで構成される米国予防医療サービス調査会は、「がんや心血管疾患予防のためにビタミンサプリメントを日常的に使用するには、根拠が不十分である」との勧告をAnnals of Internal Medicine(139巻51ページ、2003)に発表した。

ビタミンA、C、E、β-カロチン、抗酸化ビタミン、そしてマルチビタミンについて、これまで行われたランダム化比較試験、コホート研究を収集し、系統的に解析した。前者は27編の論文があり、うち12編が心血管疾患の一次予防、15編が二次予防を意図していた。

その結果、どのビタミンも単独、併用にかかわらず、がんと心血管疾患の発生またはこれらによる死亡に対して有意な効果は示さなかった。

β-カロチンについては、がんまたは心疾患の予防に利益がないとする確かな根拠があるため、単独であっても併用であっても、サプリメントの摂取に反対するとしている。


 地中海食は死亡率を顕著に下げる

ギリシャのTrichopoulou氏らは、伝統的な地中海食の順守が全死亡率の有意な低下につながるとの疫学調査をまとめ、New England Journal of Medicine(348巻2599ページ、2003)に報告した。

ギリシャに住む成人約2万2000人を対象に食事内容を調査し、地中海食の順守度合いを10段階に分けた。地中海食の中身は、野菜、穀類、果物、ナッツ、マメ科植物、オリーブ油の摂取、飽和脂肪酸、肉類の摂取が少ないこと、ワインを始めとするアルコールを規則的にかつ適量摂取することなど。

観察期間は44ヵ月(中央値)。その結果、順守の度合いが高いと、全死亡率が低下していた。また、より高い順守度合いは、心疾患やがんによる死亡と明らかな負の相関関係を示した。個々の食品と全死亡率との関連は全体的に有意ではなかった。


 「集団と個」を考慮して、サプリメントが必要な人とそうでない人を見極めていくこと。

コメント:ビタミンの解析では、すべてネガティブな結果がでた。前回紹介したランセットの抗酸化ビタミンの総説といい、サプリメントはこのところ連敗といった趣だ。しかも同時期に、食事そのもの、特にこの数年「スローフード」として注目されている地中海食の有用性が報告されてきた。「栄養摂取は食事が基本」が裏付けられたことになる。

それを踏まえた上で問題提起したいのは、全体に対する評価と個人に対する評価は異なるということ。言い換えれば、ランダム化比較試験がサプリメントに対する評価に適切かということである。

この種の試験を大規模で行う場合、例えばビタミンEが十分摂れている人、逆に血中濃度が低い人が混在している。バラエティに富んだ被験者を一緒くたにして評価しても、それはあくまでマスの評価である。もちろんそれも尊重すべきだが、個別化医療という流れからは、参考程度に過ぎないのではないか。大切なのは、個人の栄養状況を把握した上で、サプリメントが必要な人とそうでない人を見極めていくことである。


(Medical Nutrition 53号より)


BACKSITE TOPPAGE TOP