アルコールと糖尿病との関連、「発症」と「合併症」の2段階に分けて検討。
 高輪メディカルクリニック院長
 医学博士 久保 明

ビールを飲む機会が増える夏。気になるのはアルコールと糖尿病の関係だが、適量のアルコールなら糖尿病の発生および、合併する血管障害の進展に影響はないという学術報告がなされた。愛飲家には、ホッといったところか。


 少量の飲酒は動脈硬化を抑制。

山形大の若林氏らは、少量の飲酒が2型糖尿病患者における動脈硬化を予防するとの研究を、Diabetes Care(25巻1223ページ、2002)に報告した。

194例を対象に、アルコール摂取を(1)非飲酒群(2)少量群(エタノール換算で210g/週未満)(3)大量群(同210g以上)――の3グループに分けた。動脈硬化の進展具合は、大動脈波伝播速度(PWV)によって計測した。

その結果、少量群が他の群に比べて有意にPWVの値が低く、動脈硬化が予防されていた。しかし、非飲酒群と大量群の間では有意な違いは見られなかった。収縮期血圧、HDLコレステロール、中性脂肪のレベルは、大量群が他の群に比べて有意に高いが、非飲酒群と少量群の間には差がなかった。BMI、ヘモグロビンA1c、尿酸、フィブリノーゲンは3群間で変化がなかった。


 飲酒量と血糖値にJカーブ。

米国のLu氏らは、アルコール摂取は耐糖能を悪化させないとする調査結果を、Metabolism (52巻129ページ、2003)に報告した。

45〜74歳のアメリカインディアン2601人を対象に、飲酒状況と血糖値(空腹時、糖負荷2時間後)を調査した。すると、非飲酒から少量・中等量・大量とアルコールの量が増えるにつれて、非飲酒から中等量までは血糖値が減少していくが、大量群では増える「J型カーブ現象」が観察された。


 適量は缶ビール2本未満か。

コメント:夏に向かい、ビールを飲む機会も増えるだろうが、アルコールと糖尿病との関連を示すデータが集まった。これまで賛否両論が報告されているが、今回の2編は、「発症」と「合併症」の2段階に分けて検討できる点が興味深い。単に糖尿病とひとくくりに考えても、状況に応じてアルコールの関わり具合が変わる可能性があるからだ。結論は、適量のアルコールなら糖尿病の発生および、合併する血管障害の進展に影響はないとされた。

アルコールは適量なら体によいというのは、よく言われる。そのメカニズムはさまざまだが、代謝疾患においては、HDLコレステロールの上昇も一つの要因である。しかし、若林氏らは、大量飲酒群でHDLのレベルが上昇したにもかかわらず、PWVの値が低下していないことから、別個の機序の可能性を指摘している。

さて、「適量」とはどれくらいか。若林氏らは1週間に210g未満、Lu氏らは1週間に4〜12杯としている。350mlの缶ビールで、1日あたり2本未満といったところだろうか。


(Medical Nutrition 51号より)


BACKSITE TOPPAGE TOP