アスピリンは大腸がんの発生を予防する。
 高輪メディカルクリニック
      院長医学博士 久保 明

 米国のSandler氏らの研究によるアスピリン服用による大腸線腫発生の減少の報告と、米国のCoates氏らによる食事摂取の頻度と結腸がんの関連についての研究をリポートする。


 アスピリン群が有意に少ない腺腫の平均個数。

米国のSandler氏らは、大腸がんの既往のある患者がアスピリンを日常的に服用すると大腸腺腫発生が減少するとの結果をまとめ、New England Journal of Medicine(348巻883ページ、2003)に報告した。
635人を無作為に2群に分け、一方にアスピリン325mg/日、もう1群にプラセボを摂取させた。腺腫を発症した患者の割合、腺腫の数、腺腫発生までの時間を調べた。

1個以上の腺腫が見つかった症例の割合は、アスピリン群で17%、プラセボ群が27%と、その差は有意であった。腺腫の平均個数もアスピリン群が有意に少ない。年齢、性別やがんのステージなどで補正した結果、アスピリンではプラセボよりもリスクが35%低下していた。


 男性の結腸がん予防には1日1〜2食がよい。

米国のCoates氏らは、食事摂取の頻度と結腸がんとの関連を調べ、Nutrition and Cancer(43巻121ページ、2002)に報告した。

1966人の結腸がん患者と、同じ地域の住民から選んだ2380人の対照群をインタビューし、1日の食事回数(水を除くすべての飲食)によって「1〜2回」から「6〜8回」まで4群に分けた。

その結果、結腸がん家族歴、BMI、食物繊維の摂取量などで補正すると、男性の場合は食事回数1日1〜2回の人が、3回の人よりも結腸がんのリスクが46%低下した。3回以上のグループでは、それ以上食事回数が増えてもリスクは増加しない。女性においては食事回数と結腸がんに有意な関連は見られなかった。


 アスピリンの効果、がん領域でもジレンマか 。

コメント:がん予防のためのアスピリンは、これまでも「効果あり」とする報告が散見されていたが、これほどの規模のスタディは珍しい。近年、食物繊維は大腸がんの予防に効果がないとする報告が相次いでなされており、次の手段としてアスピリンなど非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)に関心が高まるのではないか。

ただし、そのメカニズムや至適用量、摂取期間について不明な点があり、一般的な勧告に至るまでにはデータの積み重ねが必要だ。例えば用量は、Sandler氏らは325mg/日で効果を認める一方、325mgと81mgを比較したBaron氏らの研究(同誌348巻891ページ、2003)では、81mgの方が優れていた。また、今回はハイリスク群への投与だが、一般集団の一次予防ではどうなるか。他のNSAIDSとの差はあるか――などだ。

アスピリンの抗血小板作用においては、高用量を用いると血管内皮のプロスタサイクリン生成を抑えてしまう「アスピリンジレンマ」が存在する。新たなジレンマが生まれるかもしれない。

化学予防であるアスピリンとは対照的に、Coates氏らは食事頻度との関連を示した。腸内容物の停留時間延長による発がん物質や胆汁酸への暴露が、がんの発育に関与していると推測される。

では、なぜ性差が生じたのだろうか。これは今後の検討課題である。


(Medical Nutrition 49号より)


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