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変性症と関節症
神戸大学名誉教授・葛城病院名誉院長 藤田拓男
高齢者がかかえる腰や背中、膝などの痛み。これもカルシウム不足が原因である。「沈黙の病気」と言われる骨粗鬆症とちがって、変性症や関節症は強い痛みを伴う。歳のせいと我慢している方がほとんどだが、カルシウム不足がもとで起こる病気と認識する必要がある。
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カルシウムが不足すると軟骨にもカルシウムが入り、硬くなる。 |
年をとって一番困ることは、体が自由に動かないこと、又、腰や背中、膝などが痛むことでしょう。歳のせいだといって何とか我慢している方がほとんどで、治療の方法がないといわれることが多く、この痛みさえなくなれば、どんなに良いことかと、大勢の高齢者が困っておられます。
骨粗鬆症が高齢者、ことに女性に多いことは最近はかなりよく知られております。カルシウム不足になると、血液の中のカルシウム濃度を低下させないために、副甲状腺ホルモンが骨からカルシウムを取り出して血液中に補う仕組になっています。このことを繰り返すうちに骨のカルシウムが減少してくるのが、骨粗鬆症です。
カルシウムの摂り方が少ないと骨のカルシウムが減るのはよく理解出来ます。しかし血管や、脳や色々な細胞の中では不思議なことに逆にカルシウムがふえてくるカルシウムパラドックスについては、まだまだ充分に理解されてはいません。そしてカルシウムパラドックスになると、軟骨の中にもカルシウムが入ってくるというと、驚かれる方も多いでしょう。血管の壁や脳と同じように、軟骨にはもともとカルシウムはほとんどありません。しかし、年をとると共に軟骨の中でカルシウムはどんどん増加します。カルシウムの摂り方が少なくなり、腎臓での活性型ビタミンDの作成能力が低下し、腸からのカルシウムの吸収が減ること、また女性ではエストロゲンが減って腸からのカルシウムの吸収力が弱くなることが、副甲状腺ホルモンの分泌をふやし、軟骨の中にカルシウムを侵入させるのです。また軟骨は骨と骨の間にあるゴムのような弾力性のあるクッションですが、骨の間にはさまれて圧力が加わる程、その中でカルシウムはふえてきます。関節を長い間使ううちに軟骨にはカルシウムが入り、硬くなります。カルシウムの摂り方が足りないと、ますますその傾向は強くなります。
軟骨にカルシウムが入ると、どのようなことがおこるのでしょう。まず軟骨は古いゴムのように硬くなります。更に関節は常に使われているので、固くなった軟骨は次第にすり減って行きます。クッションがなくなった関節では、骨と骨が直接ぶつかって、変形していきます。これが変形性関節症で、膝股関節に多く起こり、なかなか厄介で、人工骨頭をいれる手術が必要なこともあります。
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初めから終わりまで強い痛みが続く変形性関節症。 |
背中に起こると変形性脊椎症です。家具などは、使えば使う程すり減りますが、骨と骨がぶつかる所では、逆にたんこぶのように、骨が飛び出してきます。これを骨棘(こっきょく)といいます。このように余分な骨が出来るので、変形性の関節の病気になると、神経が圧迫されて激しい痛みが生じます。骨粗鬆症は骨折と変形がおこるまでは何も痛みがないので「沈黙の病気」といわれますが、変形性関節症は初めから終わりまで強い痛みが続きます。変形性脊椎症の場合、デキサ(二重エネルギーX線吸収法、DXA)などによる骨量測定では、かえって骨量が増えているので、骨粗鬆症の対極にある、骨が強すぎる病気だと考える人もいました。
しかしこれが間違いであり、どちらもカルシウムの摂り方が不足して起こる病気で、骨粗鬆症が骨からカルシウムが失われること、変形性関節症はカルシウム不足が原因で軟骨にカルシウムが集まるカルシウムパラドックスであることがわかりました。それを裏付ける証拠は、よく腸から吸収される3Aカルシウム、これにコラーゲンを加えたものが、骨粗鬆症に効くとともに変形性関節症とその痛みに劇的に効果があったことです。
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人の一生はカルシウム不足との闘い。 |
8回にわたって連載したカルシウム不足と疾病では、カルシウムの摂り方が、色々な病気を起こすことを、異なった角度から繰り返して述べましたが、これを通読されて、カルシウムが他のどのような栄養素とも異なる健康の鍵、生命の源ともいうべき重要なものであることが御理解頂ければ幸いです。カルシウムが不足すれば骨の弱くなるのは当たり前ですが、脳、心臓、関節軟骨、免疫系までその影響は大きく、何とかしてカルシウムだけは充分摂りたいものです。健康で若々しい体を保つためには、カルシウムは不可欠です。その意味で、人の一生はカルシウム不足との闘いとも言えましょう。(終)
(Medical Nutrition40号より)
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