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ガンの有力な原因の一つがカルシウムパラドックス
神戸大学名誉教授・葛城病院名誉院長 藤田拓男
ガンは体の中の異物で生命をおびやかす敵。免疫のしくみがしっかりしていれば、取り除くこともできる。しかし、カルシウム不足が続いて副甲状腺ホルモンがたくさん出て、骨からカルシウムを取り出し、細胞の中のカルシウムを増やすようなカルシウムパラドックスの状態では、免疫のしくみもうまく働かず、ガンの発生を抑えることもできない。
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カルシウムの摂り方が足りない人はガンにかかりやすいという研究報告 |
ガン(悪性腫瘍)はいろいろな器官に起こります。日本人で昔から多いのは胃がんですが、最近、頭打ちになったともいわれ、大腸ガン、肺ガンは増え続けています。また、女性だけに見られる乳ガンや子宮ガン、男性だけの前立腺ガンも増加傾向にあります。細胞の分裂と増殖は、胎児から始まり、それは生命の証です。損傷や欠損のあとの再生にしても、細胞の増殖はカラダ全体としての規律に従っており、こぶとりじいさんのこぶのような、良性腫瘍と同様に歯止めが効くので、問題はありません。しかし、ガンが「悪性」といわれるのは、周りのことや全身のことには一切かまわず、どんどん大きくなって、周りの組織を壊し、栄養分を横取りしてしまうからです。このようにガンは体の中の異物で生命をおびやかす敵ですから、免疫のしくみがしっかりしていれば、取り除くこともできます。
しかしカルシウム不足が続いて副甲状腺ホルモンがたくさん出て、骨からカルシウムを取り出し、細胞の中のカルシウムを増やすようなカルシウムパラドックスの状態では、免疫のしくみもうまく働かず、ガンの発生を抑えることもできません。家族や友人とのコミュニケーションが希薄になると非行に走るのと同じように、細胞の中にカルシウムが増えると、細胞は情報のキャッチがうまくできず、仲間はずれになって非行に走り、ガンになるのです。マスリーという人が副甲状腺ホルモンと腫瘍の関係を調べたところ大変興味深い結果が得られました。副甲状腺ホルモンが常に出ている人とそうでない人100人を比べたところ、カルシウムの摂り方が足りない人はやはり副甲状腺ホルモンがたくさん出ているので、ガンにかかりやすく、寿命も短かかったのです。
ガーランドという人がカルシウムの摂り方と大腸・直腸のガンの起こり方を10年以上、調べたところ、カルシウムとカルシウムの腸からの吸収を助けるビタミンDの摂り方の少ない人では大腸・直腸ガンが多いことがわかりました。カルシウムは直接腸の中で胆汁酸その他の腸を刺激してガンを起こす物質を中和する働きもありますが、カルシウム欠乏によるカルシウムパラドックスを抑えることが、ガンの予防に効いている可能性が高いと思われます。ガンの疫学の専門家である平山先生も、牛乳をたくさん摂って、カルシウムを充分に補給している人は、胃ガンが少ないことを発見しました。緑黄色野菜などに多い抗酸化物質も細胞の中のカルシウムの増えるのを防ぎ、ガン予防に役立ちます。
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カルシウム不足がガンの一因となるのは副甲状腺ホルモンの増加と関係 |
細胞の中でカルシウムが増えることは、情報の伝わり方を混乱させるためだけでなく、細胞の分裂・増殖をさかんにする働きがあるようです。ガンができるためには、いろいろな刺激が細胞に加わることが必要ですが、そのような刺激を受け止め、情報として処理する力があれば、刺激があっても、ガンを抑えることも可能かもしれません。
ガンは子供にもできますし、遺伝や体質の関係もあり、その背景は複雑ですが、その中の有力な原因の一つが、カルシウムパラドックスです。歳をとるとともにガンが増えてくるのは、老人では食が細く、日光に当たることが少なく、また腎臓での活性型ビタミンDへの合成能力が年齢とともに弱まってしまうことも一因です。しかしカルシウム欠乏が著しく、副甲状腺ホルモンがたくさん出てくることに深い関係があるのかもしれません。ストレスが強く、忙しい人やタバコをたくさん吸う人がガンになるのも、忙し過ぎて検査ができないので手遅れになることのほかに、ストレスで尿の中にカルシウムが出てしまい、腸からの吸収も悪くなって、副甲状腺ホルモンが増えてくることも関係しているかもしれません。副甲状腺ホルモンを注射する場合がありますが、それは、そうすることによって自分自身の副甲状腺ホルモンの分泌を逆に減少させることで、体への害を軽減させることができると考えられているからなのです。
(Medical Nutrition 38号より)
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